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66話

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 私がレーリアを眺めていると、意図を理解してくれたのか頷きながらウォルと対面して。

「ウォル。君の冒険者としてのアドバイスが、アカネ様の料理に関するアドバイスより優れているとは思えません。それは君自身が理解できているのではありませんか?」

「うっ……そうだな……」

 それは言い過ぎだと思うけど……レーリアとウォルの中では、私の料理はそこまで凄いらしい。

 確かに、私も料理スキルがないとここまでこの世界を楽しめなかったと思うけど、ウォルは匂いだけで納得できるほどだから、それほどまでに凄そうだ。

 落ち込んでいるウォルを見て、レーリアが少し沈黙してから。

「……私達はこの街に来たばかりです。今日は街を巡って防衛依頼を受け、それから発生するであろう塔破壊の依頼に参加する予定なので……それが終わって余裕があれば考えましょう。アカネ様、それでよろしいでしょうか?」

「えっ!? ええ。そうね!」

 レーリアに言われたから咄嗟に頷くけど、誰かの料理をアドバイスするほど、素の私は料理上手じゃない。

 それでもレーリアには何か目的がありそうで反射的に頷いてしまい、それを聞いたウォルが歓喜していた。

「そっか! 不釣り合いなのは解ってるから、気が向いたら頼む!」

 そう言ってウォルが楽しげに去って行くけど……塔を破壊した後、私はどうすればいいのだろう?

 × × ×

 リドラの街を巡りながら、私は気になっていたことをレーリアに尋ねる。

「レーリア、どうするの? 全部解決した後、結局アドバイスしないって酷いと思うんだけど……私、料理スキルがないといそこまで料理が上手じゃない――」

「――アカネ様。これからギルドでウォルの情報収集をして、問題がなければウォルを私達の仲間に入れたいのですが……どうでしょうか?」

「えぇっ!?」

 いきなり仲間にすると言って私は驚いているけど、レーリアは真剣な様子だ。

 それでも私の反応を見て、心の底から申し訳なさそうに頭を深く下げて。

「これは提案ですが……私の力不足が招いたことです」

「いや、意味がまったくわからないんだけど、どういうこと?」

 レーリアが謝る必要はないし、ウォルを仲間にしたい理由が解らないだけだ。

「先に聞いておくべきでしたね……アカネ様は仲間が増えても大丈夫ですか? そして、仲間が獣人でも大丈夫でしょうか?」

 質問したのは私だけど、どうやらレーリアは先に質問しておきたいようね。

 もしかしたら、獣人だから仲間にしたくないと思われているのだろうか?

 それはこの世界だと普通にあるみたいだから、私は問題はないと頷いて。

「大丈夫だけど……どういうこと?」

「はい……今は塔の設置だけですが、リアークがリドラの街を本気で破壊しようと企んでいた場合、私1人でアカネ様を守り切れる確証がありません」

 レーリアは、双子の兄リアークを相当警戒している。

 確かに話を聞く限り絶対にとんでもない人だから、私を守れるか不安な様子だ。

「そこで、ウォルが契約してでも料理について知りたいというのならアカネ様と契約し、前衛となって戦ってもらいたいと考えています」

 元々は魔法を扱って後衛で戦うレーリアが、前衛となってくれる人を探しているのは知っていた。

 契約すれば口止めにもなるし、料理のために冒険者にまでなったウォルなら、私達の仲間になってくれるかもしれないけど、問題があるとすれば。

「ウォルが私と契約して……仲間になってくれるかしら?」

「アカネ様の料理を一度食べれば即座に頷くでしょう。彼はにおいだけでも興味津々で眼を輝かせていました」

 確かに、ウォルは物凄く興味深そうに私とレーリアに話しかけていたわね。

 後はウォルに問題があるかどうかだから……レーリアは冒険者ギルドに向かって、ウォルについて調べようとしていた。
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