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86話 マミカ視点
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アカネを追い出して約1カ月経ち――マミカはアカネの捜索を1週間前に打ち切っていた。
もうアカネを探す理由がなくなり、今はミユキと共に、城の外に出て狂暴なモンスターを退治している。
「あたし達は戦うだけの力があるのだから、戦わなきゃ存在意義がないわよね!」
「……そうだね、マミカちゃん」
魔法を使い遠くのモンスターを狩るのが楽しそうなマミカを眺めて、ミユキが不満げにしているのは、この世界に来てから手に入れたマミカの彼氏にある。
後衛のマミカがミユキと会話をしながら楽に戦えているのは、前衛の大剣を振るう1人の戦士が強すぎるからだ。
長く一本に束ねた金色の髪がなびきながら、戦士が大剣を振るうことでモンスターを瀕死にする。
それをマミカが様々な属性魔法の実験台にして、ミユキも聖魔法を使ってトドメを刺しているだけだ。
トドメを刺す行為によって力を取り込み、元の世界でいうところのレベルアップするらしくて……2人は5日前から、モンスターを狩り始めている。
こうなったのは1週間前に彼氏となった戦士の提案で、美青年は「マミカ様に私の強さを見せ、マミカ様の力になりましょう」と健気な発言を聞いたからだ。
先週――退屈に感じながらも魔法の特訓をしていたマミカの元に現れた、レーリアよりも凛々しい美青年。
そのエルフの美青年は、レーリアを見た時に魅かれた紅い瞳が更に鋭くなっていて、レーリアよりも大人びた印象を受けるしかない。
話をしている内にマミカは青年に惹かれて、戦士と契約することとなり……護衛兼彼氏となった戦士が今、大量のモンスターを弱らせていく。
「もうレーリアなんてどうでもいい……ミユキの提案だったけど、アカネを探すことは諦めるわ」
「うん。私もあの時はアカネを探させた方がマミカちゃんは納得すると思っただけで、アカネとは会いたくなかったもの」
恐らく本心を口にしながらも、優美に剣を振って戦う美青年に不満げな表情を浮かべているミユキに、マミカが尋ねる。
「もしかして、嫉妬してる?」
「どうかな……そうなのかもしれないけど、マミカちゃんを困らせたりしないから」
遠い目をしながら呟くミユキを見て、マミカは安堵する。
異世界で自分だけ彼氏を作ったことを、ミユキは気にしているのかと思ったけど……どうやら違うようだ。
そして――戦いが終わった時、マミカとミユキの体が金色に光り輝く。
目の前には、法衣を纏ったミユキのような女性のカードと、料理人の服装をした女性のカードが浮いていた。
「なに、これ……」
「……わからない」
マミカとミユキが困惑していると、戦いを終えた戦士が、2人の元にやって来て。
「それはレベルが上がることで手に入る。異世界から転移をした人と同じスキルを扱えるカードです……伝承にありましたが、実在していることに驚くしかありません」
それはつまり……ミユキの聖女スキルが使えて、ついでにアカネの料理スキルも使えるようになったということか。
「へぇ……アカネのスキルはどうでもいいけど、聖女の力が使えるのはいいわね!」
マミカはミユキに楽し気に話しかけるも……ミユキは、マミカの彼氏を不機嫌そうに眺めて。
「ねぇ……なんで知ってるの?」
「……ミユキ?」
「知ってて……マミカちゃんに危険なことをさせたの?」
ミユキに凄まれた戦士は、それでも楽しそうな表情で2人のカードを眺めている。
その光景を目にしてマミカが戸惑っていると、ミユキは更に顔を歪めて。
「答えてよ……リアーク」
この世界で手に入れたマミカの彼氏……エルフのリアークは、楽しそうな笑顔を浮かべて。
「ふふっ……この私がマミカ様を守っているのですから、何も危険なことはありませんよ」
「そうよ。リアークが居るから、あたし達は大丈夫よ!」
切れ長の鋭くも美しい紅い瞳、爽やかな笑顔を眺めながら……マミカはリアークに賛同していた。
もうアカネを探す理由がなくなり、今はミユキと共に、城の外に出て狂暴なモンスターを退治している。
「あたし達は戦うだけの力があるのだから、戦わなきゃ存在意義がないわよね!」
「……そうだね、マミカちゃん」
魔法を使い遠くのモンスターを狩るのが楽しそうなマミカを眺めて、ミユキが不満げにしているのは、この世界に来てから手に入れたマミカの彼氏にある。
後衛のマミカがミユキと会話をしながら楽に戦えているのは、前衛の大剣を振るう1人の戦士が強すぎるからだ。
長く一本に束ねた金色の髪がなびきながら、戦士が大剣を振るうことでモンスターを瀕死にする。
それをマミカが様々な属性魔法の実験台にして、ミユキも聖魔法を使ってトドメを刺しているだけだ。
トドメを刺す行為によって力を取り込み、元の世界でいうところのレベルアップするらしくて……2人は5日前から、モンスターを狩り始めている。
こうなったのは1週間前に彼氏となった戦士の提案で、美青年は「マミカ様に私の強さを見せ、マミカ様の力になりましょう」と健気な発言を聞いたからだ。
先週――退屈に感じながらも魔法の特訓をしていたマミカの元に現れた、レーリアよりも凛々しい美青年。
そのエルフの美青年は、レーリアを見た時に魅かれた紅い瞳が更に鋭くなっていて、レーリアよりも大人びた印象を受けるしかない。
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「もうレーリアなんてどうでもいい……ミユキの提案だったけど、アカネを探すことは諦めるわ」
「うん。私もあの時はアカネを探させた方がマミカちゃんは納得すると思っただけで、アカネとは会いたくなかったもの」
恐らく本心を口にしながらも、優美に剣を振って戦う美青年に不満げな表情を浮かべているミユキに、マミカが尋ねる。
「もしかして、嫉妬してる?」
「どうかな……そうなのかもしれないけど、マミカちゃんを困らせたりしないから」
遠い目をしながら呟くミユキを見て、マミカは安堵する。
異世界で自分だけ彼氏を作ったことを、ミユキは気にしているのかと思ったけど……どうやら違うようだ。
そして――戦いが終わった時、マミカとミユキの体が金色に光り輝く。
目の前には、法衣を纏ったミユキのような女性のカードと、料理人の服装をした女性のカードが浮いていた。
「なに、これ……」
「……わからない」
マミカとミユキが困惑していると、戦いを終えた戦士が、2人の元にやって来て。
「それはレベルが上がることで手に入る。異世界から転移をした人と同じスキルを扱えるカードです……伝承にありましたが、実在していることに驚くしかありません」
それはつまり……ミユキの聖女スキルが使えて、ついでにアカネの料理スキルも使えるようになったということか。
「へぇ……アカネのスキルはどうでもいいけど、聖女の力が使えるのはいいわね!」
マミカはミユキに楽し気に話しかけるも……ミユキは、マミカの彼氏を不機嫌そうに眺めて。
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「……ミユキ?」
「知ってて……マミカちゃんに危険なことをさせたの?」
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