配達屋はうまくいく!~何もしてないのに勘違いされて国の重要人物!?~

一色3世

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釣り

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その後、何度か交代を繰り返し、朝を迎えた。



「はい、朝ご飯。今日もサンドイッチだけどいいかな?」

テントから出てきたリードに、キールは朝食の入ったバスケットを渡した。



「ああ、すまないな。いただこう」

すっかり、豪勢な旅の食事に胃袋を捕まえられたリードであった。





「そういえば、後どれくらいでこの森を抜けるの?」

キールは、リードが食べ終わったのを確認すると、旅の予定について尋ねた。



「あと3日もあれば抜けられるだろう。1日ほど余裕を持って目的地に着く予定だ」

リードは、馬車の準備をしながら答えた。



「おっけー、それじゃあさ、どこか川とかあったら寄って欲しいんだけど・・」

キールは、思い出したように、パンッと手を合わせ、リードにお願いをした。



「別に構わないが、何をするつもりだ?」

リードは振り返り、キールの方を見た。



「ふふふ、旅の醍醐味だよ。ついてからのお楽しみ」

キールはこれからしようとしていることを想像して、満足そうに口角を上げた。



「なんだか嫌な予感がするな・・」

キールの何かを企んでいる顔に、リードは若干の不安を覚えていた。







それから、1日が経過し、配達の任務としては4日目の昼、キール達は遂に川を見つけた。



「おー、綺麗だね。結構大きい川だけどこれぐらいの方がちょうど良いか」

キールは眼前にゆるりと流れる川をみて興奮したのか、声が少し大きくなった。



「ここはギリギリ裏道の中のはずだ。一応気をつけろよ?」

リードもやっと見つかったかという顔をしていた。道中キールが、川はまだないのかとことあるごとに聞いてきて、少しうんざりしていた。



「お、あっちの方には湖があるよ!」

リードが少し目を離した隙に、キールは川沿いを下り、少し開けた先から見える湖を指さしていた。





「本当だなって・・・おい!あまり遠くへ行くなよ!」

あまりの緊張感のなさに一瞬だがリードも魔の森の中ということを忘れそうになっていた。



「分かってるって、それじゃあ、やりますか!!釣り!!」

キールがずっと楽しみにしていたものそれは、釣りであった。





「やっぱり、こういうのんびりとした時間が良いんだよねー」



「まさか、やりたいことが釣りだったとはな。ちなみにどれくらいここにいるつもりだ?」

リードは呆れたように、馬車にもたれかかった。



「まぁ、数時間ぐらいで終えるよ。夕食の準備もあるしね」

キールはリードの方へ顔だけ振り返り、ニカッと笑った。









「おお、また来た!」

その日のキールは大漁であった。



もともと人気の無いここ魔の森において、野生の動物も立ち入ることは少ない。よって、魚にとってここは天敵のいない環境であり、そのせいか警戒心というものが少なかった。



「けど、もっと大きいのも狙ってみたいな・・そうだ!!」





「ちょっと湖の方へ行こうよ、きっと大きいのがいるよ」

キールの釣り人魂に火がついたのか、普段は見せないやる気に溢れていた。



「いや、別に俺は行かなくても・・・」



「いいからいいから!やってみれば楽しさが分かるよ」

馬車で待っていようとしたリードを、キールは強引にリードの腕を掴み引っ張っていった。





「わかった、わかったから!このまま直行すると、裏道から外れてしまう。だから少し遠回りしていくぞ」

リードは諦めたように後ろでウキウキしているキールを先導しながら歩き始めた。





「やっぱり、遠くから見て思ったけど広いね!」

キールは湖の浜辺をあるき、釣りに適した場所を探し始めた。











「なかなか釣れないなぁ」

さっきとはうって変わって、ぼうずになっていた。



「それになんだか、静かすぎないか?」

リードがこれまでと違う雰囲気を察していた。



「なんだか、霧も濃くなってきたようなきがするな」

遠くを見渡せば、対岸が見えなくなっていた。



「そうかな?あ、リードもやってみれば?」

キールが持っていた釣り竿を渡してきた。



「うーん、まぁ少しだけなら・・・あまり遠くへ行くなよ?」

釣り竿を受け取ると、キールが林の中へ進んでいった。おそらく花を摘みにいったのだろう。









「少し、遅すぎないか?・・・・・まさか変なことに巻き込まれたりしてないだろうな」

キールは静かな水面にそう呟いた。



「そのまさかだよ」



「!?・・・・ニッグどうしてここに・・」

後ろからした声に飛び退き、釣り竿は既に手から離れ、素手で構えた。



「殺しに来たんだよ・・あの小僧と、お前をな・・フン!!」

言い終わると同時に、リードにナイフで襲いかかった。



「クソッ!相変わらず手が早いな!」

元とはいえ同じ所属である者を手に掛けることを少しためらいながら、必死に避けていった。



「お前がギルド長になったときの俺の気持ちが分かるか?お前が辞めたときの譲られた俺の気持ちが?下のモンから舐められた目線で見られる俺の気持ちが??あぁ!?」

リードとニッグの間にある私怨からか、すこし攻撃が大ぶりになっていた。



「そんなの、しったことか!」

しかし、リードもニッグとは相容れない仲だった。



ことあるごとに敵をなぶり、ときに無関係な者を巻き込み、ただ素早く的確に任務をこなすリードとは、良くモメることもあった。



「オラオラオラオラ!!!おめぇは弱いんだよ!あの頃も単純な力では俺の方が上だったよなぁ!!」

しかし、リードが次期ギルド長に選んだのは単純な実力だった。リードはただただ攻撃を避けていた。



「・・・・・すまない、もう違うんだ」





リードがそう呟くと同時に、パァンッという音がし、ニッグが吹き飛んだ。

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