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「カリスマ性・・・」
ラーファはユリが教えてくれたことが気になり、魔法の練習に身が入らなくなっていた。
「ダメだ、一端休憩しよう・・」
お昼ご飯を食べていないことに気づき、ご飯をどうするかキールに聞きに行った。
「お昼ご飯どうしますか?」
社長室を開きキールに尋ねた。
「あー、俺は出社する前に食べてきちゃったからなー、観光がてら食べてきなよ。今日は外に出るつもりもないからゆっくりしておいで」
キールは本を読む手をいったん止めると、ラーファを見て一人で行くように勧めた。
「わかりました。それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい」とキールの言葉を聞き終えると、街へ向かった。
ラーファは冒険者ギルドに来ていた。ギルド登録はしていないものの依頼自体は受けられるし、食堂も使える。各地を旅するラーファにとって、冒険者ギルドはありがたい生活の支えだった。
「お、さすが王都だな。ご飯の味も美味しいな」
ラーファが野菜スープに舌鼓を打っていると、少し遠くの席から「キール」という単語が聞こえてきた。
何事かと、優れたエルフの聴力を集中させ耳を澄ませた。
「俺もあんな風になりてぇな」
「キールみたいにって、この王都の顔にでもなりたいのか?」
「それもいいけどよ、あんな慕ってる人間の質と量よ。尊敬される人間になりたいの、俺は」
「プハハハ!お前が?無理だろう。キール程頭が良くて実力も兼ね備えている人間にならねぇと」
「わぁってるよ。言ってみるぐらいいいじゃねぇか」
ラーファは、いまいちピンときていなかった。ユリに聞いたときのように考えようとも思わなかった。
「やはり、言葉の重みと関わった時間が違うな。キールと親しい人に聞いてみるか」
ラーファは席を立ち、会社に戻った。
会社に戻り、社長室を開けた。すると今日は寝ていないようだった。
「おかえり、どこ行ってたの?」
「冒険者ギルドに行ってきました。王都のギルドのご飯は美味しいですね」
ラーファは先ほどの食べたご飯の味を思い出して、少しはにかんだ。
「だよね~、俺も初めて来たときはびっくりしちゃったよ」
「あれ?キール殿は王都出身じゃないんですか?」
ラーファは眉を上げ驚いた。キールの纏う雰囲気はいかにも生まれも育ちも都会だった。80年生きてきて、それなりに人を見る目は鍛えてきたつもりであったが、やはりキールという男を理解するのは難しい。
「違うよ?俺は王国出身だけど、東の果ての村から来たんだ」
「そうだったんですね、王都に来たのはやはり会社を作るためですか?」
ラーファは今度こそ当たるかと半ば当てずっぽうで尋ねた。
「いいや?なんか流れで来ちゃって、会社を建てたのも流れだよ」
「そうなんですか」
そんなわけないでしょうに。まだ教えてはくれないんですね。いつか必ず教えて貰えるように、今は精進しましょう。
「魔法の練習をもう少ししてきて良いですか?」
ラーファは、そうだと手のひらにポンッと拳をたたきながらキールに尋ねた。
「ああ、頑張って。5時くらいに、修練所は閉まるからそれまでね」
キールからの忠告を受け取るとラーファは再び訓練所へ向かった。
訓練所に着くとまだユリは精神統一しながら魔力を集中していた。しかも始めた頃より回路が強化され、流れがスムーズになっているのをエルフの魔力感知能力の高さから感じ取っていた。
「流石としか言いようがないな。100万人に一人の才能の持ち主か・・あれだけの人がキール殿を慕っているのか」
「お、ラーファといったか、お前さんも訓練かい?」
グランツが訓練所に来て、ラーファに気づき話しかけてきた。
「あ、グランツさんちょうどいいところに、聞きたいことがあるんですが」
「おう、いいぜ!なんでも聞いてくれ」
グランツは白い歯を見せながらサムズアップした。
「あの、キール殿の強さって何だと思いますか?」
ラーファはユリと同じ質問をした。
「社長の強さか・・そうだな、ありきたりだが、思いやりとかか?」
グランツはしばし考えた後、答えた。
「思いやり?ですか・・」
少し困ったようにラーファが首をかしげると、再びグランツが話し始めた。
「少し昔の話になるんだが、俺とロイは元冒険者なんだけどよ。ま、いろいろあってやさぐれてたんだよ。そしたら社長だけが俺らの事を分かってくれたんだよ。何気ない一言だったけど、その一言が、たまらなく俺らが欲しかった言葉なんだよ。そっからだな俺らが社長の下につこうと思ったのは」
「そんなことが・・・」
「あの思いやりが、人間が強いって事なんだろうな。ま、一回一緒に冒険者ギルドの依頼をしてみれば良いよ」
「なるほど・・・」
グランツの言葉を噛みしめながら、こうして2日目は幕を閉じた。
ラーファはユリが教えてくれたことが気になり、魔法の練習に身が入らなくなっていた。
「ダメだ、一端休憩しよう・・」
お昼ご飯を食べていないことに気づき、ご飯をどうするかキールに聞きに行った。
「お昼ご飯どうしますか?」
社長室を開きキールに尋ねた。
「あー、俺は出社する前に食べてきちゃったからなー、観光がてら食べてきなよ。今日は外に出るつもりもないからゆっくりしておいで」
キールは本を読む手をいったん止めると、ラーファを見て一人で行くように勧めた。
「わかりました。それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい」とキールの言葉を聞き終えると、街へ向かった。
ラーファは冒険者ギルドに来ていた。ギルド登録はしていないものの依頼自体は受けられるし、食堂も使える。各地を旅するラーファにとって、冒険者ギルドはありがたい生活の支えだった。
「お、さすが王都だな。ご飯の味も美味しいな」
ラーファが野菜スープに舌鼓を打っていると、少し遠くの席から「キール」という単語が聞こえてきた。
何事かと、優れたエルフの聴力を集中させ耳を澄ませた。
「俺もあんな風になりてぇな」
「キールみたいにって、この王都の顔にでもなりたいのか?」
「それもいいけどよ、あんな慕ってる人間の質と量よ。尊敬される人間になりたいの、俺は」
「プハハハ!お前が?無理だろう。キール程頭が良くて実力も兼ね備えている人間にならねぇと」
「わぁってるよ。言ってみるぐらいいいじゃねぇか」
ラーファは、いまいちピンときていなかった。ユリに聞いたときのように考えようとも思わなかった。
「やはり、言葉の重みと関わった時間が違うな。キールと親しい人に聞いてみるか」
ラーファは席を立ち、会社に戻った。
会社に戻り、社長室を開けた。すると今日は寝ていないようだった。
「おかえり、どこ行ってたの?」
「冒険者ギルドに行ってきました。王都のギルドのご飯は美味しいですね」
ラーファは先ほどの食べたご飯の味を思い出して、少しはにかんだ。
「だよね~、俺も初めて来たときはびっくりしちゃったよ」
「あれ?キール殿は王都出身じゃないんですか?」
ラーファは眉を上げ驚いた。キールの纏う雰囲気はいかにも生まれも育ちも都会だった。80年生きてきて、それなりに人を見る目は鍛えてきたつもりであったが、やはりキールという男を理解するのは難しい。
「違うよ?俺は王国出身だけど、東の果ての村から来たんだ」
「そうだったんですね、王都に来たのはやはり会社を作るためですか?」
ラーファは今度こそ当たるかと半ば当てずっぽうで尋ねた。
「いいや?なんか流れで来ちゃって、会社を建てたのも流れだよ」
「そうなんですか」
そんなわけないでしょうに。まだ教えてはくれないんですね。いつか必ず教えて貰えるように、今は精進しましょう。
「魔法の練習をもう少ししてきて良いですか?」
ラーファは、そうだと手のひらにポンッと拳をたたきながらキールに尋ねた。
「ああ、頑張って。5時くらいに、修練所は閉まるからそれまでね」
キールからの忠告を受け取るとラーファは再び訓練所へ向かった。
訓練所に着くとまだユリは精神統一しながら魔力を集中していた。しかも始めた頃より回路が強化され、流れがスムーズになっているのをエルフの魔力感知能力の高さから感じ取っていた。
「流石としか言いようがないな。100万人に一人の才能の持ち主か・・あれだけの人がキール殿を慕っているのか」
「お、ラーファといったか、お前さんも訓練かい?」
グランツが訓練所に来て、ラーファに気づき話しかけてきた。
「あ、グランツさんちょうどいいところに、聞きたいことがあるんですが」
「おう、いいぜ!なんでも聞いてくれ」
グランツは白い歯を見せながらサムズアップした。
「あの、キール殿の強さって何だと思いますか?」
ラーファはユリと同じ質問をした。
「社長の強さか・・そうだな、ありきたりだが、思いやりとかか?」
グランツはしばし考えた後、答えた。
「思いやり?ですか・・」
少し困ったようにラーファが首をかしげると、再びグランツが話し始めた。
「少し昔の話になるんだが、俺とロイは元冒険者なんだけどよ。ま、いろいろあってやさぐれてたんだよ。そしたら社長だけが俺らの事を分かってくれたんだよ。何気ない一言だったけど、その一言が、たまらなく俺らが欲しかった言葉なんだよ。そっからだな俺らが社長の下につこうと思ったのは」
「そんなことが・・・」
「あの思いやりが、人間が強いって事なんだろうな。ま、一回一緒に冒険者ギルドの依頼をしてみれば良いよ」
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