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キールに悪魔のかぎ爪が差し迫った。
「空の慈愛スカイ・アフェクション」
キールは目の前の悪魔の身体から無数の光が飛び出してるのを呆然と見ていた。
それは、ミルカから放たれた無数の閃光がミサイルのように悪魔を打ち抜いていた。
「ジジジ、なぜ、魔力は先ほどの戦闘でつきていたはず・・・」
悪魔は数え切れない程の穴の開いた身体を捻り、後ろのミルカを見ると、片手をこちらに向けながら、もう片方の手で龍晶華を囓っていた。
「・・・拾っておいて良かった」
いかに生命力の強い虫型の悪魔といえど、全身が穴だらけでは致命傷だったのだろう、悪魔はその場で膝から崩れ落ちた。
「ジジ、これまでか・・・しかし、最期にプレゼントを贈ろう・・」
悪魔がそう言い、灰となり消えかかると同時にキールの身体に異変が起きた。
「ジジ、お前等の中で、一番強いのはこの男なのだろう?ならばこれでおわりだぁ。ジジジジジ・・・」
悪魔の身体が消えるとキールの身体が一体のモンスターに姿を変えた。
スライムに。
「???」
冒険者たちはミルカですらワイバーンであったのだからと、最大級の警戒でその変身を見届け、現れたのが最弱の代名詞であるスライムであったため。全員が一瞬呆気にとられていた。
「いや、まて。あのキールだぞ。ただのスライムのそれも一回り小さいだなんて事があるか。とんでもなく強いスライムかも知れないから気をつけろ!」
冒険者の1人がそう言うと、彼らはもう一度警戒態勢を敷いた。
ぷるぷるぷる
しかし、スライムもといキールはその場でぷるぷると震えているだけであった。
「・・・心配いらない」
まるで時が止まっているかのような静寂の中、ミルカがよろよろとキールの元へ歩いてきた。
「・・・社長ほどになれば、たとえモンスターになったとしても、攻撃をしない。たとえ意識が保てず、攻撃してしまったとしても、害のないスライムになった。呪いさえもコントロールできる社長は流石としか言いようがない」
ミルカは周りの冒険者たちに語りかけ、キールを抱き上げ、龍晶華を取り込ませた。
龍晶華の魔力がスライムの身体に溶け込むと、再びスライムは人の形へと変えていき、もとのキールになった。
「お、元に戻った。ありがとう、ミルカ」
キールはスライムのときに見ていた光景から、ミルカが何かをしたのだろうと礼を述べた。
「・・・問題ない。ところで呪いをコントロールする術を教えて欲しい」
ミルカの探究心はこんな状況でも変わらなかった。
「うん、それはまた今度ね」
にこにこ
キールはそんなこと知っているはずもなかった。ただ、その魔力の量、質、性格により、最低レベルの子どものスライムになったに過ぎないのだから。
しかし、ミルカと冒険者たちはキールがそんな弱いはずがないと、その可能性をとっくに捨て去っていた。
「それじゃあ、とりあえず、残りをどうしようか」
「・・・村の人たちと、元冒険者を拒絶せずに受け入れればいい」
それからは、元冒険者たちは、同じパーティーだった者が。村人たちはミルカや、ベテランの冒険者たちにより次々と元に戻されていった。
しかし、元に戻り、喜んでいたのは冒険者たちだけであった。
「ああああああああ、タク!私は息子を・・・」
「俺の最愛の人が・・・」
「これから、僕はどうしたら良いんだ・・・」
「独りになってしまった」
村人たちは、自分の手で愛しき者を殺したという事実が襲って阿鼻叫喚の地獄と成り果てていた。
泣く者、怒れる者、絶望する者。そこに希望を見いだしている者はひとりとして居なかった。
「クソ、胸糞わりいぜ」
冒険者たちもまわりの状況が見えてきたのか、束の間の喜びは消えていった。
「・・・・・・・・・」
キールもその光景に眉を下げ、ただただ今のすべてを哀しんでいた。
「これから先は、俺等ではなく国の仕事だ。今は一刻も早くこのことを国に伝えるぞ」
ベテランの冒険者がそういい、まわりが頷き、急いで王都へ戻っていった。
王都まで帰っている途中、キールはミルカにささやいた。
「あの村に、持てる最大限をもって支援する」
「・・・わかった。そう動く」
今回の戦いでは悪魔を倒せはしたが、今までのような気持の良い勝ちではなかった。
「空の慈愛スカイ・アフェクション」
キールは目の前の悪魔の身体から無数の光が飛び出してるのを呆然と見ていた。
それは、ミルカから放たれた無数の閃光がミサイルのように悪魔を打ち抜いていた。
「ジジジ、なぜ、魔力は先ほどの戦闘でつきていたはず・・・」
悪魔は数え切れない程の穴の開いた身体を捻り、後ろのミルカを見ると、片手をこちらに向けながら、もう片方の手で龍晶華を囓っていた。
「・・・拾っておいて良かった」
いかに生命力の強い虫型の悪魔といえど、全身が穴だらけでは致命傷だったのだろう、悪魔はその場で膝から崩れ落ちた。
「ジジ、これまでか・・・しかし、最期にプレゼントを贈ろう・・」
悪魔がそう言い、灰となり消えかかると同時にキールの身体に異変が起きた。
「ジジ、お前等の中で、一番強いのはこの男なのだろう?ならばこれでおわりだぁ。ジジジジジ・・・」
悪魔の身体が消えるとキールの身体が一体のモンスターに姿を変えた。
スライムに。
「???」
冒険者たちはミルカですらワイバーンであったのだからと、最大級の警戒でその変身を見届け、現れたのが最弱の代名詞であるスライムであったため。全員が一瞬呆気にとられていた。
「いや、まて。あのキールだぞ。ただのスライムのそれも一回り小さいだなんて事があるか。とんでもなく強いスライムかも知れないから気をつけろ!」
冒険者の1人がそう言うと、彼らはもう一度警戒態勢を敷いた。
ぷるぷるぷる
しかし、スライムもといキールはその場でぷるぷると震えているだけであった。
「・・・心配いらない」
まるで時が止まっているかのような静寂の中、ミルカがよろよろとキールの元へ歩いてきた。
「・・・社長ほどになれば、たとえモンスターになったとしても、攻撃をしない。たとえ意識が保てず、攻撃してしまったとしても、害のないスライムになった。呪いさえもコントロールできる社長は流石としか言いようがない」
ミルカは周りの冒険者たちに語りかけ、キールを抱き上げ、龍晶華を取り込ませた。
龍晶華の魔力がスライムの身体に溶け込むと、再びスライムは人の形へと変えていき、もとのキールになった。
「お、元に戻った。ありがとう、ミルカ」
キールはスライムのときに見ていた光景から、ミルカが何かをしたのだろうと礼を述べた。
「・・・問題ない。ところで呪いをコントロールする術を教えて欲しい」
ミルカの探究心はこんな状況でも変わらなかった。
「うん、それはまた今度ね」
にこにこ
キールはそんなこと知っているはずもなかった。ただ、その魔力の量、質、性格により、最低レベルの子どものスライムになったに過ぎないのだから。
しかし、ミルカと冒険者たちはキールがそんな弱いはずがないと、その可能性をとっくに捨て去っていた。
「それじゃあ、とりあえず、残りをどうしようか」
「・・・村の人たちと、元冒険者を拒絶せずに受け入れればいい」
それからは、元冒険者たちは、同じパーティーだった者が。村人たちはミルカや、ベテランの冒険者たちにより次々と元に戻されていった。
しかし、元に戻り、喜んでいたのは冒険者たちだけであった。
「ああああああああ、タク!私は息子を・・・」
「俺の最愛の人が・・・」
「これから、僕はどうしたら良いんだ・・・」
「独りになってしまった」
村人たちは、自分の手で愛しき者を殺したという事実が襲って阿鼻叫喚の地獄と成り果てていた。
泣く者、怒れる者、絶望する者。そこに希望を見いだしている者はひとりとして居なかった。
「クソ、胸糞わりいぜ」
冒険者たちもまわりの状況が見えてきたのか、束の間の喜びは消えていった。
「・・・・・・・・・」
キールもその光景に眉を下げ、ただただ今のすべてを哀しんでいた。
「これから先は、俺等ではなく国の仕事だ。今は一刻も早くこのことを国に伝えるぞ」
ベテランの冒険者がそういい、まわりが頷き、急いで王都へ戻っていった。
王都まで帰っている途中、キールはミルカにささやいた。
「あの村に、持てる最大限をもって支援する」
「・・・わかった。そう動く」
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