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2章

45話

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 その後――二学期が始まって一週間が経ち、平和な日常を過ごしていた。
 今日は休日でレックス殿下が屋敷にやって来て、私達は部屋で二学期にある行事の話をしている。 

「来週は小規模な試験があると言っていたな」

「はい。夏休みは長期の休みでしたから、気を引き締めるためでしょう」

 二学期は別の行事に集中するためか中間試験しかなく、代わりに小規模の試験が幾つかある。
 レックス殿下はやる気に満ちていて、きっとラギルに負けたくないと考えていそう。

 ラギルというゲームでは現れない新入生に不安になったけど、今の時点では何も問題を起こしていない。
 それでも、タイミング的に警戒すべきで、レックス殿下は別のことを警戒している。
 ラギルの魔法が凄く、更に元冒険者なのが不安になっているのかもしれない。
 ロイとしてはただの新入生程度の考えだけど、レックス殿下は明らかにライバルだと認識していそう。

「ラギルは優秀な新入生だが、こうして競える機会があるのなら上回り、俺がリリアンの婚約者に相応しいと証明しよう!」

「そこまで気にしなくても、その……レックス殿下は十分、私の婚約者として立派ですよ」

 試験結果が出てラギルに負けたらレックス殿下は落ち込みそうだから、私は先に言っておく。
 レックス殿下は身体能力なら学園でもトップなのは間違いないけど、魔法の成績でラギルに敵うとは思えない。

 私の婚約者として立派だと言ったのは本心で、レックス殿下の剣技を知っているからだ。
 それでもレックス殿下は、納得していない様子で呟く。

「どうだろうな……魔法の腕はラギルの方が現時点では上で身体能力も高く、俺の魔法剣技は未完成だ」

 魔法剣技――それは魔力を剣に籠めて扱う技術で、この世界で最高峰の剣技とされている。
 剣技と魔法の極致とされる魔法剣技をレックス殿下が夏休みに一度だけ成功させたけど、聖堂というグリムラ魔法学園以上に魔力の溢れた場所にいたからだ。
 本来は長年の修練が必要とされていて、夏休みに使い方を学んだレックス殿下がここで扱うのは不可能とされている。

「魔法剣技が未完成なのは、仕方ないですよ」

 そう言いながらも、私は不安になってしまう。

 ゲームではクライマックスに、奇跡的とされる一度切りの魔法剣技を使い、復活した邪神を討伐する。
 不完全だったとはいえ、主役カレンと協力すれば邪神を倒せるほどの破壊力を持っていた。
 聖魔力に特化してるカレンだから邪神を対処できたけど、ゲームとは違いレックス殿下はカレンを溺愛していない。
 このままいけば同じことを私が行うことになるけど……ゲームと同じように成功するだろうか?

 魔力はゲームのカレンより上だと確信しているけど、問題はゲームと違うことにある。
 夏休みに一度は成功したけど、以後は一切成功していないから……もしゲーム通り邪神が成功した場合、魔法剣技を失敗する可能性は高い。
 他の登場人物の対処法を使えばいいかもしれないけど……どれも難しそうだった。
 考えている最中、レックス殿下が不安そうに話す。 

「ラギルは元冒険者で、魔法の力がとてつもない……リリアンが好きになったのなら、俺は悔しいが身を引くしかないだろう」

「私がラギルを好きになることはないですし、まずラギルは平民ですよ」

 レックス殿下は、明らかにラギルを警戒、というより嫉妬している。
 思わず平民だと立場を理由にしてしまうと、レックス殿下が深刻そうな表情で話す。
 
「愛に立場は関係ないと考えている」

「そ、そうですか」

 それって……ゲームでレックス殿下が、主役カレンに言っていたことだ。
 同じ発言を聞いたことで、なにか関係があるのではないかと考えてしまう。
 私としてはレックス殿下と二人きりになれて嬉しかったけど、レックス殿下は今後が不安になっているようだ。
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