21 / 45
緑
しおりを挟む
時間を潰すとはイコールで酒を飲む事のキールは今日も酒場「ゴールドラッシュ」に来ていた。
「おい、来たぜ。もう冒険者達は出発したらしいからな。あとはキールが動くだけだぞ」
店内にいる、キールの周りの冒険者やギルド職員は、彼が発する言葉を聞き逃すまいと、耳を傾けていた。
「・・・・・・」
しかし、キールは何も喋らずチビチビとお酒を嗜んでいた。
それに対し、いつもと違う様子が周りの不安を作り上げていった。
「おい、なんだかいつもと違わねぇか?」
「確かに、まさかあいつをもってしても今回は厳しいのか?」
「まじかよ、やばいな。覚悟を決めて討伐に変更するか・・」
「まさか、機を伺っているとかはないよな」
そんな言葉があふれ始めた頃
「よし、そろそろ行くかぁ」
キールがそう呟くと周りは目を輝かせた。
「やっぱり、機をうかがっていたんだ」
「俺等の知らないところで、何かを待っていたのかもな」
キールの一言で一喜一憂するのであった。
お代を払いキールは外に出ると、会社には戻らず、流石のミルカもそろそろお腹すかせて帰ってくるだろうから待っていようと考え、ミルカを見送った草原に向かった。
草原に向かうため門をくぐろうとすると、門番から声をかけられた。
「キール様ですね。冒険者の方達からお話は伺っております。馬車も用意したありますので、こちらへどうぞ」
「え?」
「さあ、早く」
キールは馬車に揺られていた。あの場を押し切られ、馬車の中で話を伺うと、どうやら今、北の方にある村で、村人がモンスターとなる事件が起きているらしい。それを俺が解決するために向かっているから、急ぐため馬車を用意したのだとか。
「全くもってどういうことだ・・」
いままで、こういった無茶なお願いをされることは時々あるが、実際にここまで強引なやり方をされたことはないぞ!
キールはどうしたら良いのか分からずにただ空を見ていた。
「ああ、雲になりたい」
所変わって、北にある村「レミニ村」では、冒険者達がたった今到着したところであった。
「くそ、むごすぎる・・」
荒々しく崩れた家屋や、道端に転がるモンスターの死体をみて、彼らは悲しみを覚えた。
すると、冒険者達に気づいたのか、モンスターは彼らに攻撃し始めた。
「お前等、気合い入れろよ」
一人が活を入れ、向かい討とうとした。
「う、うあああああああ」
すると、冒険者のうち何人かが錯乱し始めた。
錯乱した彼らをよく見ると、みるみる身体が変形していき、身体の肉が膨れ上がり、装備をも飲み込み、モンスターに変わっていった。
「おい、そいつらを押さえろ!」
虫型、爬虫類型、死者型、鳥型、多種多様な元仲間を捕縛するように命令するも、まるで連鎖していくかのように次々と仲間が変わっていった。あまりに唐突のこと過ぎて、持っている龍晶華を使うことが頭から抜けていた。
「くそ、こんな急に。一体どうなってやがる・・・」
そう呟くと、冒険者達の目の前に突如一体のモンスターが現れた。
「ジジジジジ、拒絶こそ本能。この感情は感染する」
そのゴキブリを人間程の大きさにして、全身を布で隠した二足歩行のモンスターがいた。
「お前が緑の悪魔「感染の悪魔」か・・・」
冒険者の1人が睨み付けながら尋ねた。
「いかにも。私の前には精神的に弱い物は正気を保つことは許されない」
変化のない表情だったが、声からこの状況を楽しんでいることを悟った。
「ふん!」
そんな悪魔を倒すべく、斬りかかるも難なく避けられてしまった。
「ジジジジ、私のスピードは悪魔の中でもトップレベルだ。追いつけないよ。お前等の相手は、コイツに任せよう。」
そう悪魔が言うと、空から雄叫びが響いた。そちらを見上げると、黒いワイバーンが空を舞っていた。
そのワイバーンは急降下して冒険者達を襲い始めた。
攻撃されるたびに、なんとか防いで、その度に1人また1人とモンスターに変わっていった。その度に自分たちが持っている龍晶華を咀嚼し
そうして、少しずつ冒険者達が劣勢になり始めた頃、ひとりの男が現れた。
「あれ、結構ヤバめ?」
馬車に連れられたキールが現れた。
キールが緊張感のない声でそういうと、新しい獲物が出て来たと思ったのかワイバーンはキールをめがけて襲いかかった。
「おい!逃げろ!」
冒険者達の中でキールの武力的な実力は未知数であったが、少なくとも強いという事を聞いたことはなかった。
しかし、キールは一切そこから動かず、逃げる素振りもなく、ただその場にたちワイバーンを見ていた。
「GOAAAAAAAAAAAAAAAA」
ワイバーンがキールの目の前に迫った。
そしてキールは目をつむり、静かな、誰にも聞こえないような声で呟いた。
「俺はどこかで野垂れ死ぬと思っていた。まったく良い人生だった。強そうな君に殺されるなら良い思い出だ」
「おい、来たぜ。もう冒険者達は出発したらしいからな。あとはキールが動くだけだぞ」
店内にいる、キールの周りの冒険者やギルド職員は、彼が発する言葉を聞き逃すまいと、耳を傾けていた。
「・・・・・・」
しかし、キールは何も喋らずチビチビとお酒を嗜んでいた。
それに対し、いつもと違う様子が周りの不安を作り上げていった。
「おい、なんだかいつもと違わねぇか?」
「確かに、まさかあいつをもってしても今回は厳しいのか?」
「まじかよ、やばいな。覚悟を決めて討伐に変更するか・・」
「まさか、機を伺っているとかはないよな」
そんな言葉があふれ始めた頃
「よし、そろそろ行くかぁ」
キールがそう呟くと周りは目を輝かせた。
「やっぱり、機をうかがっていたんだ」
「俺等の知らないところで、何かを待っていたのかもな」
キールの一言で一喜一憂するのであった。
お代を払いキールは外に出ると、会社には戻らず、流石のミルカもそろそろお腹すかせて帰ってくるだろうから待っていようと考え、ミルカを見送った草原に向かった。
草原に向かうため門をくぐろうとすると、門番から声をかけられた。
「キール様ですね。冒険者の方達からお話は伺っております。馬車も用意したありますので、こちらへどうぞ」
「え?」
「さあ、早く」
キールは馬車に揺られていた。あの場を押し切られ、馬車の中で話を伺うと、どうやら今、北の方にある村で、村人がモンスターとなる事件が起きているらしい。それを俺が解決するために向かっているから、急ぐため馬車を用意したのだとか。
「全くもってどういうことだ・・」
いままで、こういった無茶なお願いをされることは時々あるが、実際にここまで強引なやり方をされたことはないぞ!
キールはどうしたら良いのか分からずにただ空を見ていた。
「ああ、雲になりたい」
所変わって、北にある村「レミニ村」では、冒険者達がたった今到着したところであった。
「くそ、むごすぎる・・」
荒々しく崩れた家屋や、道端に転がるモンスターの死体をみて、彼らは悲しみを覚えた。
すると、冒険者達に気づいたのか、モンスターは彼らに攻撃し始めた。
「お前等、気合い入れろよ」
一人が活を入れ、向かい討とうとした。
「う、うあああああああ」
すると、冒険者のうち何人かが錯乱し始めた。
錯乱した彼らをよく見ると、みるみる身体が変形していき、身体の肉が膨れ上がり、装備をも飲み込み、モンスターに変わっていった。
「おい、そいつらを押さえろ!」
虫型、爬虫類型、死者型、鳥型、多種多様な元仲間を捕縛するように命令するも、まるで連鎖していくかのように次々と仲間が変わっていった。あまりに唐突のこと過ぎて、持っている龍晶華を使うことが頭から抜けていた。
「くそ、こんな急に。一体どうなってやがる・・・」
そう呟くと、冒険者達の目の前に突如一体のモンスターが現れた。
「ジジジジジ、拒絶こそ本能。この感情は感染する」
そのゴキブリを人間程の大きさにして、全身を布で隠した二足歩行のモンスターがいた。
「お前が緑の悪魔「感染の悪魔」か・・・」
冒険者の1人が睨み付けながら尋ねた。
「いかにも。私の前には精神的に弱い物は正気を保つことは許されない」
変化のない表情だったが、声からこの状況を楽しんでいることを悟った。
「ふん!」
そんな悪魔を倒すべく、斬りかかるも難なく避けられてしまった。
「ジジジジ、私のスピードは悪魔の中でもトップレベルだ。追いつけないよ。お前等の相手は、コイツに任せよう。」
そう悪魔が言うと、空から雄叫びが響いた。そちらを見上げると、黒いワイバーンが空を舞っていた。
そのワイバーンは急降下して冒険者達を襲い始めた。
攻撃されるたびに、なんとか防いで、その度に1人また1人とモンスターに変わっていった。その度に自分たちが持っている龍晶華を咀嚼し
そうして、少しずつ冒険者達が劣勢になり始めた頃、ひとりの男が現れた。
「あれ、結構ヤバめ?」
馬車に連れられたキールが現れた。
キールが緊張感のない声でそういうと、新しい獲物が出て来たと思ったのかワイバーンはキールをめがけて襲いかかった。
「おい!逃げろ!」
冒険者達の中でキールの武力的な実力は未知数であったが、少なくとも強いという事を聞いたことはなかった。
しかし、キールは一切そこから動かず、逃げる素振りもなく、ただその場にたちワイバーンを見ていた。
「GOAAAAAAAAAAAAAAAA」
ワイバーンがキールの目の前に迫った。
そしてキールは目をつむり、静かな、誰にも聞こえないような声で呟いた。
「俺はどこかで野垂れ死ぬと思っていた。まったく良い人生だった。強そうな君に殺されるなら良い思い出だ」
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。
更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。
「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」
様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは?
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。


俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる