配達屋はうまくいく!~何もしてないのに勘違いされて国の重要人物!?~

一色3世

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さいご

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深く鬱蒼とした森を一つの馬車が進んでいた。



「この馬も優秀だな。安全とはいえ魔物の匂いが蔓延してるこの森を、怯えることなく進むとはな」



さすが天下のグリフォンフライの所有している馬だ。



リードは改めてグリフォンフライという配達会社のデカさを痛感した。そしてそれを束ねる後ろでスケッチをしている男のことも。







「よし、今日はこの辺にしよう」

辺りも暗くなってきたことを確認したリードは、少し開けた場所で野宿する事に決めた。



「よっしゃ!待ってました!!」

馬車から飛び降りたキールは、魔法鞄からテントと焼き鳥と飯盒炊飯はんごうすいはんセットを取り出した。







「リードも食べな?力が出ないよ?」

キールは手際よく、簡易的な丼をつくり、リードに差し出した。



「ああ、ご相伴にあずかる」

リードは素直に受け取り、口をつけ始めていた。







「それじゃあ、俺はもう寝るから交代になったら起こしてね」

キールはそそくさとテントに潜り込み、リードは見張り番を始めた。



「いくら魔物が出ないと行っても野生の動物はでるんだぞ・・・」

テントからすぐに聞こえてきた、「スースー」という寝息にリードは肝の太さを感じていた。



しばらく、見張り番をしていると、夜の静けさからか、キールの毒気のなさからか、リードにしては珍しく、少しうとうとしだした。



「・・・!!・・いけない。少し眠ってしまったようだな。どれくらい眠っていたんだ?」

首をカクンと落とす勢いで、起きたリードは、夜空を見上げ星の位置で時間を確認した。



「なんだ、少しも時間は経っていないな・・・・!!!!」

リードが視線を落とすと、先ほどまでテントがあった場所に、見たことのない石碑があった。



一瞬で飛び退き、懐からナイフを取り出し構えた。



「なんだ・・これ・・・幻術・・じゃないな」

リードは恐ろしいほどに違和感のないその光景に警戒を強めた。





・・・・こちらへ・・・・気をつけて・・・



「声!?・・・いや念話か・・」

リードは、恐る恐る警戒を強めながら、その石碑に近づいた。



もう少しで、石碑に触れるというところで、石碑からおぞましいオーラが放たれた。



すぐさまリードは武器を構えた。



「「「「「ゴアアアァァァァ」」」」」



そのオーラはやがて形をなし、複数のリッチになり、リードに襲いかかりだした。



「くそ、何だこれ、いつまで出て来やがる」

リードはとっさにナイフに魔力を纏わせ、リッチを次々に切りつけて行くも、すぐにまた新しいリッチが生みだされていた。



「幸いなのは、一匹一匹がそんなに強くないということ、だな!!」

リードにはまだ軽口を言える余裕があった。さすがはギルド長になった人物であった。その実力は並大抵の者ではなかった。







「やっとか、何時間たったんだ?」

やっと全てのリッチを倒し終え、石碑の方に向き直った。



・・・ありがとう・・・あなたの・・なにかを・・・・ください・・・



戦いの中、少しずつ大きくなっていく声の指示に従うかどうか、リードは悩んでいた。



「あのリッチ達は、この石碑から出てきたわけだが、この石碑からは嫌な気を感じない・・・どうするべきか・・」

リードはしばし考え、自分の直感に従ってみることにした。



「俺をこんな訳の分からない現象に巻き込むくらいだ。何をしようと俺のかなうところではないだろう」

若干の諦めを孕みつつ、リードは先ほどまで使っており、無茶に魔力を纏わせたせいでボロボロになったナイフを捧げた。



・・・・ありがとう・・・・さいごの守り手・・・



その声を聞き終えると一瞬にして景色が代わり、石碑のあった場所には、もとのテントがあった。



そして、なぜか身体に溢れている魔力を、確認するかのように、体中に魔力を行き渡らせ、空中にジャブを放った。



たったそれだけで、空気が逃げるよりも速く空気を押しつぶし、マッハの衝撃がソニックブームとなり、前方の木々をへし折った。



「ふぁああ、あれ?もう終わったの?」

キールはリードの音で起き、交代の時間かと尋ねた。



「もう終わった?・・・お前、全部こうなることが分かっていて!?」



「何のことだかわかんないよ、夢でも見てたんじゃない?」

キールに詰め寄ったリードに対して、慣れたようにさらっと受け流すキールであった。



「食わないと力が出ないってこういうことだったのか、説明不足にも程があるぞ!」



「うんうんごめんね。疲れてるようだから交代してもう寝ようね」

ニコニコとキールはなんとかリードを宥めテントへ誘導した。







「・・・・・・・リードは極度の夢遊病なのかな?」

キールは温かい目でテントの方を見て呟いた。
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