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36話

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 私はレーリアから毛布を受け取って、魔法で作られた木のベッドを眺めている。

 この小屋にベッドが一つしかないんだけど、もしかして……

「あっ、あの! レーリアは、どこで眠るつもりなの?」

 木のベッドは頑張れば2人ぐらい入れそうだから、気になってしまう。

 尋ねながら顔が紅くなっているのを自覚すると、レーリアが微笑みを浮かべて。

「結界でモンスターが近寄らなくても、人が来る可能性はあります……私は見張りをしていますので、安心して休んでください」

「そ、そう……えっ、レーリアは寝ないつもりなの!?」

 納得したり、少し残念だったりもするけれど……それより、レーリアは休まず見張りをしようとしている。

 レーリアは、私をじっと見つめて。

「はい。アカネ様は安心して休んでください」
「えっと……モンスターが来ない結界を張って人は大体休んでいるって言ってたけど、誰かがここに来るかもしれないの?」
「基本的に誰も来ることはありませんが、万一に備えてです」

 どうやら意志は堅いようだけど、レーリアを1人寝かせず見張らせたくはない。

「私は少し眠ったら起きるから、私が起きた後はレーリアが休んで。何かあったらすぐ起こすから」
「……ですが」

 レーリアは折れる気がなさそうだ。
 どうすればいいか考えて、私は契約を思い返す。
 
 私の命令には逆らえない。
 これは食材をとってくる命令限定かもしれないけど……私はレーリアに命令を出して、逆らえないか試してみる。

「レーリア。これは命令よ」
「っっ……わかりました。私は1時間ぐらい眠れば大丈夫なので、アカネ様は気にせず休んでください」
「……本当?」

 私が質問すると、レーリアが言い淀む。

 契約によってお互い嘘をつくことはできないから、レーリアは言い辛そうにしながら。

「いえ……エルフでも睡眠時間は普通の人とは変わりません。ですが、今の状況だと、1時間以上寝ても変わらないでしょう」

 寝ていても気になって起きてしまうから、1時間眠ればそれで構わないらしい。
 契約のこともあるし、これは本心で言ってる。

 本心で言っているのなら、受け入れるしかない。

「わかったけど……港町に着いたら、しっかり休んでね」
「はい。ありがとうございます」

 お礼を言われるほどのようなことでもないと思うけど、城の生活時に立場が下だったからなのかもしれない。

 レーリアと約束して、私は木のベッドで眠ることにしていた。
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