7 / 45
建国祭
しおりを挟む
「ふーんふふーん、ふーんふふふーん」
キールは浮かれていた。
その理由はここ王都が今お祭り騒ぎであるからだ。王都は先日から悪魔討伐以降冒険者たちの羽振りが良くなり、商人たちがどこからかそれを聞きつけ、出店などが増え、さらに建国記念日の建国祭と相まって、今までに類を見ないほど大きな賑わいを見せていた。
つまり、王都のお祭り騒ぎにつられているだけであった。
「やっぱり、お祭りと言えば、食べ物だねー。ね、ユリもそう思うでしょ?」
「まぁ、そうね。でもまだ悪魔を倒した余韻でそれどころじゃないね」
ユリは先日の戦いで覚醒したばっかりで少し疲弊と高揚感が残っていた。
「大変だったらしいね、それでもあれだけ盛り上がれる冒険者たちは逞しいね」
キールは広場のベンチで昼間から酔い潰れ、いびきをかいている男たちを横目にそう言った。
「ところで、この前の仕事はどんな感じだったの?」
「ん?今更聞いたところでこれ以上社長が新しく知れる情報なんてないと思うよ?」
ギクっ!
まさか、俺が適当にふったから内容を一切知らないのに、エリーナから質問攻めにあって困っているなんて言えないしなぁ。
「あはは、そうかもしれないね。でもユリの感じたことを聞きたいんだ」
ニコニコ
「んーそうだね、依頼自体はいつもと変わらず、水の国イベリエへオークションで競り落としたらしいアクセサリーを届ける仕事だったんだけど、届けて返ろうとしたときに時に森の中で声がしたのよ」
どうやら森の中に入ると聞こえてきた声の方に向かっていくと、森の中に開けたところを見つけて、その中心に大きな木とその根元に祠があり、そこから声が聞こえていたらしい。
クサに覆われていた祠を綺麗にして、持っていた保存食をお供えすると「待っていました。精霊の守人よ」という声が再び聞こえ、気づけば最初に声が聞こえた場所に戻っていた。
その不思議な現象のあとから身体が少し軽くなったことに疑問を抱き、王都に帰ってきてから教会でステータスを確認すると「精霊の守人」という加護を得ていた。
ということらしい。
「な?私もこれぐらいしか知らないんだよ、新しい情報なんて無かっただろ?」
1から10すべてが初めて聞いたことだね
「そうでもないよ、知りたいことを確認できたから。ありがとう」
さて、これで次にエリーナに聞かれたとしても答えて威厳を保つことが出来るぞ。
「まぁ、今は仕事を忘れてパーッと楽しもうよ」
それに対しユリは口では肯定するも、表情はそれほど明るくはなかった。
そういうとこはユリもちゃんと女の子だなぁ。
「ほら、これとか多分ユリにぴったりだよ」
キールは目の前の店に置いてあった、少し控えめなシルバーに碧い宝石がはまったブレスレットを指さした。
「社長、忘れさせる気ないでしょ。すごい聖属性放ってるけど」
「どちらにせよ、それだけ聖属性を持っているなら戦力強化になるんじゃない?」
「私の場合少し特殊な使い方だからこれであってるのか分からないよ?」
「大丈夫だよ、きっと。ほら、ねぎらいに俺が買っておくよ」
「それなら、貰っておくよ、ありがとよ」
それにしても、社長は聖属性を発現していなよね、私でさえ言われるまで気がつかなかったのに・・・そして、社長がくれるって言うんだから何か意味があるのでしょうね。
「ふう、もうお腹いっぱいだ、少し食べ過ぎちゃったね」
お腹いっぱいになるとどうして、お酒飲みたくなるんだろう。
そうだゴールドラッシュに行こう。
「ユリ、少しだけ飲みに行こうよ。俺がおごるから」
「お、奢りかい?やったね」
そうして歩き始めた。
「まさかとは、思ってたけど本当にここか」
「やっぱり有名なんだ、ここは良いよ、少し高いけどお酒も料理も美味しいから」
「ある意味有名だね、ある意味」
「今日は少しいつもより騒がしいね。お祭りで皆浮かれているね、平和で良いことだ」
確かに店の中は普段より、人も入っていて賑やかだった。しかし、ところどころいつも以上に耳を澄ませている人がいた。各冒険者ギルドの情報収集班である。
こんなときでもしっかり仕事をこなすのはさすがと言ったところだろうか。
「ところで、建国祭の由来って知っているかい?」
「そう言えば聞いたことないねえ」
「建国祭は初代勇者にして初代国王を讃えるためにあるんだけど、実はこんな裏話があるらしいんだよ・・・」
「虹の悪魔を仲間と共に倒した勇者は、そのお宝を建国と共に、国民の代表1人に最も大事な財宝を一つ渡して隠したらしい、そして、そのお宝を見つけるのがこのお祭りの起源なんだって」
「そのお宝は見つかったのですか?」
「いいや、なんでもそのお宝は国が危機に訪れるとき、見つかるらしいよ」
そのとき、酒場ゴールドラッシュの扉を勢いよく開けられた。
「ここにキールという者はいるか!!」
・・・いません
キールは浮かれていた。
その理由はここ王都が今お祭り騒ぎであるからだ。王都は先日から悪魔討伐以降冒険者たちの羽振りが良くなり、商人たちがどこからかそれを聞きつけ、出店などが増え、さらに建国記念日の建国祭と相まって、今までに類を見ないほど大きな賑わいを見せていた。
つまり、王都のお祭り騒ぎにつられているだけであった。
「やっぱり、お祭りと言えば、食べ物だねー。ね、ユリもそう思うでしょ?」
「まぁ、そうね。でもまだ悪魔を倒した余韻でそれどころじゃないね」
ユリは先日の戦いで覚醒したばっかりで少し疲弊と高揚感が残っていた。
「大変だったらしいね、それでもあれだけ盛り上がれる冒険者たちは逞しいね」
キールは広場のベンチで昼間から酔い潰れ、いびきをかいている男たちを横目にそう言った。
「ところで、この前の仕事はどんな感じだったの?」
「ん?今更聞いたところでこれ以上社長が新しく知れる情報なんてないと思うよ?」
ギクっ!
まさか、俺が適当にふったから内容を一切知らないのに、エリーナから質問攻めにあって困っているなんて言えないしなぁ。
「あはは、そうかもしれないね。でもユリの感じたことを聞きたいんだ」
ニコニコ
「んーそうだね、依頼自体はいつもと変わらず、水の国イベリエへオークションで競り落としたらしいアクセサリーを届ける仕事だったんだけど、届けて返ろうとしたときに時に森の中で声がしたのよ」
どうやら森の中に入ると聞こえてきた声の方に向かっていくと、森の中に開けたところを見つけて、その中心に大きな木とその根元に祠があり、そこから声が聞こえていたらしい。
クサに覆われていた祠を綺麗にして、持っていた保存食をお供えすると「待っていました。精霊の守人よ」という声が再び聞こえ、気づけば最初に声が聞こえた場所に戻っていた。
その不思議な現象のあとから身体が少し軽くなったことに疑問を抱き、王都に帰ってきてから教会でステータスを確認すると「精霊の守人」という加護を得ていた。
ということらしい。
「な?私もこれぐらいしか知らないんだよ、新しい情報なんて無かっただろ?」
1から10すべてが初めて聞いたことだね
「そうでもないよ、知りたいことを確認できたから。ありがとう」
さて、これで次にエリーナに聞かれたとしても答えて威厳を保つことが出来るぞ。
「まぁ、今は仕事を忘れてパーッと楽しもうよ」
それに対しユリは口では肯定するも、表情はそれほど明るくはなかった。
そういうとこはユリもちゃんと女の子だなぁ。
「ほら、これとか多分ユリにぴったりだよ」
キールは目の前の店に置いてあった、少し控えめなシルバーに碧い宝石がはまったブレスレットを指さした。
「社長、忘れさせる気ないでしょ。すごい聖属性放ってるけど」
「どちらにせよ、それだけ聖属性を持っているなら戦力強化になるんじゃない?」
「私の場合少し特殊な使い方だからこれであってるのか分からないよ?」
「大丈夫だよ、きっと。ほら、ねぎらいに俺が買っておくよ」
「それなら、貰っておくよ、ありがとよ」
それにしても、社長は聖属性を発現していなよね、私でさえ言われるまで気がつかなかったのに・・・そして、社長がくれるって言うんだから何か意味があるのでしょうね。
「ふう、もうお腹いっぱいだ、少し食べ過ぎちゃったね」
お腹いっぱいになるとどうして、お酒飲みたくなるんだろう。
そうだゴールドラッシュに行こう。
「ユリ、少しだけ飲みに行こうよ。俺がおごるから」
「お、奢りかい?やったね」
そうして歩き始めた。
「まさかとは、思ってたけど本当にここか」
「やっぱり有名なんだ、ここは良いよ、少し高いけどお酒も料理も美味しいから」
「ある意味有名だね、ある意味」
「今日は少しいつもより騒がしいね。お祭りで皆浮かれているね、平和で良いことだ」
確かに店の中は普段より、人も入っていて賑やかだった。しかし、ところどころいつも以上に耳を澄ませている人がいた。各冒険者ギルドの情報収集班である。
こんなときでもしっかり仕事をこなすのはさすがと言ったところだろうか。
「ところで、建国祭の由来って知っているかい?」
「そう言えば聞いたことないねえ」
「建国祭は初代勇者にして初代国王を讃えるためにあるんだけど、実はこんな裏話があるらしいんだよ・・・」
「虹の悪魔を仲間と共に倒した勇者は、そのお宝を建国と共に、国民の代表1人に最も大事な財宝を一つ渡して隠したらしい、そして、そのお宝を見つけるのがこのお祭りの起源なんだって」
「そのお宝は見つかったのですか?」
「いいや、なんでもそのお宝は国が危機に訪れるとき、見つかるらしいよ」
そのとき、酒場ゴールドラッシュの扉を勢いよく開けられた。
「ここにキールという者はいるか!!」
・・・いません
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。
更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。
「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」
様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは?
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

Red Assassin(完結)
まさきち
ファンタジー
自分の目的の為、アサシンとなった主人公。
活動を進めていく中で、少しずつ真実に近付いていく。
村に伝わる秘密の力を使い時を遡り、最後に辿り着く答えとは...
ごく普通の剣と魔法の物語。
平日:毎日18:30公開。
日曜日:10:30、18:30の1日2話公開。
※12/27の日曜日のみ18:30の1話だけ公開です。
年末年始
12/30~1/3:10:30、18:30の1日2話公開。
※2/11 18:30完結しました。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる