上 下
74 / 117

74話

しおりを挟む
 私はウォルを部屋に案内して……テーブルの上のとんかつ定食を見て驚き。

「な、なんだこりゃ!? すげぇ美味そうだぞ!」

「アカネ様の料理はどんな料理でも美味しいのは間違いありません。この料理を作れるアカネ様の知識が最も素晴らしいです」

 ウォルが驚きながら、レーリアが誇らしげに告げている。

 最近思ったんだけど、どうやら料理スキルを褒めるより、料理スキルを使いこなせる感じに褒められると、私は嬉しくなっているのが顔に出ているみたいだ。
 
 契約で私に対して嘘はつけない以上、レーリアとしても本心で言ってくれているのは間違いないから、嬉しくなって当然でしょう。

「本当に、俺がこの料理を食べていいのか!?」

「ええ。ウォルはアカネ様の料理が気になっていた様子ですから、よろしいでしょうか?」

 主従関係なのを主張するように、レーリアは私に許可を求めてくる。

 今は冒険者とは関係ないけど、ウォルの前だからそうしているのでしょう。

「ええ。ウォルには今日助けられたから、遠慮せず食べて」

「わかった! 冷めないうちに食べようぜ!」

「はい……それでは、いただきます」

 私達は3人で言いながら、とんかつ定食を食べていく。

 食べ応えのある食感、暖かくてサクサクとした衣と、中の肉汁が凄く合っている。

 ご飯も食べていき……ウォルを眺めると、一心不乱にとんかつを食べていた。

「アカネ様の料理は相変わらず素晴らしいです。今まで作らなかったのはご飯との相性がよくて、米を入手するまで待っていたということですね」

「そ、そうね……」

 実際はこの街に着くまでソースの食材が足りず作れなかったとか他にも理由はあるけど、一番の理由はご飯と一緒に食べたかったからだ。

 どうやらウォルは満足してくれたようで、食べ終わった後に名残惜しそうにしながら。

「もう終わっちまった……アカネ、この料理はどうやって作るんだ!?」

「え、えっと……」

 完全に興味津々で尋ねてくるけど、私にも解らない部分が多すぎる。

 どう説明しようかと考えていると、私の隣に座っているレーリアが、対面しているウォルを目にして。

「それは教えることができません。アカネ様の料理は規格外ですから……ですが、1つだけ知ることのできる方法があります」

 さきに無理だと説明しながら、1つだけ方法があると提示する。

 後から希望を与える辺り、私はレーリアの発言に驚きながらも少し恐怖していると。

「な、なんだ! どうすれば知ることができるんだ!?」

 ウォルは完全にレーリアの術中に嵌まっているけど、色々不安になってくるわね。

「アカネ様の料理は他言無用にする必要があり、口約束等よりも遙かに強制力のある口止め方法は1つ……契約です」

「ああ! 契約でもなんでも受けるぞ!」

 即断だった。

「……は? あの、契約の説明を聞かずに契約すると?」

 レーリアが頷いているけど、私も同じように動揺するしかない。

「えっ……いいの? 契約するのよ?」

 もうちょっと契約について深く考えるべきだと思うけど。

「こんなにうめぇメシが作って食えるようになるんだろ!? どんな契約だって俺は受けるぜ!!」

 私が料理スキルなしでこの料理は作れないけど、食べられるというのは間違いない。

 ウォルは物凄く興奮している様子で……ここまでとは思ってもみなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...