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12話
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兵士達が模擬戦を行う訓練場に到着したけど、私はアゼル殿下のことばかり考えてしまう。
アゼル殿下は私が妹セローナに協力していたことを知っていて、更にセローナが自分の手柄にしていたことも知っていた。
それに対して何も言わなかったのは、私の意志を尊重したから。
そして――聖女となったセローナが私を貶めて幽閉してアゼル殿下は許せなくなり、魔力を測定する魔道具を急いで完成させた。
セローナの抗議に苛立っていた理由も、事実を受け入れようとしないのだから当然でしょう。
「お姉様、呆けているようですが……怖気づきましたか?」
そう考えていると……距離があるも私と対面しているセローナが、小馬鹿にしながら余裕を取り戻していた。
どうやらアゼル殿下について考えていたことが、セローナにとっては負けた時のことを考えているように見えたのかもしれない。
正直、セローナとの模擬戦は勝つのが解りきっているから、何も考えていなかった。
「いいえ。貴女のこれからを考えて……憐れんでいました」
「っっ……アゼル殿下の魔道具に欠陥があっただけなのに、いい気にならないで!!」
私は今まで、セローナが何を言っても妹だから仕方がないで我慢していた。
そうしていたけど、今アゼル殿下の魔道具を否定した発言だけは、絶対に許せない。
「それを証明する為の模擬戦でしょう。万全ではない私と、今日はまだ聖女の活動をしていない万全のセローナ。この状況で貴女が負けたら……とてつもなく恥ずかしいわね」
私の発言を聞いて、私達を離れて眺める貴族達も頷いていた。
その反応を見たセローナは、苛立ちからか全身を震わせて叫ぶ。
「負けた時の言い訳ね。一撃で叩き潰してあげるわ!!」
そう言ってセローナが聖魔力を右手に籠めて、神々しい光を放つ。
貴族達から歓声があがるけど、私はセローナに呆れるしかなかった。
一撃で叩き潰すって……私が万全ではないからこそ、一撃で叩き潰す以外に方法がないだけだ。
唯一とれる方法を、私の挑発にのったことにして使う……恐らく、倒した後は簡単に倒せたとか言う気なのでしょう。
聖女の力によるものか、魔法学園の生徒ではだせないほどの魔力を手に籠めていて、セローナは冷や汗をかいている。
どうやら魔力の他にも体力、精神力を右手に籠めて、全力の聖魔力の閃光を放つようね。
この行動から推測するに――セローナ自身、今までの力がもう私の協力によるものだと理解していそう。
それでも後に引けないから、自分の全身全霊を籠めて私を倒そうとしている。
「この一撃でお姉様の発言! アゼル殿下の魔道具! 全て否定するわ!!」
叫ぶことで殺意を籠め、右手を振り抜くことでセローナが白い聖魔力による光の閃光を放つ。
聖女の力を利用した、魔法学園生徒平均程度のセローナによる全力の攻撃。
ここまで一撃に集中すれば、魔法学園の先生でも倒せそうな攻撃だけど……それでも、私とセローナには圧倒的な力の差がある。
私は右手に聖魔力を籠めて、閃光を平手で叩く。
それだけで――セローナが全力を籠めて放った聖魔力の閃光は、一瞬で掻き消えていた。
アゼル殿下は私が妹セローナに協力していたことを知っていて、更にセローナが自分の手柄にしていたことも知っていた。
それに対して何も言わなかったのは、私の意志を尊重したから。
そして――聖女となったセローナが私を貶めて幽閉してアゼル殿下は許せなくなり、魔力を測定する魔道具を急いで完成させた。
セローナの抗議に苛立っていた理由も、事実を受け入れようとしないのだから当然でしょう。
「お姉様、呆けているようですが……怖気づきましたか?」
そう考えていると……距離があるも私と対面しているセローナが、小馬鹿にしながら余裕を取り戻していた。
どうやらアゼル殿下について考えていたことが、セローナにとっては負けた時のことを考えているように見えたのかもしれない。
正直、セローナとの模擬戦は勝つのが解りきっているから、何も考えていなかった。
「いいえ。貴女のこれからを考えて……憐れんでいました」
「っっ……アゼル殿下の魔道具に欠陥があっただけなのに、いい気にならないで!!」
私は今まで、セローナが何を言っても妹だから仕方がないで我慢していた。
そうしていたけど、今アゼル殿下の魔道具を否定した発言だけは、絶対に許せない。
「それを証明する為の模擬戦でしょう。万全ではない私と、今日はまだ聖女の活動をしていない万全のセローナ。この状況で貴女が負けたら……とてつもなく恥ずかしいわね」
私の発言を聞いて、私達を離れて眺める貴族達も頷いていた。
その反応を見たセローナは、苛立ちからか全身を震わせて叫ぶ。
「負けた時の言い訳ね。一撃で叩き潰してあげるわ!!」
そう言ってセローナが聖魔力を右手に籠めて、神々しい光を放つ。
貴族達から歓声があがるけど、私はセローナに呆れるしかなかった。
一撃で叩き潰すって……私が万全ではないからこそ、一撃で叩き潰す以外に方法がないだけだ。
唯一とれる方法を、私の挑発にのったことにして使う……恐らく、倒した後は簡単に倒せたとか言う気なのでしょう。
聖女の力によるものか、魔法学園の生徒ではだせないほどの魔力を手に籠めていて、セローナは冷や汗をかいている。
どうやら魔力の他にも体力、精神力を右手に籠めて、全力の聖魔力の閃光を放つようね。
この行動から推測するに――セローナ自身、今までの力がもう私の協力によるものだと理解していそう。
それでも後に引けないから、自分の全身全霊を籠めて私を倒そうとしている。
「この一撃でお姉様の発言! アゼル殿下の魔道具! 全て否定するわ!!」
叫ぶことで殺意を籠め、右手を振り抜くことでセローナが白い聖魔力による光の閃光を放つ。
聖女の力を利用した、魔法学園生徒平均程度のセローナによる全力の攻撃。
ここまで一撃に集中すれば、魔法学園の先生でも倒せそうな攻撃だけど……それでも、私とセローナには圧倒的な力の差がある。
私は右手に聖魔力を籠めて、閃光を平手で叩く。
それだけで――セローナが全力を籠めて放った聖魔力の閃光は、一瞬で掻き消えていた。
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