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55話

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 夕暮れから夜になりそうで、私はレーリアに案内されて冒険者ギルドに向かっている。

 私としてはお米を入手できて満足しているし、この街を拠点に住みたいけど……問題は家だ。

 歩きながら、私はレーリアに尋ねる。

「ここを拠点にしたいとは言ったけど、住む場所とかはどうしよう?」

「それも問題はありません。しばらくは宿をとり、冒険者として活動することでランクを上げます」

「ランク?」

 レーリアはしっかり考えてくれているみたいで安心しているけど、冒険者については何も知らない。

「はい。Eから始まって最高はSです。Cランク冒険者になると優遇されるようになり、エルフが居ても家の購入を問題なく行えるようになります」

 どうやらリドラの街でエルフが住むには、実力を証明しないといけないようね。

「Cランクって、どれぐらいで上がるの?」

「ギルドにクエストかあるかどうかで変わりますが……私とアカネ様なら1ヶ月以内にCランクに上がることを約束致します」

 真剣な眼差しでレーリアが私を見るけど、凜々しくて端麗な顔立ちが眩しい。

「わ、わかったわ……冒険者登録の時って、名前はどうするの?」

「冒険者登録をした際に受け取るギルドカードは偽名が使えませんが、調査する術もありませんし大丈夫です。冒険者ランクを上げるのは冒険者側が決められますので、Bランクぐらいで抑えておけば問題ないでしょう」

 有名になりすぎてマミカ達が追ってきても面倒だから、Bランクになったらランクを上げなければいいみたいね。

 今後の方針を決めた私達は――冒険者ギルドに到着していた。

 × × ×

 食事時ということもあって、冒険者ギルドの中は賑わっている。

 酒場も併設しているみたいで……役所に食堂がついているような感じだ。

 獣人やエルフの姿も見えて賑わっている光景を目にして――私は全身を震わせる。

 視線が集まっている。
 凝視しすぎたかもしれないから慌ててレーリアに目をやると、小声で私に呟いて。

「……申しわけありません。どうやら、私に原因があるみたいです」

 そう言われるけど、理由がよく解らない。

 それからはレーリアの言うとおりに動き、私主導で冒険者登録をしていく。

 最初はエルフを従えていることに受付の人が驚いた様子で……すぐに冷静になっていた。

 エルフを従えている人は珍しいから、各ギルドに1人は居るらしいギルドマスターに会わなければならないらしくて……私とレーリアは別室に案内される。

 受付の人に着いていきながら、私はレーリアに尋ねる。

「……エルフを従えているって、そんなに珍しいの?」

「いえ。人界だとエルフが冒険者登録をするのなら、人が従えていても何もおかしくはないはずですが……」

 どうやらギルドマスターに会うことは想定外のようで、レーリアは真剣な表情になっている。

 そして、受付のお姉さんが部屋に案内してくれて中に入ると……そこには初老の青年が居た。

 短い白髪のゴツゴツとした顔立ち、鎧を身に纏い、巨大な斧を背負った強そうな人。

 その人がレーリアを睨んだかと思えば――私は、レーリアに抱きしめられていた。

「――えっ?」

 いきなり抱きしめられて動揺していると、叫び声が耳に入ってくる。

「報告通りの見た目……貴様が! この街を破壊しようと目論むエルフか!!」

 レーリアの胸しか見えないから、今の私は部屋の光景が何も見えていない。

 部屋に居た青年の叫びと同時に――部屋に入ってくる何人もの足音が聞こえて、どうやら私達は取り囲まれているようだ。

 レーリアが私を抱きしめているのは守るためだと理解したけど、レーリアがリドラの街を破壊する?

 誤解なのは間違いない。
 それでも――冒険者ギルドの人達はレーリアに敵意を持ち、私達を取り囲んでいた。
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