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第二章
第Ex話『護衛任務の遂行者』
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私の名前はジェイシー。チーム『雷神』の魔法使いです。
今日は荷物をたんと乗せた馬車をヴェレンって街まで護衛をします。この護衛依頼、前々日まで請け負う冒険者がおらず、チームリーダーのポールが名乗りを上げたことによって、『雷神』が担当することになりました。
半月か、一ヶ月前か、遂にチーム全員がEランクになって、ギルドメンバーとして自信がついてきた時期でした。ポールやアンナはこの勢いに乗ってどんどん強くなっていこうと意気込んでいました。デニスはもう少しゆっくり行こうよ、と二人を落ち着かせようとしましたが、どうせまたナンパしたいだけでしょ、とアンナが一蹴すると図星のようで、デニスの目は泳いでいました。そのやりとりを見て、私は楽しくて仕方がなかったのです。昔から変わらない、四人の関係。私はそれが大好きなのです。
護衛を担当することになって、過分なほどの準備をしました。採取や討伐とは違い、人命が直接関わってくるわけですから、こうなるかもしれない、という想像はあればあるだけいいです。特に、私達はまだ護衛依頼を受けたことがないチームなので、必要十分な準備の加減がわからないというのもありました。
さて、四人とも馬車に乗り込み出発します。町の人々の声援が聞こえてきました。デニスやアンナはそれに応えるように手を振っていました。私は…恥ずかしくてそんなことできません。
数時間は経ったでしょうか。初めは緊張と興奮で四人ともそわそわしていましたが、私以外は疲れて眠ってしまいました。私はというと、三人ほど喋っていたわけではないのであまり疲れは感じませんでした。むしろ、緊張がずっと続き眠るほどの余裕はありませんでした。そんなとき三人の寝顔を見ると、安心できました。幼い頃からずっと一緒にいるからでしょう。家族と同じぐらい信頼を寄せています。
日は傾き夕方になりました。外には茜色の空が見えます。何事もなさそう、と思った矢先でした。
「とっ、盗賊だー!」
御者の叫び声が聞こえました。盗賊と聞いて身体が強張ってしまいました。眠っていた三人もその声で起きて、外を見回します。気づけば悪党がこの馬車を囲っている最中でした。
ポールを先頭に私達は急いで外に出て馬車を守ろうと努めました。護衛は私たちだけ。一方で悪党は10人ほどでした。不利な戦いでしたが、馬車だけには触れさせまいと懸命に守りました。しかし、悪党を退けるには決定打が足りなかったのです。四人とも体力と魔力、そして回復道具も消費していきました。
「あっ…」
「ジェイシー!?」
遂に私の魔力が尽きてしまいました。ポーションも魔力瓶も無くなりました。その場に普段の魔物が相手なら私だけ後ろに下がり回避に徹底していることでしょう。そのほうが仲間の負担が減るからです。しかし、今回は護衛依頼、更に相手の人数が多いとなれば、そうは言ってられません。
慣れない杖での攻撃で近づく悪党を払おうとしましたが、流石に剣相手では質が悪かったのです。遂に私の持っていた杖は払い除けられてしまいました。
手段がなくなった私は格好の的です。ポールやアンナは後衛の私やデニスを守ろうとしますが、鍔迫合いをしている二人が私達を助ける余裕もありませんでした。
一人の男が私にゆっくりと近づきます。獲物を捕らえたような目でした。
(誰か…助けて…!)
自分の身体を守ろうと縮こまったとき、男の痛々しい叫び声がしました。近づいてきた男の声でした。
何が起こったのかと怖々と目を開けると、私の目の前には黒いローブを纏って息切れを起こしている少女が立っていました。
「あ、貴女は…」
その背丈と髪型に見覚えがありました。宿屋で見かけた、あの年齢不詳の少女だったのです。
今日は荷物をたんと乗せた馬車をヴェレンって街まで護衛をします。この護衛依頼、前々日まで請け負う冒険者がおらず、チームリーダーのポールが名乗りを上げたことによって、『雷神』が担当することになりました。
半月か、一ヶ月前か、遂にチーム全員がEランクになって、ギルドメンバーとして自信がついてきた時期でした。ポールやアンナはこの勢いに乗ってどんどん強くなっていこうと意気込んでいました。デニスはもう少しゆっくり行こうよ、と二人を落ち着かせようとしましたが、どうせまたナンパしたいだけでしょ、とアンナが一蹴すると図星のようで、デニスの目は泳いでいました。そのやりとりを見て、私は楽しくて仕方がなかったのです。昔から変わらない、四人の関係。私はそれが大好きなのです。
護衛を担当することになって、過分なほどの準備をしました。採取や討伐とは違い、人命が直接関わってくるわけですから、こうなるかもしれない、という想像はあればあるだけいいです。特に、私達はまだ護衛依頼を受けたことがないチームなので、必要十分な準備の加減がわからないというのもありました。
さて、四人とも馬車に乗り込み出発します。町の人々の声援が聞こえてきました。デニスやアンナはそれに応えるように手を振っていました。私は…恥ずかしくてそんなことできません。
数時間は経ったでしょうか。初めは緊張と興奮で四人ともそわそわしていましたが、私以外は疲れて眠ってしまいました。私はというと、三人ほど喋っていたわけではないのであまり疲れは感じませんでした。むしろ、緊張がずっと続き眠るほどの余裕はありませんでした。そんなとき三人の寝顔を見ると、安心できました。幼い頃からずっと一緒にいるからでしょう。家族と同じぐらい信頼を寄せています。
日は傾き夕方になりました。外には茜色の空が見えます。何事もなさそう、と思った矢先でした。
「とっ、盗賊だー!」
御者の叫び声が聞こえました。盗賊と聞いて身体が強張ってしまいました。眠っていた三人もその声で起きて、外を見回します。気づけば悪党がこの馬車を囲っている最中でした。
ポールを先頭に私達は急いで外に出て馬車を守ろうと努めました。護衛は私たちだけ。一方で悪党は10人ほどでした。不利な戦いでしたが、馬車だけには触れさせまいと懸命に守りました。しかし、悪党を退けるには決定打が足りなかったのです。四人とも体力と魔力、そして回復道具も消費していきました。
「あっ…」
「ジェイシー!?」
遂に私の魔力が尽きてしまいました。ポーションも魔力瓶も無くなりました。その場に普段の魔物が相手なら私だけ後ろに下がり回避に徹底していることでしょう。そのほうが仲間の負担が減るからです。しかし、今回は護衛依頼、更に相手の人数が多いとなれば、そうは言ってられません。
慣れない杖での攻撃で近づく悪党を払おうとしましたが、流石に剣相手では質が悪かったのです。遂に私の持っていた杖は払い除けられてしまいました。
手段がなくなった私は格好の的です。ポールやアンナは後衛の私やデニスを守ろうとしますが、鍔迫合いをしている二人が私達を助ける余裕もありませんでした。
一人の男が私にゆっくりと近づきます。獲物を捕らえたような目でした。
(誰か…助けて…!)
自分の身体を守ろうと縮こまったとき、男の痛々しい叫び声がしました。近づいてきた男の声でした。
何が起こったのかと怖々と目を開けると、私の目の前には黒いローブを纏って息切れを起こしている少女が立っていました。
「あ、貴女は…」
その背丈と髪型に見覚えがありました。宿屋で見かけた、あの年齢不詳の少女だったのです。
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