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2章

20話

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 私がレックス殿下と話をしていると、アスファが部屋にやって来た。

 どうやら私が目覚めた時点で広場に報告に行ったようで、ロイとバダムも一緒だ。
 バダムが言うには……カレンはまだ魔力を使い切っていないから、広場で魔法を使った方がいいと提案したようで、まだ魔法を使っている最中らしい。

 ロイは魔力が切れてカレンの魔法を眺めていたみたいだけど、目覚めた報告を聞いて私の元に来たようだ。

「リリアンさん、無事でよかったよ!」

「まさか一日で目覚めるとは……い、いえ、申し訳ありませんでした」

 ロイは私が魔力切れで倒れたことを知っているから、驚かず喜んでいる。
 何も知らないバダムは唖然とするしかないようで、すぐに失礼だと判断したのか頭を下げていた。

「バダム様が謝ることはありません。私が限界を理解したのに、それを越えたのが原因です」

「いえ……あの魔法は一度コツを掴むと、魔力切れになるまで一気に魔力を使ってしまいます……」

 バダムの説明を聞いて、私は納得する。

 あの魔法を使った時の高揚感はとてつもなくて、限界を超えたいと強く思ってしまった。
 やけにバダムが申し訳なさそうにしている理由を知り、話を聞いていたレックス殿下が激怒する。

「なんだと!? それは先に言っておくべきでないのか!!」

「レックス殿下。私が一日であの魔法を使うことを、バダム様は予想していなかったのでしょう」

「いや、ネーゼから話を聞いていたのなら、リリアンに教えておくべきだろう」

 それは……確かに、そうかもしれないけど、レックス殿下は気づいていないのでしょう。

 ネーゼは私が回復魔法を使えることを隠していたからこそ、バダムは私が聖魔力に優れていることを知らなかった。
 そう考えるけど、ゲオルグとの一件で知っていてもおかしくない気がする。

 私の考えすぎだろうか?
 ひとまずレックス殿下を落ち着かせようと、私は呟く。

「レックス殿下、私は意識が戻ったのですから、それでいいじゃないですか」

「リリアンが、そう言うのなら……」

 納得してない様子のレックス殿下に、私は話す。

「一度倒れたことで、あの魔法の抑え方は理解できました。もう大丈夫です」

「扱えるようになったのですか!? そ、それでも……使うのは避けておいた方がいいでしょう」

「わかりました」

 聖堂内だからこそできる魔法だと理解したし、二学期に備えるのなら他の魔法を覚えておくべきだ。
 あの魔法が扱えることに驚いているバダムは、私を眺めて。

「リリアン様……魔力が全快になるまでは、魔法は使わない方がいいでしょう」

「……そう、ですね」

 バダムの発言に対して、私は頷く。
 本当は様々な魔法を試したいけど……ここは抑えておこう。

 この夏休みの間に重要なのは、ロイとカレンが試練を受けることだ。

 ゲーム通りのイベントを発生させるために、何も問題を起こしたくない。
 昨日の聖魔法を扱って魔力切れになったことで、私の魔力量は更に増加したと実感している。
 これだけで十分な成果だと考えながら――今日は休むことにしていた。
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