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無敵?
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「え?呼んだ?」
キールは何事もなかったかのように呼び声に答えた。
「キール殿!?なんで、生きているのですか?」
ラーファはポリポリと頭を掻くキールに目を見開いた。明らかに人が生きていけない程の負傷を負っていたはずなのにキールの身体は、服以外無傷だったのだ。
「なんか悪役みたいな台詞だね。なんでって言われても、毒も効かないっぽいね。プルルンのおかげかな」
キールの身体はほぼスライムと同化しているため、魔法以外の物理攻撃はもとより、毒の類いも一切効かないのであった。
「あなたという人は・・・もう、なんでもありですか」
ラーファはキールという人物を理解することを若干諦めたように肩を落とした。
「アハハハ、とりあえず依頼達成だね。良かった良かった」
「はい、帰りましょう」
ラーファはキールの朗らかな笑い声にただ同意するのみであった。
討伐依頼からの帰り道、ラーファは魔法鞄から自分の着替えを出して着替えているキールを見ながら、改めてその不思議な存在に思考を持っていった。
私でさえ感知できなかったモンスターの居場所を的確に認知していたこと。毒をくらいながらも無傷であったこと。道中に正確なアドバイスをくれたこと、どれをとっても明らかに私の実力より高いレベルに居る・・・
もしかしてキール殿はSランクの上、伝説の勇者と同じSSランクの境地に立っているのではないだろうか。
だとしたら不思議なのが、上級冒険者独特のゾワゾワする空気感が全くないところなんだが・・・
「キール殿は、冒険者になろうと思った事は無いのですか?」
ラーファは、着替え終わり来る前に屋台で買った焼き鳥を食べているキールに疑問をぶつけた。
「ん?そりゃね、憧れはあったよ。でも気づいたんだよ。俺はモンスターを倒したいんじゃなくて、この不思議な世界を楽しみたいんだ」
キールはどこか遠くの景色を見ながら述べた。
「冒険者は一度もならなかったのですか?」
「あー、すごくオファーは来たけど断ったよ。めんどくさいしね」
事も無げにキールは呟いた。
「断ったって・・・・冒険者ギルドからのオファーなんて相当珍しいですよ!何してるんですか!?」
ラーファはキールに詰め寄り、肩を揺さぶった。
「まぁ、やりたいことをやれる方法が別にあったんだよ」
「はぁ、もったいない」
ラーファは何を言っても無駄なようだと自身のこめかみを押さえ、ため息をついた。
「ほら、置いてくよー」
キールは、1人で頭を抱えているラーファを変な目で見ながら、帰り道を歩き始めた。
冒険者ギルドに戻ってきた2人には、自然と道が割れていた。
それもそのはずである。1人は王都の脳と未来と呼ばれているキール、流浪のSランクラーファ、どちらも冒険者で知らぬ者はおらず、さらにキールは無傷、ラーファは所々泥にまみれ、跳ねた毒で服が溶けている。この異様な状況が何かが起きたのだろうと冒険者達を後ずらせた。
そして魔法鞄からジャイアントヘルフロッグの死体を取り出し、解体所で取り出すと、それを遠巻きに見ていた冒険者達は再び後ずらせた。
「おいおい、あれってAランクでも上位の魔物だよな」
「それを2人で倒したのか」
「しかも見てみろ、キールは無傷だぞ」
「これで、今まで不明だったキールの実力がわかったな」
「昔、キールは冒険者ギルドにスカウトされてたって話も真実味を帯びてきたな」
冒険者たちのなかでキールの評価はとどまることを知らなかった。
それから、会社にもどるとキールは疲れたのかすぐに寝てしまった。
そんなキールを見ながらラーファはゆっくりと帰る途中に買った本を読んでいた。
「いつぶりだろう。こんな風にゆっくり読書をするなんて」
ラーファは3日目にして怒濤の1日だったはずなのに、なぜか1番ゆっくりできた一日な気がした。
4日目、出社するとラーファはすぐさま社員に取り囲まれた。
「聞きましたよ!社長と討伐に行ったんですよね」
「どうでした?社長の戦闘シーン見れました?」
「社長が本気で戦っているところを見た人はいなんですよ」
「いいなぁ、私も社長と一緒にお出かけしたいです!」
「すまない、私もキール殿が戦っているところを見てはいないんだ。しかし、その実力は紛れもない本物だと断言できるほどにキール殿は戦況をよく把握していたよ。私もまだまだだと実感させられたよ」
「ラーファさんにそう言わせるなんて、流石社長ですね!」
「やっぱり、社長の実力は未知数ですね」
「おはよう~」
会社のフロントのドアを開けキールが出社してきた。
キールは何事もなかったかのように呼び声に答えた。
「キール殿!?なんで、生きているのですか?」
ラーファはポリポリと頭を掻くキールに目を見開いた。明らかに人が生きていけない程の負傷を負っていたはずなのにキールの身体は、服以外無傷だったのだ。
「なんか悪役みたいな台詞だね。なんでって言われても、毒も効かないっぽいね。プルルンのおかげかな」
キールの身体はほぼスライムと同化しているため、魔法以外の物理攻撃はもとより、毒の類いも一切効かないのであった。
「あなたという人は・・・もう、なんでもありですか」
ラーファはキールという人物を理解することを若干諦めたように肩を落とした。
「アハハハ、とりあえず依頼達成だね。良かった良かった」
「はい、帰りましょう」
ラーファはキールの朗らかな笑い声にただ同意するのみであった。
討伐依頼からの帰り道、ラーファは魔法鞄から自分の着替えを出して着替えているキールを見ながら、改めてその不思議な存在に思考を持っていった。
私でさえ感知できなかったモンスターの居場所を的確に認知していたこと。毒をくらいながらも無傷であったこと。道中に正確なアドバイスをくれたこと、どれをとっても明らかに私の実力より高いレベルに居る・・・
もしかしてキール殿はSランクの上、伝説の勇者と同じSSランクの境地に立っているのではないだろうか。
だとしたら不思議なのが、上級冒険者独特のゾワゾワする空気感が全くないところなんだが・・・
「キール殿は、冒険者になろうと思った事は無いのですか?」
ラーファは、着替え終わり来る前に屋台で買った焼き鳥を食べているキールに疑問をぶつけた。
「ん?そりゃね、憧れはあったよ。でも気づいたんだよ。俺はモンスターを倒したいんじゃなくて、この不思議な世界を楽しみたいんだ」
キールはどこか遠くの景色を見ながら述べた。
「冒険者は一度もならなかったのですか?」
「あー、すごくオファーは来たけど断ったよ。めんどくさいしね」
事も無げにキールは呟いた。
「断ったって・・・・冒険者ギルドからのオファーなんて相当珍しいですよ!何してるんですか!?」
ラーファはキールに詰め寄り、肩を揺さぶった。
「まぁ、やりたいことをやれる方法が別にあったんだよ」
「はぁ、もったいない」
ラーファは何を言っても無駄なようだと自身のこめかみを押さえ、ため息をついた。
「ほら、置いてくよー」
キールは、1人で頭を抱えているラーファを変な目で見ながら、帰り道を歩き始めた。
冒険者ギルドに戻ってきた2人には、自然と道が割れていた。
それもそのはずである。1人は王都の脳と未来と呼ばれているキール、流浪のSランクラーファ、どちらも冒険者で知らぬ者はおらず、さらにキールは無傷、ラーファは所々泥にまみれ、跳ねた毒で服が溶けている。この異様な状況が何かが起きたのだろうと冒険者達を後ずらせた。
そして魔法鞄からジャイアントヘルフロッグの死体を取り出し、解体所で取り出すと、それを遠巻きに見ていた冒険者達は再び後ずらせた。
「おいおい、あれってAランクでも上位の魔物だよな」
「それを2人で倒したのか」
「しかも見てみろ、キールは無傷だぞ」
「これで、今まで不明だったキールの実力がわかったな」
「昔、キールは冒険者ギルドにスカウトされてたって話も真実味を帯びてきたな」
冒険者たちのなかでキールの評価はとどまることを知らなかった。
それから、会社にもどるとキールは疲れたのかすぐに寝てしまった。
そんなキールを見ながらラーファはゆっくりと帰る途中に買った本を読んでいた。
「いつぶりだろう。こんな風にゆっくり読書をするなんて」
ラーファは3日目にして怒濤の1日だったはずなのに、なぜか1番ゆっくりできた一日な気がした。
4日目、出社するとラーファはすぐさま社員に取り囲まれた。
「聞きましたよ!社長と討伐に行ったんですよね」
「どうでした?社長の戦闘シーン見れました?」
「社長が本気で戦っているところを見た人はいなんですよ」
「いいなぁ、私も社長と一緒にお出かけしたいです!」
「すまない、私もキール殿が戦っているところを見てはいないんだ。しかし、その実力は紛れもない本物だと断言できるほどにキール殿は戦況をよく把握していたよ。私もまだまだだと実感させられたよ」
「ラーファさんにそう言わせるなんて、流石社長ですね!」
「やっぱり、社長の実力は未知数ですね」
「おはよう~」
会社のフロントのドアを開けキールが出社してきた。
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