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2章

47話

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 昼の授業が終わって放課後になり――教室には私、レックス殿下、ロイ、カレンがいる。

 ラギルはエドガーが学園を案内するとやって来たから教室を出て、ルートも用があると去って行く。
 ルートが去った教室の扉を眺めながら、レックス殿下が呟いた。

「ルートの奴……大丈夫か?」

「明らかに試験結果に落ち込んでいたからね」

「それもあるが、俺の護衛に相応しくなるためやる気に満ちていた。無理をしなければいいがな」

 確かに、無茶をしそうな雰囲気はあった。
 レックス殿下は私に対して鋭すぎる気がするけど、親しい人に対しても普通に鋭い。

 ルートの成績は、ゲームよりも遙かに優秀になっていた。
 きっとレックス殿下の護衛として相応しくなるために、夏休みの期間必死に頑張ったのだと思う。
 それでもゲームの知識を最大限生かして成長した私達、そして中途入学できるほどの実力を持ったラギルの登場。
 今回の試験でルートは自信があったのだと思うけど……結果を見て、明らかにショックを受けていた。
 ロイはルートも聖堂に誘っていたけど、所用があるからと断ったのもショックを受けている理由なのかもしれない。

「そうだね……これから中間試験があるから、ダンジョンに行く機会が増えそうだ」

 話題を変えるようにロイが呟き、カレンが頷いて賛同する。

「二学期の数日かける大きな試験は中間試験だけで、後は魔法披露会があると聞いています」
 
 実際はゲームを何度もしているから知っていると思うけど、カレンは何も知らない演技が巧い。
 二学期の最後にある行事の魔法披露会――学祭のようなもので、ゲームでのメインイベントだ。
 約一ヵ月も準備をして前日には前夜祭もあり、私はかなり楽しみにしているけど……不安でもあった。

 ゲームでは学祭の前夜祭に悪役令嬢リリアンの悪事が全て発覚し、レックス王子に国外追放を言い渡されるはず。
 中間試験の後すぐに婚約破棄を受けてから自暴自棄になって、暴走した末路だった。

 今の私は何一つ悪いことはしていないから、大丈夫だと思う。
 それでも中間試験の後すぐに起こる婚約破棄イベント、前夜祭の国外追放イベントが不安だ。

「リリアン、大丈夫か?」

「えっ……はい。確か各クラスの代表となる男子生徒と女子生徒が選ばれるんでしたよね」

 学年代表ではなくクラスの代表だから数は結構多く、そのため魔法披露会は三日かけて行われるようだ。

「そうだね。ラギル君が来なければ僕とリリアンさんだったと思うけど、残念だよ」

「ぐっっ……俺も、流石にラギルが選ばれると思うしかない。奴の魔法はリリアンの領域だからな……」

 どうやらレックス殿下は、ロイなら成績で上回れると考えていたようだ。
 ダドリックの時は必死に頑張って追い抜いたけど、ラギルは次元が違う。
 複数の属性を扱い、応用できる……私も、同年代で競える相手が現れるなんて考えなかった。

「私は家庭教師やホーリオ魔法学園で学んでいましたけど、独学であそこまで魔法が扱えるのが信じられません」

「同じく独学のカレンさんも、十分凄いと思うけどね」

 そうだった。
 皆が警戒するようにラギルの凄さを伝えようとしたけど、近い境遇のカレンも十分凄い。
 私はゲームの主役で魔法の素質を知っているから気にしなかったけど、カレンも異質だった。
 呆れた目でカレンが私を見ている気がするけど、きっと気のせいでしょう。

「そ、そうでしたね……」

 平民のラギルがロウデス教と関係しているかもしれないと言えば、カレンも疑われるかもしれない。
 ゲームで一切出ていないから怪しいとは絶対に言えないから、黙っておくべきだと考えてしまう。
 そんな中、私の意図を察したのかカレンが話す。

「リリアン様は中途入学したラギル様が、ロウデス教と関係しているのではないか警戒しているのですか?」

「えっ?」

「確かに……ロウデス教に引き込んだダドリックが敗れたのだ。次の手を打ってもおかしくないな」

 動揺しているロイに対して、レックス殿下は納得したように呟く。
 常に私を守ることを意識しているから、カレンの意見に賛同しているようだ。

「カレンさんやレックス君の言うとおりかもしれないけど……うーん」

 ロイが悩んでいるのは、アミスト伯爵家の推薦があったからなのかもしれない。
 ダドリックと違いエドガーは紳士的な人のようで、ロウデス教側とは考えたくないようだ。

「違うとしても警戒しておくべきだろう……何もなければそれでよしだ」

「まあ、それもそうだね」

 レックス殿下の発言に、ロイが納得する。
 今は平和な日常を送れているけど……ゲームでは婚約破棄を言い渡される中間試験が迫っていた。
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