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2章
14話
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食事を終えて、私とカレンは部屋に向かう。
カレンとロイはかなり疲れている様子で、椅子に座りながらカレンが呟く。
「今日はとてつもなく疲れたわ……リリアンがそこまで平然としているのが、理解できないわよ……」
「そうですか?」
本来、体内に宿る魔力から、扱える最大魔力量は決まるけど、この聖堂は聖魔力に満ちている。
聖堂の力によって、普通なら何度も反復練習しないと使えない魔法も、すぐに扱えるようになっていた。
そこからコツを得て慣らしていくことで、従来の何倍以上も成長することとなるらしい。
限界を超えた魔法を何度も扱うことで、魔力が切れても……聖堂内なら一日で全快する。
聖堂は聖魔力の魔力場だからこそ……夏休みの期間中、鍛錬を積むにはうってつけの場所だった。
「この聖堂の書庫は凄い本ばかりです! 今まで知り得なかったことばかりでした!」
今日の出来事を思い返してみると、私はテンションが上がってしまう。
ゲームだと詳しく説明がなかったけど、今はしっかり魔法について様々なことが書かれた本を読んでいた。
特に聖魔力とその魔法、聖魔法に関してはあまり調べることができなかったから、ここで覚えられるのは嬉しい。
更に明日からは一部の人しか入れない書庫にも行けて、バダムから魔法を教わることにもなっている。
試練は受けることができないだろうけど、来てよかったと考えていた時……カレンが呟く。
「今の時点では、来て正解だったわね」
「えっ?」
少し含みのある言い方をしたことが気になると、カレンは微笑みながら。
「リリアンとレックスは、ゲームだとここにいなかったから……聖堂にいる間は大丈夫だと思うけど、何が起きてもおかしくないわよ」
カレンが気になっているのは、この夏休みでのイベントでは、悪役令嬢リリアンの妨害がなかったからでしょう。
本格的に悪役令嬢リリアンが動くのは二学期以降だから、この夏休み中に力をつけていたはず。
「ゲームでは一切説明のなかった人……バダムはネーゼ経由だから、仕方ないと思うわ」
ゲオルグは元々居た人だから、ただ名前がついて派手な見た目をした人と判明しただけ。
アスファもゲーム通りだけど、ネーゼから話を聞いたからこそ、ゲームでは一切知らないバダムがやって来ている。
バダムは私の聖魔力に感動して魔法を教えてくれるみたいだけど、どんな魔法を教えてくれるのだろう?
それが楽しみになっていると、カレンが私を眺めて話す。
「今日、私とロイは魔力を使い果たしたわ」
「魔力を使い果たすと、全快には二日か三日ぐらいかかりますよね?」
聖堂内だとすぐ回復していた気がするから、私は尋ねてしまう。
「普通はそうだけど……聖堂は一日で魔力が全快するから、一日魔力を使い切り、一日休むのを試練前々日まで行うのよね」
カレンの返答を聞いて、私はゲームでの出来事を思い返す。
休んでいる最中は、ロイと一緒に聖魔力や魔法を学んだりして楽しんでいたはず。
それが試練まで続くのが夏休みのロイとのイベントで、私はカレンに聞く。
「試練がいつになるのかは、わからないとゲオルグは言っていましたけど――」
――私達は、神託が下る日を知っている。
「ゲーム通りなら来てから七日目にゲオルグに神託が下り発覚して、十日目に行われるわ」
今が二日目だから……あと八日後には、試練が行われるに違いない。
「明日、カレンとロイ様は休むことになりますけど……どうしますか?」
「流石にあたしがゲーム通りロイとデートしたりするとは思えないし、リリアンの魔法を眺めていた方が楽しそうかな」
レックス殿下も昼から来るだろうし、午後からバダムが魔法を私に教えてくれるらしい。
明日からは自由に動けるようになるから、ゲームとは全然違うことになるでしょう。
それに少し不安になってしまうけど……新しい魔法を覚えられることが、楽しみでもあった。
カレンとロイはかなり疲れている様子で、椅子に座りながらカレンが呟く。
「今日はとてつもなく疲れたわ……リリアンがそこまで平然としているのが、理解できないわよ……」
「そうですか?」
本来、体内に宿る魔力から、扱える最大魔力量は決まるけど、この聖堂は聖魔力に満ちている。
聖堂の力によって、普通なら何度も反復練習しないと使えない魔法も、すぐに扱えるようになっていた。
そこからコツを得て慣らしていくことで、従来の何倍以上も成長することとなるらしい。
限界を超えた魔法を何度も扱うことで、魔力が切れても……聖堂内なら一日で全快する。
聖堂は聖魔力の魔力場だからこそ……夏休みの期間中、鍛錬を積むにはうってつけの場所だった。
「この聖堂の書庫は凄い本ばかりです! 今まで知り得なかったことばかりでした!」
今日の出来事を思い返してみると、私はテンションが上がってしまう。
ゲームだと詳しく説明がなかったけど、今はしっかり魔法について様々なことが書かれた本を読んでいた。
特に聖魔力とその魔法、聖魔法に関してはあまり調べることができなかったから、ここで覚えられるのは嬉しい。
更に明日からは一部の人しか入れない書庫にも行けて、バダムから魔法を教わることにもなっている。
試練は受けることができないだろうけど、来てよかったと考えていた時……カレンが呟く。
「今の時点では、来て正解だったわね」
「えっ?」
少し含みのある言い方をしたことが気になると、カレンは微笑みながら。
「リリアンとレックスは、ゲームだとここにいなかったから……聖堂にいる間は大丈夫だと思うけど、何が起きてもおかしくないわよ」
カレンが気になっているのは、この夏休みでのイベントでは、悪役令嬢リリアンの妨害がなかったからでしょう。
本格的に悪役令嬢リリアンが動くのは二学期以降だから、この夏休み中に力をつけていたはず。
「ゲームでは一切説明のなかった人……バダムはネーゼ経由だから、仕方ないと思うわ」
ゲオルグは元々居た人だから、ただ名前がついて派手な見た目をした人と判明しただけ。
アスファもゲーム通りだけど、ネーゼから話を聞いたからこそ、ゲームでは一切知らないバダムがやって来ている。
バダムは私の聖魔力に感動して魔法を教えてくれるみたいだけど、どんな魔法を教えてくれるのだろう?
それが楽しみになっていると、カレンが私を眺めて話す。
「今日、私とロイは魔力を使い果たしたわ」
「魔力を使い果たすと、全快には二日か三日ぐらいかかりますよね?」
聖堂内だとすぐ回復していた気がするから、私は尋ねてしまう。
「普通はそうだけど……聖堂は一日で魔力が全快するから、一日魔力を使い切り、一日休むのを試練前々日まで行うのよね」
カレンの返答を聞いて、私はゲームでの出来事を思い返す。
休んでいる最中は、ロイと一緒に聖魔力や魔法を学んだりして楽しんでいたはず。
それが試練まで続くのが夏休みのロイとのイベントで、私はカレンに聞く。
「試練がいつになるのかは、わからないとゲオルグは言っていましたけど――」
――私達は、神託が下る日を知っている。
「ゲーム通りなら来てから七日目にゲオルグに神託が下り発覚して、十日目に行われるわ」
今が二日目だから……あと八日後には、試練が行われるに違いない。
「明日、カレンとロイ様は休むことになりますけど……どうしますか?」
「流石にあたしがゲーム通りロイとデートしたりするとは思えないし、リリアンの魔法を眺めていた方が楽しそうかな」
レックス殿下も昼から来るだろうし、午後からバダムが魔法を私に教えてくれるらしい。
明日からは自由に動けるようになるから、ゲームとは全然違うことになるでしょう。
それに少し不安になってしまうけど……新しい魔法を覚えられることが、楽しみでもあった。
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