35 / 45
お出かけ
しおりを挟む
「あ、キール殿おはようございます。流石キール殿ですね。これだけの社員に昨日のこと尋ねられましたよって・・・あれ?」
先ほどまで居たたくさんの社員が蜘蛛の子を散らすように、一斉にどこかへ行き、その場にはラーファ1人となっていた。
配達会社グリフォンフライ社員社長大好き会において、社長は遠巻きに見守るものであり抜け駆けしてはならないという鉄の掟が存在するのだ。
「あはは、ラーファ、そんなに気を遣わなくてもいいんだよ。分かってるんだ、最近社員から避けられてるんだよ」
「いえ、決してそんなことはないのですが・・・」
周りを見渡すと、社員達はこちらを見ながら必死に首を振っていた。
だったら、普通に喋ればいいのに・・・
「それで、キール殿今日はどういたしますか?」
「うーん、今日は特にすることもないから、お昼から飲んじゃおうかな」
今日も・特にすることのないキールは、ラーファをお酒に誘った。
「そうと決まれば、早速仕事終わらせるからちょっと待ってて」
キールがそう言い、社長室に駆け込みしばらくして、すぐに出てきた。
「もう、終わらせたのですか?」
あまりの早さにラーファは驚いた。
「うん!お酒が待っているからね」
キールがフンスっ!と鼻息を荒くして、待ちきれないとばかりに階段を駆け下りてきた。
それから、キールらは酒場「ゴールドラッシュ」に来ていた。
「おい、最近見ないと思っていたが、遂に来たな」
「念のため、毎日張っといてよかったな」
「今日は、悪魔の話か、対処の話か、いったいなんだろうな」
ラーファのよく聞こえる耳は、冒険者達のひそひそ話を受け取っていた。そして、ラーファはハッとさせられた。
なるほど!ただお酒の席に誘ったのではなく、何かしらの事件についての話をするために来たのか!・・・もしかして私は今、試されているのか!!!
ラーファは、背筋を少し伸ばした。
「そう言えば、先日のジャイアントヘルフロッグなのですが、異常に俊敏でしたよね。あれって、何故なのでしょうか」
しばらく、変哲も無い会話をしたあとラーファが切り込んだ。
周りの冒険者も遂に来たかと、店内の緊張度が増した。
「あー、そうね。あれね、生まれつきじゃない?」
ニコニコ。お酒が入っているのと、知ったかぶりでいつもの3割増しで笑顔だった。
「生まれつきですか?てことは故意的に生みだしたものがいるということですか」
「故意的に生まれたかどうかは分からないけどね。あ、マスター、このシカラの実を2人前ください」
ラーファの質問に話半分で返しつつ、話題転換のために、新しいおつまみの注文をした。
「2人前にしては少ないんですね」
ラーファが出てきたシカラの実に対し失礼なことを言った。
「ああ、シカラの実は人間には大丈夫なんだけど、少し毒素があるんだ。そのピリッと感が美味しいんだけどね。虫とかに食べられないように進化するって生命の神秘だよね」
のほほんとしたキールの表情とは裏腹に、ラーファを含めた冒険者達の表情は険しくなった。
「あ、生命の神秘と言えば、虫って力持ちって知ってた?種類によっては自分の50倍の重さの物を運べるんだって。まぁでも、それより強い圧倒的な・・例えば人間とかの力には負けちゃうんだけど」
キールはどこかで聞きかじった知識を自慢げに披露した。
「じゃあ、今日はこのくらいにしてお開きにしようか」
太陽が下がり始め、辺りが薄く黄色に染まり始めた頃、2人はそのまま解散した。
5日目、出社するなりラーファに受付の子が手紙を渡した。
開いて読んでみると、内容は冒険者登録しており、なおかつ上位の者だけの強制召集であった。
「何々?第三種緊急依頼?・・あぁ、これが噂の・・えーと、出発は明日か」
ラーファが依頼を読んでいると、ちょうどキールも出社してきた。
「おはよう~」
「おはようございます。キール殿突然で申し訳ないのですが、明日は、緊急招集がかかってしまい、一緒に居ることが出来なくなってしまいました」
「おっけー、気をつけてね」
まだ少し、寝ぼけているのかキールは目を擦っていた。
「では今日は、何をしますか?」
「せっかくだし観光でもしようかな。昨日の帰りに良い場所を見つけたんだ」
満面の笑みで今日も仕事をサボる宣言をした。
「わかりました。お供します」
ラーファは辺りを見渡し、せわしなく動いている社員達を見て、色々とすごいなと改めて感心しながら、ドアを出て行くキールの後を追いかけた。
「それで、どこへ行くのですか?」
「王城の裏にね、すごい綺麗な公園というか広場を見つけたんだ。入場料は少しするけど、遠目から見た限り払う価値はあると思うよ」
ラーファの質問に子どものようにウキウキで答えた。
王都をしばらく歩いてやっとたどり着き、入場料を払って中に入ると、そこは王都の喧噪を忘れさせるほど静かで幻想的な緑が生い茂っていた。
「本当に綺麗ですね。なんだか故郷を思い出します。」
エルフにとって自然は生活の一部であり、親しみに満ちていた。
「そうだね、僕も田舎出身だから懐かしいよ」
2人はその自然と、会話を楽しみながら進んでいった。
先ほどまで居たたくさんの社員が蜘蛛の子を散らすように、一斉にどこかへ行き、その場にはラーファ1人となっていた。
配達会社グリフォンフライ社員社長大好き会において、社長は遠巻きに見守るものであり抜け駆けしてはならないという鉄の掟が存在するのだ。
「あはは、ラーファ、そんなに気を遣わなくてもいいんだよ。分かってるんだ、最近社員から避けられてるんだよ」
「いえ、決してそんなことはないのですが・・・」
周りを見渡すと、社員達はこちらを見ながら必死に首を振っていた。
だったら、普通に喋ればいいのに・・・
「それで、キール殿今日はどういたしますか?」
「うーん、今日は特にすることもないから、お昼から飲んじゃおうかな」
今日も・特にすることのないキールは、ラーファをお酒に誘った。
「そうと決まれば、早速仕事終わらせるからちょっと待ってて」
キールがそう言い、社長室に駆け込みしばらくして、すぐに出てきた。
「もう、終わらせたのですか?」
あまりの早さにラーファは驚いた。
「うん!お酒が待っているからね」
キールがフンスっ!と鼻息を荒くして、待ちきれないとばかりに階段を駆け下りてきた。
それから、キールらは酒場「ゴールドラッシュ」に来ていた。
「おい、最近見ないと思っていたが、遂に来たな」
「念のため、毎日張っといてよかったな」
「今日は、悪魔の話か、対処の話か、いったいなんだろうな」
ラーファのよく聞こえる耳は、冒険者達のひそひそ話を受け取っていた。そして、ラーファはハッとさせられた。
なるほど!ただお酒の席に誘ったのではなく、何かしらの事件についての話をするために来たのか!・・・もしかして私は今、試されているのか!!!
ラーファは、背筋を少し伸ばした。
「そう言えば、先日のジャイアントヘルフロッグなのですが、異常に俊敏でしたよね。あれって、何故なのでしょうか」
しばらく、変哲も無い会話をしたあとラーファが切り込んだ。
周りの冒険者も遂に来たかと、店内の緊張度が増した。
「あー、そうね。あれね、生まれつきじゃない?」
ニコニコ。お酒が入っているのと、知ったかぶりでいつもの3割増しで笑顔だった。
「生まれつきですか?てことは故意的に生みだしたものがいるということですか」
「故意的に生まれたかどうかは分からないけどね。あ、マスター、このシカラの実を2人前ください」
ラーファの質問に話半分で返しつつ、話題転換のために、新しいおつまみの注文をした。
「2人前にしては少ないんですね」
ラーファが出てきたシカラの実に対し失礼なことを言った。
「ああ、シカラの実は人間には大丈夫なんだけど、少し毒素があるんだ。そのピリッと感が美味しいんだけどね。虫とかに食べられないように進化するって生命の神秘だよね」
のほほんとしたキールの表情とは裏腹に、ラーファを含めた冒険者達の表情は険しくなった。
「あ、生命の神秘と言えば、虫って力持ちって知ってた?種類によっては自分の50倍の重さの物を運べるんだって。まぁでも、それより強い圧倒的な・・例えば人間とかの力には負けちゃうんだけど」
キールはどこかで聞きかじった知識を自慢げに披露した。
「じゃあ、今日はこのくらいにしてお開きにしようか」
太陽が下がり始め、辺りが薄く黄色に染まり始めた頃、2人はそのまま解散した。
5日目、出社するなりラーファに受付の子が手紙を渡した。
開いて読んでみると、内容は冒険者登録しており、なおかつ上位の者だけの強制召集であった。
「何々?第三種緊急依頼?・・あぁ、これが噂の・・えーと、出発は明日か」
ラーファが依頼を読んでいると、ちょうどキールも出社してきた。
「おはよう~」
「おはようございます。キール殿突然で申し訳ないのですが、明日は、緊急招集がかかってしまい、一緒に居ることが出来なくなってしまいました」
「おっけー、気をつけてね」
まだ少し、寝ぼけているのかキールは目を擦っていた。
「では今日は、何をしますか?」
「せっかくだし観光でもしようかな。昨日の帰りに良い場所を見つけたんだ」
満面の笑みで今日も仕事をサボる宣言をした。
「わかりました。お供します」
ラーファは辺りを見渡し、せわしなく動いている社員達を見て、色々とすごいなと改めて感心しながら、ドアを出て行くキールの後を追いかけた。
「それで、どこへ行くのですか?」
「王城の裏にね、すごい綺麗な公園というか広場を見つけたんだ。入場料は少しするけど、遠目から見た限り払う価値はあると思うよ」
ラーファの質問に子どものようにウキウキで答えた。
王都をしばらく歩いてやっとたどり着き、入場料を払って中に入ると、そこは王都の喧噪を忘れさせるほど静かで幻想的な緑が生い茂っていた。
「本当に綺麗ですね。なんだか故郷を思い出します。」
エルフにとって自然は生活の一部であり、親しみに満ちていた。
「そうだね、僕も田舎出身だから懐かしいよ」
2人はその自然と、会話を楽しみながら進んでいった。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説

【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。
これが全ての始まりだった。
声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。
なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。
加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。
平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。
果たして、芳乃の運命は如何に?

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。
更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。
「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」
様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは?
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる