配達屋はうまくいく!~何もしてないのに勘違いされて国の重要人物!?~

一色3世

文字の大きさ
上 下
40 / 45

決断

しおりを挟む
「こりゃまた大物が釣れたねぇ」



「どうしますか?流石に依頼達成出来ないとは思いますが・・断るのも体裁上良くないとも思います。私では処理しきれません・・・社長、ご決断を」

流石のエリーナも、どちらが正しいのか分からず、少し不安に感じていることが、口調からうかがえた。



「んー、エリーナはどっちの方がいいと思う?」

ニコニコ。



流石はキール、どちらが正しいのか分からず、思考を放棄していることが、言葉からうかがえた。



しかし、キールは自信満々という表情をしており、エリーナは何か考えがあってのことなのだろうと感じさせた。



ただ、キールの自信はエリーナならなんとかするだろうという、他力本願からであった。



「私は・・・受けた方がいいと思います。たとえ依頼に失敗しようとも、国に従い全力を尽くしたという事実は、盾にも矛にもなります。勿論、依頼を成功するに越したことはないのですが・・・・」

メリットとデメリットを考慮し、エリーナは引き受けることにした。



「うむ、俺もそう思うよ。じゃあ、決定で」

机に肘を突き、顔の前で手を組み、決断した。



「!?・・良いのでしょうか・・いえ、承知いたしました」

あまりの即決具合に、一瞬戸惑ったエリーナだが、すぐに了承した。キールが決断を下したことで、間違いだったことなど無いのだから。



しかし、この決断を下したのは実質エリーナだということは、本人は知らないでいた。





「して、社長。この配達をするに辺り、一つ問題がありまして・・・その、人手が足らないのです。引き受けることになった場合、そのことも決めていただきたいのですが・・」

エリーナはキールの顔色を伺いながら、人員について、申し訳なさそうにお願いした。



「あぁ、なら俺が行くよ。あまりサボりすぎても腕がなまっちゃうからね」





エリーナも無理って言ってるし、失敗しても文句は言われない!ということはただ旅してれば良いだけじゃないか!



期間にして1週間。キールはちょうど道中の旅を楽しめる期間だと考えていた。



「・・・・・・・・・・・・」

楽しい旅路を想像して少しにやけているキールとは反対に、エリーナは絶句していた。



「・・!?ダメです!社長の手を煩わせる訳には行きません!なら私が行きます!・・って社長!聞いてますか!社長!」

我に返ったエリーナが、必死に断ろうとするも、キールはどこ吹く風と頭の中で旅の準備を考えるのに忙しかった。





「で、依頼の内容をもう少し詳細に教えてくれない?」

キールがキラキラとした目で尋ねた。



「・・・・何か考えがあってのこと何でしょう。分かりました!ただ、同行人をつけてもらいます!良いですね!」

エリーナはこれまでのキールの実績から重要なことなのだろうと推測した。



「うーん、本当は1人で行きたいけど、わかったよ。それはこっちで選んでも良いかい?」

キールとしては、なるべく自分の旅路に意見を言わなそうな人物を見つけようとしていた。



「良いでしょう。そこに関しても信用しましょう」

エリーナは眉間に皺を寄せながらも承諾した。



「じゃあ、明日までに決めるね」

キールは内心適当に決めれば良いだろうとエリーナの困り顔を全く気にしていなかった。



「承知いたしました。それでは説明に参ります。」

そう前置きすると、エリーナはつらつらとしゃべり出した。





依頼人は、オルガノ王国第一王子ジューノ=オルガノ。



届け先は、帝国の首都ガレアスにある都庁の外交課。



荷物の内容は、大きさとしては、両手で運べる小包み程度、物は割れ物注意。



期限は明日から1週間。



「おっけー!それじゃあ、準備してくるね」

キールは内容を聞き終えると、旅の準備に取りかかろうとした。

「では、明日の朝、会社の裏手に馬車を用意しておきますので、そちらをお使いください」



エリーナは、出来れば怪我をしてほしくないという気持から、経験豊富な馬と、安全性の高いを選ぶ算段を立てていた。



なぜなら、キールが自ら向かうと言い出した場合、それはキールにしか解決できない問題があるからであり、トラブルに巻き込まれているであろうことは明白であったからだ。







「どれにしようかな、あ、これ下さい」

街の商業区に来たキールは、ぶらぶらと街を周りながら一週間分の食料を買い込んでいた。何も事情を知らない人から見れば、お土産を選ぶお上りさんに、はたまた食道楽で楽しんでいるか、とても、大事な仕事の準備には見えなかった。



「よし、これでいいだろう。ジュースに、サンドイッチ、パンもあるし、やっぱりケーキも少しはほしいよね~。こういうときに保存が利く魔法鞄のありがたみをつくづく感じるよ」





そうして、しばらく買い物を続けていた。





「・・・あれ?ここどこだっけ?」

かいものに夢中になっていたキールは、いつの間にか入り組んだ区域に入ってしまい迷子になっていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

Red Assassin(完結)

まさきち
ファンタジー
自分の目的の為、アサシンとなった主人公。 活動を進めていく中で、少しずつ真実に近付いていく。 村に伝わる秘密の力を使い時を遡り、最後に辿り着く答えとは... ごく普通の剣と魔法の物語。 平日:毎日18:30公開。 日曜日:10:30、18:30の1日2話公開。 ※12/27の日曜日のみ18:30の1話だけ公開です。 年末年始 12/30~1/3:10:30、18:30の1日2話公開。 ※2/11 18:30完結しました。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

処理中です...