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黄
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自然を楽しみながら、進んでいくと一本の巨大な大木に出会った。
「こんな大きな木エルフの国でもなかなか見ないですよ・・・・ってあれ?外から見たときこんな木ありましたっけ」
ラーファが不思議に思い振り替えりキールに尋ねた。
「あれ?キール殿?」
辺りを見渡してみても、キールは居なかった。さらにいえば先ほどまで見ていた風景とは違い柵や噴水などの人工物が一切無く、あるとしたら大樹の根元にある祠だけだった。
「ここは・・・」
あまりのことにラーファは呆然と立ちすくんでいた。
・・・・こちらに・・やっと・・あらわれた・・扉の開き手・・
「だれだ?・・この声、聞き覚えがある・・」
ラーファはどことなく懐かしさを覚えていた。昔聞いたことがあるような、そんな優しい声だった。
「あなたか?」
大樹の方から声がしたような気がして視線を向けたが、違うことに気づいた。その声は祠から聞こえていた。
・・・あなたの・・なにかを・・・ください・・・
「何かって、何でも良いのか?・・・・こんなものでも」
何故か、その母親のような暖かみをもった声の言うがままに従うべきだと感じ、ラーファは身につけていたネックレスを供えた。
・・・・ありがとう・・・守人は集いつつある・・・あと少し・・・
「何だったのだろうか・・・」
不思議な現象に思考を注がずにいられなかった。
「ファ・・・ラー・・・ラーファ!」
「はい!ってキール殿。どうかされたのですか」
自分を呼ぶ声に意識が覚醒すると、心配そうにこちらを見ているキールがいた。
「どうかしたのかって、大丈夫なら良いんだけど・・」
キールも少しばかり不安そうだが、ラーファに異常が無いことを確認すると、少しホッとしたように表情をやわらげた。
「体調が優れないようなら帰ろうか?」
「いえ!大丈夫?だと思います」
気遣うキールに、自分の都合でキールの行動を邪魔するわけにはいかないと、ラーファは喰い気味で否定した。
「王都にもこんなところがあったんですね」
「そうだね、ありがとうね、俺の観光についてきてくれて」
それから、普通に観光を楽しんだ2人は、ラーファの明日に備えて早めに帰宅した。
6日目、ラーファは朝から冒険者ギルドに来ていた。
「集まってくれてありがとう。今回は第三種緊急依頼とはいえ、気を抜かずに臨んでほしい。昨日先遣隊が大方の場所を特定した。王都の湿地帯のさらに先、熱帯付近に普通の魔物では持っていない能力を有していたり、キメラのようにつぎはぎのモンスターが多く確認された。恐らく、悪魔は黄色の悪魔『吸収の悪魔』だろう。今回は時間が鍵となる。皆頑張ってくれ。以上!質問がある奴はいるか?」
ギルド長が全員に資料を配付し、大きな声で説明していた。
ラーファが資料に目を落とすと、びっしりと今回の作戦や報酬が書かれていた。
「もうこれ以上ないな!では出発だ!」
「「「「うおおおおおおお」」」」
あらかたの質問が終わり、冒険者一行は、悪魔討伐へ歩みを進めた。
「なんだか、熱いのに寒気がするぜ」
「ああ、明らかに異様な雰囲気が漂っているな」
冒険者達は、つぎはぎのモンスターに最初は大げさに気味悪がりながら倒していたものの、やはり不気味さに完璧には慣れないでいた。
「ここら辺の熱帯気候は、生物が盛んに弱肉強食の食物連鎖を行っているからな。自然と子孫繁栄のために数が増える。そこを今回の悪魔は狙ってきたんだろうな」
曰く、黄色の悪魔こと『吸収の悪魔』は生物を取り込み、その遺伝子を取り込み、改変し自分の子をつくりあげる。生物の多様性は、悪魔にとって強さと直結していた。
「ギャオオオオ」
「ケケケケケケケケケ」
「グォッ、グォッ」
「くそ、ほんとに気味が悪い。こいつらまるで操り人形じゃねぇか、死をまるで恐れていない」
冒険者達に次々と襲いかかってくる魔物は、群れという体をなしながら、連携というものは一切行わず、闇雲に襲いかかってくるのみであった。
「おいおい、何だこれ・・」
「悪魔はここにいないなんてことは・・ないよなぁ」
しばらく、倒しながら進んでいると冒険者達はあるものを見つけた。
大きな黒いドームが山のようにそびえ立っていたのだ。高い木々が生い茂るこの場であったからこそ、遠くからでは発見されなかった。
さらに一行は慎重を期しながら、一歩また一歩と近づいていった。
「おいおい、嘘だろ・・」
「これは、ちょっと絶望じゃないか?」
「本当に第三種なんだよな?このことについて何か触れてたか?」
冒険者達がソワソワとし出すのには、理由があった。
「「虫は力持ち・・だけど、人間の力には負ける」と仰っていた・・・つまり、正面突破なのだろう」
ラーファは、キールが言っていたことからやるべき事を推測した。
その黒いドームに近づいて初めて分かったのだ。
「でも・・それって、虫が人間サイズだったらどうするんだ?」
ドームの壁、天井全てが、人間サイズの蟻や蜘蛛、サソリなどの虫で構成されていたのだ。
「こんな大きな木エルフの国でもなかなか見ないですよ・・・・ってあれ?外から見たときこんな木ありましたっけ」
ラーファが不思議に思い振り替えりキールに尋ねた。
「あれ?キール殿?」
辺りを見渡してみても、キールは居なかった。さらにいえば先ほどまで見ていた風景とは違い柵や噴水などの人工物が一切無く、あるとしたら大樹の根元にある祠だけだった。
「ここは・・・」
あまりのことにラーファは呆然と立ちすくんでいた。
・・・・こちらに・・やっと・・あらわれた・・扉の開き手・・
「だれだ?・・この声、聞き覚えがある・・」
ラーファはどことなく懐かしさを覚えていた。昔聞いたことがあるような、そんな優しい声だった。
「あなたか?」
大樹の方から声がしたような気がして視線を向けたが、違うことに気づいた。その声は祠から聞こえていた。
・・・あなたの・・なにかを・・・ください・・・
「何かって、何でも良いのか?・・・・こんなものでも」
何故か、その母親のような暖かみをもった声の言うがままに従うべきだと感じ、ラーファは身につけていたネックレスを供えた。
・・・・ありがとう・・・守人は集いつつある・・・あと少し・・・
「何だったのだろうか・・・」
不思議な現象に思考を注がずにいられなかった。
「ファ・・・ラー・・・ラーファ!」
「はい!ってキール殿。どうかされたのですか」
自分を呼ぶ声に意識が覚醒すると、心配そうにこちらを見ているキールがいた。
「どうかしたのかって、大丈夫なら良いんだけど・・」
キールも少しばかり不安そうだが、ラーファに異常が無いことを確認すると、少しホッとしたように表情をやわらげた。
「体調が優れないようなら帰ろうか?」
「いえ!大丈夫?だと思います」
気遣うキールに、自分の都合でキールの行動を邪魔するわけにはいかないと、ラーファは喰い気味で否定した。
「王都にもこんなところがあったんですね」
「そうだね、ありがとうね、俺の観光についてきてくれて」
それから、普通に観光を楽しんだ2人は、ラーファの明日に備えて早めに帰宅した。
6日目、ラーファは朝から冒険者ギルドに来ていた。
「集まってくれてありがとう。今回は第三種緊急依頼とはいえ、気を抜かずに臨んでほしい。昨日先遣隊が大方の場所を特定した。王都の湿地帯のさらに先、熱帯付近に普通の魔物では持っていない能力を有していたり、キメラのようにつぎはぎのモンスターが多く確認された。恐らく、悪魔は黄色の悪魔『吸収の悪魔』だろう。今回は時間が鍵となる。皆頑張ってくれ。以上!質問がある奴はいるか?」
ギルド長が全員に資料を配付し、大きな声で説明していた。
ラーファが資料に目を落とすと、びっしりと今回の作戦や報酬が書かれていた。
「もうこれ以上ないな!では出発だ!」
「「「「うおおおおおおお」」」」
あらかたの質問が終わり、冒険者一行は、悪魔討伐へ歩みを進めた。
「なんだか、熱いのに寒気がするぜ」
「ああ、明らかに異様な雰囲気が漂っているな」
冒険者達は、つぎはぎのモンスターに最初は大げさに気味悪がりながら倒していたものの、やはり不気味さに完璧には慣れないでいた。
「ここら辺の熱帯気候は、生物が盛んに弱肉強食の食物連鎖を行っているからな。自然と子孫繁栄のために数が増える。そこを今回の悪魔は狙ってきたんだろうな」
曰く、黄色の悪魔こと『吸収の悪魔』は生物を取り込み、その遺伝子を取り込み、改変し自分の子をつくりあげる。生物の多様性は、悪魔にとって強さと直結していた。
「ギャオオオオ」
「ケケケケケケケケケ」
「グォッ、グォッ」
「くそ、ほんとに気味が悪い。こいつらまるで操り人形じゃねぇか、死をまるで恐れていない」
冒険者達に次々と襲いかかってくる魔物は、群れという体をなしながら、連携というものは一切行わず、闇雲に襲いかかってくるのみであった。
「おいおい、何だこれ・・」
「悪魔はここにいないなんてことは・・ないよなぁ」
しばらく、倒しながら進んでいると冒険者達はあるものを見つけた。
大きな黒いドームが山のようにそびえ立っていたのだ。高い木々が生い茂るこの場であったからこそ、遠くからでは発見されなかった。
さらに一行は慎重を期しながら、一歩また一歩と近づいていった。
「おいおい、嘘だろ・・」
「これは、ちょっと絶望じゃないか?」
「本当に第三種なんだよな?このことについて何か触れてたか?」
冒険者達がソワソワとし出すのには、理由があった。
「「虫は力持ち・・だけど、人間の力には負ける」と仰っていた・・・つまり、正面突破なのだろう」
ラーファは、キールが言っていたことからやるべき事を推測した。
その黒いドームに近づいて初めて分かったのだ。
「でも・・それって、虫が人間サイズだったらどうするんだ?」
ドームの壁、天井全てが、人間サイズの蟻や蜘蛛、サソリなどの虫で構成されていたのだ。
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