39 / 109
2章
20話
しおりを挟む
私がレックス殿下と話をしていると、アスファが部屋にやって来た。
どうやら私が目覚めた時点で広場に報告に行ったようで、ロイとバダムも一緒だ。
バダムが言うには……カレンはまだ魔力を使い切っていないから、広場で魔法を使った方がいいと提案したようで、まだ魔法を使っている最中らしい。
ロイは魔力が切れてカレンの魔法を眺めていたみたいだけど、目覚めた報告を聞いて私の元に来たようだ。
「リリアンさん、無事でよかったよ!」
「まさか一日で目覚めるとは……い、いえ、申し訳ありませんでした」
ロイは私が魔力切れで倒れたことを知っているから、驚かず喜んでいる。
何も知らないバダムは唖然とするしかないようで、すぐに失礼だと判断したのか頭を下げていた。
「バダム様が謝ることはありません。私が限界を理解したのに、それを越えたのが原因です」
「いえ……あの魔法は一度コツを掴むと、魔力切れになるまで一気に魔力を使ってしまいます……」
バダムの説明を聞いて、私は納得する。
あの魔法を使った時の高揚感はとてつもなくて、限界を超えたいと強く思ってしまった。
やけにバダムが申し訳なさそうにしている理由を知り、話を聞いていたレックス殿下が激怒する。
「なんだと!? それは先に言っておくべきでないのか!!」
「レックス殿下。私が一日であの魔法を使うことを、バダム様は予想していなかったのでしょう」
「いや、ネーゼから話を聞いていたのなら、リリアンに教えておくべきだろう」
それは……確かに、そうかもしれないけど、レックス殿下は気づいていないのでしょう。
ネーゼは私が回復魔法を使えることを隠していたからこそ、バダムは私が聖魔力に優れていることを知らなかった。
そう考えるけど、ゲオルグとの一件で知っていてもおかしくない気がする。
私の考えすぎだろうか?
ひとまずレックス殿下を落ち着かせようと、私は呟く。
「レックス殿下、私は意識が戻ったのですから、それでいいじゃないですか」
「リリアンが、そう言うのなら……」
納得してない様子のレックス殿下に、私は話す。
「一度倒れたことで、あの魔法の抑え方は理解できました。もう大丈夫です」
「扱えるようになったのですか!? そ、それでも……使うのは避けておいた方がいいでしょう」
「わかりました」
聖堂内だからこそできる魔法だと理解したし、二学期に備えるのなら他の魔法を覚えておくべきだ。
あの魔法が扱えることに驚いているバダムは、私を眺めて。
「リリアン様……魔力が全快になるまでは、魔法は使わない方がいいでしょう」
「……そう、ですね」
バダムの発言に対して、私は頷く。
本当は様々な魔法を試したいけど……ここは抑えておこう。
この夏休みの間に重要なのは、ロイとカレンが試練を受けることだ。
ゲーム通りのイベントを発生させるために、何も問題を起こしたくない。
昨日の聖魔法を扱って魔力切れになったことで、私の魔力量は更に増加したと実感している。
これだけで十分な成果だと考えながら――今日は休むことにしていた。
どうやら私が目覚めた時点で広場に報告に行ったようで、ロイとバダムも一緒だ。
バダムが言うには……カレンはまだ魔力を使い切っていないから、広場で魔法を使った方がいいと提案したようで、まだ魔法を使っている最中らしい。
ロイは魔力が切れてカレンの魔法を眺めていたみたいだけど、目覚めた報告を聞いて私の元に来たようだ。
「リリアンさん、無事でよかったよ!」
「まさか一日で目覚めるとは……い、いえ、申し訳ありませんでした」
ロイは私が魔力切れで倒れたことを知っているから、驚かず喜んでいる。
何も知らないバダムは唖然とするしかないようで、すぐに失礼だと判断したのか頭を下げていた。
「バダム様が謝ることはありません。私が限界を理解したのに、それを越えたのが原因です」
「いえ……あの魔法は一度コツを掴むと、魔力切れになるまで一気に魔力を使ってしまいます……」
バダムの説明を聞いて、私は納得する。
あの魔法を使った時の高揚感はとてつもなくて、限界を超えたいと強く思ってしまった。
やけにバダムが申し訳なさそうにしている理由を知り、話を聞いていたレックス殿下が激怒する。
「なんだと!? それは先に言っておくべきでないのか!!」
「レックス殿下。私が一日であの魔法を使うことを、バダム様は予想していなかったのでしょう」
「いや、ネーゼから話を聞いていたのなら、リリアンに教えておくべきだろう」
それは……確かに、そうかもしれないけど、レックス殿下は気づいていないのでしょう。
ネーゼは私が回復魔法を使えることを隠していたからこそ、バダムは私が聖魔力に優れていることを知らなかった。
そう考えるけど、ゲオルグとの一件で知っていてもおかしくない気がする。
私の考えすぎだろうか?
ひとまずレックス殿下を落ち着かせようと、私は呟く。
「レックス殿下、私は意識が戻ったのですから、それでいいじゃないですか」
「リリアンが、そう言うのなら……」
納得してない様子のレックス殿下に、私は話す。
「一度倒れたことで、あの魔法の抑え方は理解できました。もう大丈夫です」
「扱えるようになったのですか!? そ、それでも……使うのは避けておいた方がいいでしょう」
「わかりました」
聖堂内だからこそできる魔法だと理解したし、二学期に備えるのなら他の魔法を覚えておくべきだ。
あの魔法が扱えることに驚いているバダムは、私を眺めて。
「リリアン様……魔力が全快になるまでは、魔法は使わない方がいいでしょう」
「……そう、ですね」
バダムの発言に対して、私は頷く。
本当は様々な魔法を試したいけど……ここは抑えておこう。
この夏休みの間に重要なのは、ロイとカレンが試練を受けることだ。
ゲーム通りのイベントを発生させるために、何も問題を起こしたくない。
昨日の聖魔法を扱って魔力切れになったことで、私の魔力量は更に増加したと実感している。
これだけで十分な成果だと考えながら――今日は休むことにしていた。
0
お気に入りに追加
7,358
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。