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ホワイトホーンラビット
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ニコニコしていたらユリが顔を引きつらせていた。
「ホワイトホーンラビットの角は強力な聖属性をもつ。一体何に使おうとしてんだい」
「ちがうちがう、俺はただウサギの肉をね、食べたかっただけなんだよ」
何やらユリは俺が何か企んでいると思っているらしい
「そうだ、ユリも一緒にどうだい?新鮮なウサギ肉だよ美味しいと思うよ」
「はぁ、いつも何も教えてくれないんだもんな。諦めてご相伴に預かるとするよ」
乾いた木々と、川辺の石を使って簡単に竈を作り持って来た着火剤でウサギ肉を焼いた。
「うーん、良い匂いがするね、まちきれないよ」
単純にウサギ肉を食べたがっていて、何も考えていないキールとは裏腹にユリは考えを巡らせていた。
ただのウサギ肉であれば、ニードルラビットで良い。わざわざほんの少しの魔力も感知して逃げ出すホワイトホーンラビットを捕まえる理由があるはずだ。おそらくは、角だろうな。
ここに来るまでに冒険者たちの中で噂になっていた、先日の邪神教の話を思い出していた。
もうじきに大きな戦いがあるのかも知れない。あっ、だからここ最近は、社員ひとりひとりに大きな仕事を割り振っていたのか、そのおかげで私も一段と強くなれた。
ユリがこれからのことに思いを馳せていると
「よし!そろそろかな」
できあがったホワイトホーンラビットのステーキはとても美味しかった。
日が傾きはじめた頃に王都の門をくぐり、ユリは会社に行ってくると言い別かれた。俺は会社にいなくても副社長のエリーナがいるから大丈夫と全幅の信頼を寄せ、いつもの酒場に向かった。
酒場ゴールドラッシュに着き、エールと肴をつまみながらカウンターに座っていた。
「マスターは狩ってその場で料理したことある?すごい美味しいよ」
「いいえ、御座いませんね。何か召し上がってこられたのですか?」
「そうなんだよ、たまたまホワイトホーンラビットを捕まえられてね」
ガタッ
ん?後ろのテーブルから大きな音がしたな。飲み物でもこぼしたのかな。
「ホワイトホーンラビットといえば角が有名ですが、お目当てはその角で?」
「いいや、肉が目当てだよ、角はまぁ、ラッキーって感じかな、あって困らないしね」
酒場ゴールドラッシュにいた各ギルドの冒険者たちは困惑していた。
「どういうことだ、ホワイトホーンラビットは角が目当てじゃないだと」
「いや、角もあって困らないと言っていた。無関係ではないだろう」
「ホワイトホーンラビットの肉に特別な何かがあるのか」
「おとぎ話だとホワイトホーンラビットは幸運の象徴だが・・・」
「キールのことだ。おとぎ話でもバカにできない」
「1回、伝承などについても調べてみる必要があるな」
冒険者たちが各で話し合っていると
「そのホワイトホーンラビットがパンパンに太っていてね、すごい大きかったんだ。二回りぐらい大きかったと思うよ」
その言葉にその場にいた冒険者たちは驚いた。ホワイトホーンラビットは臆病で逃げ足が速いのが有名で、よく移動するから痩せているはずなのだ。
気づけば話が盛り上がってキールが店を出たことに気づくのはもう少し先であった。
「今日は久しぶりに騒がしくて、懐かしかったな」
ゴールドラッシュから出て、日が暮れ始めた茜色の空を見上げながらキールはそう呟いていた。
次の日の朝、王都立中央図書館に珍しい利用者がいた。
「ホワイトホーンラビットに関する書と、邪神教にまつわるモノ、それと魔物の生態に関するモノを、あるだけ借りられますか」
「すみません、そちらは先ほどあちらの方が借りられていて・・・」
図書館職員が手で示した先には冒険者がいた。
「先を越されたか、まあいい」
遅れた冒険者は、大量の本に囲まれながら読み漁っている冒険者に近づき
「俺も一緒に調べても構わないか」
と尋ねると
「緊急事態になるかも知れないからな、構わない」
そうしたやりとりがその後何回かあって、気づけば王都立中央図書館の一角に冒険者の塊が出来ていた。
普段と違う異様な雰囲気に職員は困惑していた。
「ホワイトホーンラビットの角は強力な聖属性をもつ。一体何に使おうとしてんだい」
「ちがうちがう、俺はただウサギの肉をね、食べたかっただけなんだよ」
何やらユリは俺が何か企んでいると思っているらしい
「そうだ、ユリも一緒にどうだい?新鮮なウサギ肉だよ美味しいと思うよ」
「はぁ、いつも何も教えてくれないんだもんな。諦めてご相伴に預かるとするよ」
乾いた木々と、川辺の石を使って簡単に竈を作り持って来た着火剤でウサギ肉を焼いた。
「うーん、良い匂いがするね、まちきれないよ」
単純にウサギ肉を食べたがっていて、何も考えていないキールとは裏腹にユリは考えを巡らせていた。
ただのウサギ肉であれば、ニードルラビットで良い。わざわざほんの少しの魔力も感知して逃げ出すホワイトホーンラビットを捕まえる理由があるはずだ。おそらくは、角だろうな。
ここに来るまでに冒険者たちの中で噂になっていた、先日の邪神教の話を思い出していた。
もうじきに大きな戦いがあるのかも知れない。あっ、だからここ最近は、社員ひとりひとりに大きな仕事を割り振っていたのか、そのおかげで私も一段と強くなれた。
ユリがこれからのことに思いを馳せていると
「よし!そろそろかな」
できあがったホワイトホーンラビットのステーキはとても美味しかった。
日が傾きはじめた頃に王都の門をくぐり、ユリは会社に行ってくると言い別かれた。俺は会社にいなくても副社長のエリーナがいるから大丈夫と全幅の信頼を寄せ、いつもの酒場に向かった。
酒場ゴールドラッシュに着き、エールと肴をつまみながらカウンターに座っていた。
「マスターは狩ってその場で料理したことある?すごい美味しいよ」
「いいえ、御座いませんね。何か召し上がってこられたのですか?」
「そうなんだよ、たまたまホワイトホーンラビットを捕まえられてね」
ガタッ
ん?後ろのテーブルから大きな音がしたな。飲み物でもこぼしたのかな。
「ホワイトホーンラビットといえば角が有名ですが、お目当てはその角で?」
「いいや、肉が目当てだよ、角はまぁ、ラッキーって感じかな、あって困らないしね」
酒場ゴールドラッシュにいた各ギルドの冒険者たちは困惑していた。
「どういうことだ、ホワイトホーンラビットは角が目当てじゃないだと」
「いや、角もあって困らないと言っていた。無関係ではないだろう」
「ホワイトホーンラビットの肉に特別な何かがあるのか」
「おとぎ話だとホワイトホーンラビットは幸運の象徴だが・・・」
「キールのことだ。おとぎ話でもバカにできない」
「1回、伝承などについても調べてみる必要があるな」
冒険者たちが各で話し合っていると
「そのホワイトホーンラビットがパンパンに太っていてね、すごい大きかったんだ。二回りぐらい大きかったと思うよ」
その言葉にその場にいた冒険者たちは驚いた。ホワイトホーンラビットは臆病で逃げ足が速いのが有名で、よく移動するから痩せているはずなのだ。
気づけば話が盛り上がってキールが店を出たことに気づくのはもう少し先であった。
「今日は久しぶりに騒がしくて、懐かしかったな」
ゴールドラッシュから出て、日が暮れ始めた茜色の空を見上げながらキールはそう呟いていた。
次の日の朝、王都立中央図書館に珍しい利用者がいた。
「ホワイトホーンラビットに関する書と、邪神教にまつわるモノ、それと魔物の生態に関するモノを、あるだけ借りられますか」
「すみません、そちらは先ほどあちらの方が借りられていて・・・」
図書館職員が手で示した先には冒険者がいた。
「先を越されたか、まあいい」
遅れた冒険者は、大量の本に囲まれながら読み漁っている冒険者に近づき
「俺も一緒に調べても構わないか」
と尋ねると
「緊急事態になるかも知れないからな、構わない」
そうしたやりとりがその後何回かあって、気づけば王都立中央図書館の一角に冒険者の塊が出来ていた。
普段と違う異様な雰囲気に職員は困惑していた。
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