配達屋はうまくいく!~何もしてないのに勘違いされて国の重要人物!?~

一色3世

文字の大きさ
上 下
36 / 45

しおりを挟む
自然を楽しみながら、進んでいくと一本の巨大な大木に出会った。



「こんな大きな木エルフの国でもなかなか見ないですよ・・・・ってあれ?外から見たときこんな木ありましたっけ」

ラーファが不思議に思い振り替えりキールに尋ねた。



「あれ?キール殿?」

辺りを見渡してみても、キールは居なかった。さらにいえば先ほどまで見ていた風景とは違い柵や噴水などの人工物が一切無く、あるとしたら大樹の根元にある祠だけだった。



「ここは・・・」

あまりのことにラーファは呆然と立ちすくんでいた。



・・・・こちらに・・やっと・・あらわれた・・扉の開き手・・



「だれだ?・・この声、聞き覚えがある・・」

ラーファはどことなく懐かしさを覚えていた。昔聞いたことがあるような、そんな優しい声だった。



「あなたか?」

大樹の方から声がしたような気がして視線を向けたが、違うことに気づいた。その声は祠から聞こえていた。



・・・あなたの・・なにかを・・・ください・・・



「何かって、何でも良いのか?・・・・こんなものでも」

何故か、その母親のような暖かみをもった声の言うがままに従うべきだと感じ、ラーファは身につけていたネックレスを供えた。



・・・・ありがとう・・・守人は集いつつある・・・あと少し・・・



「何だったのだろうか・・・」

不思議な現象に思考を注がずにいられなかった。



「ファ・・・ラー・・・ラーファ!」



「はい!ってキール殿。どうかされたのですか」

自分を呼ぶ声に意識が覚醒すると、心配そうにこちらを見ているキールがいた。



「どうかしたのかって、大丈夫なら良いんだけど・・」

キールも少しばかり不安そうだが、ラーファに異常が無いことを確認すると、少しホッとしたように表情をやわらげた。



「体調が優れないようなら帰ろうか?」



「いえ!大丈夫?だと思います」

気遣うキールに、自分の都合でキールの行動を邪魔するわけにはいかないと、ラーファは喰い気味で否定した。









「王都にもこんなところがあったんですね」

「そうだね、ありがとうね、俺の観光についてきてくれて」



それから、普通に観光を楽しんだ2人は、ラーファの明日に備えて早めに帰宅した。





6日目、ラーファは朝から冒険者ギルドに来ていた。



「集まってくれてありがとう。今回は第三種緊急依頼とはいえ、気を抜かずに臨んでほしい。昨日先遣隊が大方の場所を特定した。王都の湿地帯のさらに先、熱帯付近に普通の魔物では持っていない能力を有していたり、キメラのようにつぎはぎのモンスターが多く確認された。恐らく、悪魔は黄色の悪魔『吸収の悪魔』だろう。今回は時間が鍵となる。皆頑張ってくれ。以上!質問がある奴はいるか?」

ギルド長が全員に資料を配付し、大きな声で説明していた。



ラーファが資料に目を落とすと、びっしりと今回の作戦や報酬が書かれていた。



「もうこれ以上ないな!では出発だ!」

「「「「うおおおおおおお」」」」

あらかたの質問が終わり、冒険者一行は、悪魔討伐へ歩みを進めた。









「なんだか、熱いのに寒気がするぜ」

「ああ、明らかに異様な雰囲気が漂っているな」

冒険者達は、つぎはぎのモンスターに最初は大げさに気味悪がりながら倒していたものの、やはり不気味さに完璧には慣れないでいた。



「ここら辺の熱帯気候は、生物が盛んに弱肉強食の食物連鎖を行っているからな。自然と子孫繁栄のために数が増える。そこを今回の悪魔は狙ってきたんだろうな」



曰く、黄色の悪魔こと『吸収の悪魔』は生物を取り込み、その遺伝子を取り込み、改変し自分の子をつくりあげる。生物の多様性は、悪魔にとって強さと直結していた。





「ギャオオオオ」

「ケケケケケケケケケ」

「グォッ、グォッ」



「くそ、ほんとに気味が悪い。こいつらまるで操り人形じゃねぇか、死をまるで恐れていない」

冒険者達に次々と襲いかかってくる魔物は、群れという体をなしながら、連携というものは一切行わず、闇雲に襲いかかってくるのみであった。





「おいおい、何だこれ・・」

「悪魔はここにいないなんてことは・・ないよなぁ」

しばらく、倒しながら進んでいると冒険者達はあるものを見つけた。



大きな黒いドームが山のようにそびえ立っていたのだ。高い木々が生い茂るこの場であったからこそ、遠くからでは発見されなかった。



さらに一行は慎重を期しながら、一歩また一歩と近づいていった。



「おいおい、嘘だろ・・」

「これは、ちょっと絶望じゃないか?」

「本当に第三種なんだよな?このことについて何か触れてたか?」





冒険者達がソワソワとし出すのには、理由があった。





「「虫は力持ち・・だけど、人間の力には負ける」と仰っていた・・・つまり、正面突破なのだろう」

ラーファは、キールが言っていたことからやるべき事を推測した。





その黒いドームに近づいて初めて分かったのだ。





「でも・・それって、虫が人間サイズだったらどうするんだ?」







ドームの壁、天井全てが、人間サイズの蟻や蜘蛛、サソリなどの虫で構成されていたのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

処理中です...