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2章
4話
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楽しみにしていた聖堂のある大陸へ向かう日がやって来て、私たちは馬車で空港に向かっていた。
キャビンには私、隣にはレックス殿下が座り、正面にはカレン、その隣にはロイがいる。
「部屋は僕とレックス君、リリアンさんとカレンさんで分けたよ。それでいいよね」
「……ああ。それでいい」
「レックス君としてはリリアンさんと一緒の部屋がよかったのかい? レックス殿下よりカレンさんの方が強いんだから、何も心配しなくていいよ」
「えっと……魔法だけで、総合的な実力ならレックス殿下の方が遙かに凄いですよ」
不満げなレックス殿下を見てロイが呆れていると、おずおずとカレンが言う。
カレンとしてはレックス殿下に敵意を持たれたら困るからで、ロイは微笑みながら話す。
「なんだか不満げなレックス君がどうも気になったんだ。僕とカレンさんは聖魔力について学びに行くからね……聖堂側にデート気分だと思われるのは好ましくないんだよ」
ロイの発言を聞いて、私とカレンが反応する。
この台詞はゲームの時、聖堂に向かうこのタイミングにロイがカレンに言った台詞と類似していて――ゲーム内容は恋愛ゲームだから、結局デートをしながら聖魔力について調べていたんだっけ。
「リリアン、どうした?」
思い返していると、気になったのかレックス殿下が尋ねる。
流石に正直に説明できないから、私は誤魔化すことにしていた。
「いえ……聖魔力について学ぶと聞いて、楽しみになっていました」
「私も同じです。遠出して今まで知ることのできなかったことを知る。これほどまでに楽しみなことはありません。招待してくださり、本当にありがとうございます」
カレンが私達に向かって頭を下げると、それを目にしたロイが微笑みを浮かべる。
「気にしなくていいよ。カレンさんやリリアンさんがいると、新たな発見ができる可能性が高そうだから、むしろ来てくれて僕の方からお礼を言いたいな」
「……おい。俺の名前がないんだが」
レックス殿下が再び不満げになっていると、馬車が空港に到着したようだ。
空港には魔石を動力にして動く飛行艇があって、これに乗り聖堂のある大陸へ向かう。
私は飛行魔法で空を飛べるけど……異世界の飛行機に乗れると知ってから、私はこの時を楽しみにしていた。
◇◆◇
私達は空港の中に入って、その景色に驚くしかなかい。
広い空路には、飛行艇の他にも飛ぶことに特化した翼の広いドラゴン、ワイバーンの姿があった。
「飛行艇も見えますけど、ワイバーンも空路に着地しているのですね」
私がレックス殿下に尋ねると、説明できることが楽しいのか嬉しそうな表情を浮かべて。
「あれか! 他国の者はワイバーンで大陸移動をした時は空港に着地することとなり、そこで許可証を貰うらしい。俺達が乗るのは普通の飛行艇だから、安心してくれ」
「そうですか……」
私としてはワイバーンにも乗りたかったけど、今回は諦めるしかない。
ゲームのイベントでワイバーンに乗る機会が一度もなかったから、ゲームの内容を終えてからになりそうな気がする。
明確な敵である邪神教もいるし……この調子でゲームの終わりまでいけるのだろうかと不安になってしまう。
そんなことを考えていると私の前に来たロイが、他と比べると小さいも一番立派そうな飛行艇を指差して。
「僕達が乗るのはあれのようだね……小型だけど、性能は凄いよ」
ロイがそう言ってから、私達は飛行艇に乗るけど……これは魔石の魔力で動くらしい。
そもそも飛行機に乗ったのが初めてだけど、落下しないか不安にならないのは、私が飛行魔法を使えるからでしょう。
「到着したら、どうするつもりだ?」
レックス殿下が尋ねると、ロイが頷く。
「それだけど、聖堂で大賢者と呼ばれるぐらい偉い人が挨拶に来てくれるらしい。僕はそこで聖魔力について色々聞く予定だけど……忙しい人みたいだから、雑談はできなさそうかな」
どうやら大聖者と呼ばれるぐらい凄い人のようだけど……私はそんな肩書きの人とゲームで会った記憶がない。
ゲームだと名前のない人で、実際は会っていた可能性はありそうだけど、ゲームのキャラとしてはそこまで重要な人ではないのだろうか。
大聖者といっても私達にとっては別大陸の、それもロイ攻略の時だけの人だから、数文字で省略されていたのかもしれない。
「その後は、色々と聖堂でのルールを聞いてから自由行動だけど、どうする?」
いきなり予定を聞かれた私は、ロイと対面して……この大陸に来た理由を話す。
「私は、聖魔力について調べたいと思っています」
「私もリリアン様と同意見です」
「俺はリリアンが心配だから、一緒にいようではないか」
心配って……私が何か問題を起こすとでも思っているのだろうか?
ちょっとレックス殿下の発言が気になったけど、私達は無事に大陸移動を終えて――聖堂に到着していた。
キャビンには私、隣にはレックス殿下が座り、正面にはカレン、その隣にはロイがいる。
「部屋は僕とレックス君、リリアンさんとカレンさんで分けたよ。それでいいよね」
「……ああ。それでいい」
「レックス君としてはリリアンさんと一緒の部屋がよかったのかい? レックス殿下よりカレンさんの方が強いんだから、何も心配しなくていいよ」
「えっと……魔法だけで、総合的な実力ならレックス殿下の方が遙かに凄いですよ」
不満げなレックス殿下を見てロイが呆れていると、おずおずとカレンが言う。
カレンとしてはレックス殿下に敵意を持たれたら困るからで、ロイは微笑みながら話す。
「なんだか不満げなレックス君がどうも気になったんだ。僕とカレンさんは聖魔力について学びに行くからね……聖堂側にデート気分だと思われるのは好ましくないんだよ」
ロイの発言を聞いて、私とカレンが反応する。
この台詞はゲームの時、聖堂に向かうこのタイミングにロイがカレンに言った台詞と類似していて――ゲーム内容は恋愛ゲームだから、結局デートをしながら聖魔力について調べていたんだっけ。
「リリアン、どうした?」
思い返していると、気になったのかレックス殿下が尋ねる。
流石に正直に説明できないから、私は誤魔化すことにしていた。
「いえ……聖魔力について学ぶと聞いて、楽しみになっていました」
「私も同じです。遠出して今まで知ることのできなかったことを知る。これほどまでに楽しみなことはありません。招待してくださり、本当にありがとうございます」
カレンが私達に向かって頭を下げると、それを目にしたロイが微笑みを浮かべる。
「気にしなくていいよ。カレンさんやリリアンさんがいると、新たな発見ができる可能性が高そうだから、むしろ来てくれて僕の方からお礼を言いたいな」
「……おい。俺の名前がないんだが」
レックス殿下が再び不満げになっていると、馬車が空港に到着したようだ。
空港には魔石を動力にして動く飛行艇があって、これに乗り聖堂のある大陸へ向かう。
私は飛行魔法で空を飛べるけど……異世界の飛行機に乗れると知ってから、私はこの時を楽しみにしていた。
◇◆◇
私達は空港の中に入って、その景色に驚くしかなかい。
広い空路には、飛行艇の他にも飛ぶことに特化した翼の広いドラゴン、ワイバーンの姿があった。
「飛行艇も見えますけど、ワイバーンも空路に着地しているのですね」
私がレックス殿下に尋ねると、説明できることが楽しいのか嬉しそうな表情を浮かべて。
「あれか! 他国の者はワイバーンで大陸移動をした時は空港に着地することとなり、そこで許可証を貰うらしい。俺達が乗るのは普通の飛行艇だから、安心してくれ」
「そうですか……」
私としてはワイバーンにも乗りたかったけど、今回は諦めるしかない。
ゲームのイベントでワイバーンに乗る機会が一度もなかったから、ゲームの内容を終えてからになりそうな気がする。
明確な敵である邪神教もいるし……この調子でゲームの終わりまでいけるのだろうかと不安になってしまう。
そんなことを考えていると私の前に来たロイが、他と比べると小さいも一番立派そうな飛行艇を指差して。
「僕達が乗るのはあれのようだね……小型だけど、性能は凄いよ」
ロイがそう言ってから、私達は飛行艇に乗るけど……これは魔石の魔力で動くらしい。
そもそも飛行機に乗ったのが初めてだけど、落下しないか不安にならないのは、私が飛行魔法を使えるからでしょう。
「到着したら、どうするつもりだ?」
レックス殿下が尋ねると、ロイが頷く。
「それだけど、聖堂で大賢者と呼ばれるぐらい偉い人が挨拶に来てくれるらしい。僕はそこで聖魔力について色々聞く予定だけど……忙しい人みたいだから、雑談はできなさそうかな」
どうやら大聖者と呼ばれるぐらい凄い人のようだけど……私はそんな肩書きの人とゲームで会った記憶がない。
ゲームだと名前のない人で、実際は会っていた可能性はありそうだけど、ゲームのキャラとしてはそこまで重要な人ではないのだろうか。
大聖者といっても私達にとっては別大陸の、それもロイ攻略の時だけの人だから、数文字で省略されていたのかもしれない。
「その後は、色々と聖堂でのルールを聞いてから自由行動だけど、どうする?」
いきなり予定を聞かれた私は、ロイと対面して……この大陸に来た理由を話す。
「私は、聖魔力について調べたいと思っています」
「私もリリアン様と同意見です」
「俺はリリアンが心配だから、一緒にいようではないか」
心配って……私が何か問題を起こすとでも思っているのだろうか?
ちょっとレックス殿下の発言が気になったけど、私達は無事に大陸移動を終えて――聖堂に到着していた。
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