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2章
42話
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担任の先生が紹介した新入生――ラギルと名乗った少年に、クラス全体が驚いていた。
家名がないから平民だけど、もうクラスには平民のカレンがいるからそこには驚いていない。
グリムラ魔法学園の生徒ほどになれば、僅かだけど他人の魔力を感じ取れる。
驚いているのは……目の前で自己紹介をした小柄な美少年が、膨大な威圧感と魔力を発生させていたからだ。
「……えっと、あの」
生徒が困惑した声を漏らしていると、先生が説明する。
「ラギル様は二組のエドガー・アミスト様の推薦を経て試験を受け、この一組に入学が決まりました」
「これから、よろしくお願いします」
二組のエドガーという人はあまり知らないけど、アミスト伯爵家の紹介か。
推薦者の名前を言ったのは、ラギルの責任は全てエドガーが引き受けるという意味だ。
グリムラ魔法学園に平民の生徒を推薦するというのはそれだけの行為であり、信頼して優秀な人でなければ中途入学はできない。
一組になったのは、同じ平民という立場のカレンがいるからだろうか。
「それでは始業式がありますので、講堂に向かいます」
唖然としていたけど、担任の先生がそう言って私は元に戻る。
今日は始業式で話を聞いて終わるから――ラギルの魔法がどれ程なのか、確認することは無理そうだ。
◇◆◇
始業式は問題なく終わって解散となり、新入生ラギルの姿はない。
すぐさま教室を出ていたけど……エドガーの元に向かったのだろうか?
新入生ラギルについてはまだ何もわかっていないから、話すのは明日以降でよさそうだ。
私達は集まって、会っていなかったルートと夏休みの話をしている。
「大聖堂で魔法や剣技を学び、ロイ様とカレン様は試練を経たからこそ、そこまでの強さを身につけたということですか」
「そうなるね。夢の近づけた有意義な夏休みだったよ」
銀髪のウェーブがかかった可愛い系の美少年、ロイが微笑みながら呟く。
ゲームでは病弱で特待生が所属する一組には入れなかったけど……幼い頃に私がつい病を回復魔法で治していた。
聖魔力で自分と同じ境遇の人を治したいと夢があり、夏休みに聖堂へ行ったことが自信になったようだ。
嬉しそうなロイに対して、ルートは頷きながら返答する。
「そう、ですか」
約一カ月ぶりに再会したルートは明らかに成長しているけど……そのルートは、なぜか落ち込んでいる様子だ。
「どうした? 何か気になることでもあるのか?」
「その……ようやく皆様と並べると思いましたけど、やはり皆様凄いと実感するしかありませんでした」
ルートが落ち込んでいる様子なのは、私達の魔力増加量が異質だからでしょう。
体感でもわかるほどに、私、ロイ、カレンの魔力は増加している。
レックス殿下は魔力はそこまで増加していないけど新たな剣技を会得しようとしていて、身体能力は格段の強さとなっていた。
「ルートも十分立派だ」
「はい……レックス殿下の護衛に相応しくなるよう、もっと精進します」
そう言って、ルートは明らかに落ち込んでいる様子だ。
夏休み、ルートは忙しかったみたいで、私達とは別行動をとっていた。
私達との間にとてつもない魔力、力の差ができていると考えているようで……私は、少し不安になっていた。
家名がないから平民だけど、もうクラスには平民のカレンがいるからそこには驚いていない。
グリムラ魔法学園の生徒ほどになれば、僅かだけど他人の魔力を感じ取れる。
驚いているのは……目の前で自己紹介をした小柄な美少年が、膨大な威圧感と魔力を発生させていたからだ。
「……えっと、あの」
生徒が困惑した声を漏らしていると、先生が説明する。
「ラギル様は二組のエドガー・アミスト様の推薦を経て試験を受け、この一組に入学が決まりました」
「これから、よろしくお願いします」
二組のエドガーという人はあまり知らないけど、アミスト伯爵家の紹介か。
推薦者の名前を言ったのは、ラギルの責任は全てエドガーが引き受けるという意味だ。
グリムラ魔法学園に平民の生徒を推薦するというのはそれだけの行為であり、信頼して優秀な人でなければ中途入学はできない。
一組になったのは、同じ平民という立場のカレンがいるからだろうか。
「それでは始業式がありますので、講堂に向かいます」
唖然としていたけど、担任の先生がそう言って私は元に戻る。
今日は始業式で話を聞いて終わるから――ラギルの魔法がどれ程なのか、確認することは無理そうだ。
◇◆◇
始業式は問題なく終わって解散となり、新入生ラギルの姿はない。
すぐさま教室を出ていたけど……エドガーの元に向かったのだろうか?
新入生ラギルについてはまだ何もわかっていないから、話すのは明日以降でよさそうだ。
私達は集まって、会っていなかったルートと夏休みの話をしている。
「大聖堂で魔法や剣技を学び、ロイ様とカレン様は試練を経たからこそ、そこまでの強さを身につけたということですか」
「そうなるね。夢の近づけた有意義な夏休みだったよ」
銀髪のウェーブがかかった可愛い系の美少年、ロイが微笑みながら呟く。
ゲームでは病弱で特待生が所属する一組には入れなかったけど……幼い頃に私がつい病を回復魔法で治していた。
聖魔力で自分と同じ境遇の人を治したいと夢があり、夏休みに聖堂へ行ったことが自信になったようだ。
嬉しそうなロイに対して、ルートは頷きながら返答する。
「そう、ですか」
約一カ月ぶりに再会したルートは明らかに成長しているけど……そのルートは、なぜか落ち込んでいる様子だ。
「どうした? 何か気になることでもあるのか?」
「その……ようやく皆様と並べると思いましたけど、やはり皆様凄いと実感するしかありませんでした」
ルートが落ち込んでいる様子なのは、私達の魔力増加量が異質だからでしょう。
体感でもわかるほどに、私、ロイ、カレンの魔力は増加している。
レックス殿下は魔力はそこまで増加していないけど新たな剣技を会得しようとしていて、身体能力は格段の強さとなっていた。
「ルートも十分立派だ」
「はい……レックス殿下の護衛に相応しくなるよう、もっと精進します」
そう言って、ルートは明らかに落ち込んでいる様子だ。
夏休み、ルートは忙しかったみたいで、私達とは別行動をとっていた。
私達との間にとてつもない魔力、力の差ができていると考えているようで……私は、少し不安になっていた。
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