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うさぎ肉
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「なんか間違えたかな?」
キールは会社の社員に聞いた安くてうまい酒場に来ていた。
普段行くお店とは違い、冒険者たちで賑わいを見せていると聞いて入店したら、外まで聞こえていた喧噪が一瞬にして静まりかえり、次第に喋り声が増えていった。
「い、いらっしゃいませ!1名様でよろしいでしょうか!」
ぼーっと立ちながら考えていると、店員らしき少女が声をかけてきた。
少女の問いに肯定すると、こちらへどうぞと2階へ案内された。
これっていわゆるVIP席か?
そう思いながら料理を注文し、本を読みながら待っていた。下の階の喧噪が次第に2階まで聞こえるようになった頃、
「最近のニードルラビットの肉は脂がのっててうまいな」
「でも、やっぱりその場で狩ってすぐが一番だけどな」
そんな会話が聞こえてきた。
実はさっきたのんだ料理もニードルラビットのステーキなんだよな、これは楽しみだ。
「お待たせ致しました、ニードルラビットのステーキになります」
先ほどと違いガタイの良いスキンヘッドの男性が持ってきた。
「有り難うございます、いただきます」
・・・・二口ほど食べて気づいた。男の人がその場で佇んだままこちらを見ている。
え、なに?どうしたの
視線をちらっと向けると
「申し遅れました。私この店で店主兼料理長をしております。イーサンと申します。お味の程はいかがでしょうか」
おお、VIP扱いっぽいな、なんだか嬉しい。
「この頃のニードルラビットは、脂がのっていて美味しいですね」
ニードルラビットの情報はさっき聞こえた会話だけだけど、通っぽくきこえたかな。
「ありがとうございます。では、どうぞごゆっくり」
そう言って、店主は去って行った。
それにしても、本当に美味しい。
とれたてはこれ以上に美味しいのか。ニードルラットは冒険者になりたてでも狩れると聞くからな、自分で狩りに行こうかな。
キールが店を出たあとの店内では、店主とその娘、イーサンとミラがキールについて話していた。
「びっくりしたよ、有名人にあっちゃった」
「お父さんも、びっくりしたさ、ウチにくるなんて。あの人のことだ、何かしら意味を持って来たんだろう」
「何かしらって?」
「んー、ニードルラビットの生態調査とか?」
「ハハハ、料理を食べただけで?」
「だよなぁ、王都の脳と未来といえどもなぁ」
そんな会話に花を咲かしていると、入り口から声がした。
「久しぶりに帰って来たら、珍しいこともあるんだね」
「ユリさん!お久しぶりです。2ヶ月ぶりですか」
「久しぶり、ところで社長が来てたのかい?」
「そうなんですよ、といっても普通にニードルラビットを注文なさっただけなんですけど」
少し考える素振りをしたあと
「今日は顔出すだけにしとくよ、ちょっと野暮用が出来てね」
そう言いユリは酒場をあとにした。
翌日、王都西の草原にて、キールは木陰で休んでいた。
「初心者向けだけあって、この辺りは狩り尽くされてるな、もう少し遠くへ行ってみようかな」
しばらく西の門からでてすぐのところで目当てのニードルラビットを探していたが、見当たらず、休んでいたのだ。
「空を見ていたら雲がニードルラビットに見えておなかがすいてきたな」
ぐぅとお腹で合図をしながら歩き始めた。
門が次第に小さくなり、木々の密度が少し増えてきた辺りで捜索を再開した。
「やっとだぁ」
しばらくして遂に見つけた。1時間は歩いていた。
川の近くで涼んでいるニードルラビットを見つけた。
すごいな。パンパンだ。野生とは思えないほどの肉付きの良さ、よだれが出て来た。
昨日の間に手に入れた弓矢とナイフを確認し、茂みの中から矢を放つ。
シュッという風きり音に、ニードルラビットは一瞬で反応し、矢は地面に刺さった。
「くそう、外したか」
よく見れば、矢が刺さった場所は、ニードルラビットが避けなくても外れていたのだが、怒りながらこちらに視線を向ける敵に、キールはそれどころではなかった。
角を用いて突進するだけの攻撃だが、まともに食らえば怪我をする。その危険性を臆病なキールは余計に意識してしまい。大げさに回避をとってばかりで、攻めきれないでいた。
だがしばらくすると、目も慣れてきて、攻撃に転じることが出来はじめた。
「そいや!」
やっとの事でニードルラビットを倒した。
味は鮮度が一番とばかりに疲れた身体に鞭を打って、すぐに川で血抜きをしはじめた。
鼻歌まじりに解体をしていると
「やっとみつけたよ、社長。相変わらず魔力を隠すのがうまいなぁ」
「!!」
あぶなっ、驚きすぎてナイフで手を切るところだった・・・
そしてゆっくり、後ろを振り返り
「ユリか、仕事は終わったのかい、あと俺は別に隠してなんかいないよ」
だって、ほとんど魔力なんて無いんだもん、かなしいことにね。
「仕事はやっと終わったよ、貴族からの依頼はめんどくさくて仕方ないよ、社長から頼まれなければやってなかったね」
中身を見ずに貴族からってだけで面倒くさくなってなすりつけたのは秘密にしておこう。
「ごめんごめん、何かユリが得られるモノがあったらいいなって」
「そりゃ、社長の目論見通りあったけども・・ってこれはまた珍しいモノを狩ったね」
「え?」
普通のニードルラットだよな
「これは、ホワイトホーンラビットじゃないか」
たしかに身体が白くて珍しい個体が居るなぁとは思ったけども
何が何だかよく分からないが分かってるフリをしておこう。
ニコニコ
キールは微笑みを浮かべた。
キールは会社の社員に聞いた安くてうまい酒場に来ていた。
普段行くお店とは違い、冒険者たちで賑わいを見せていると聞いて入店したら、外まで聞こえていた喧噪が一瞬にして静まりかえり、次第に喋り声が増えていった。
「い、いらっしゃいませ!1名様でよろしいでしょうか!」
ぼーっと立ちながら考えていると、店員らしき少女が声をかけてきた。
少女の問いに肯定すると、こちらへどうぞと2階へ案内された。
これっていわゆるVIP席か?
そう思いながら料理を注文し、本を読みながら待っていた。下の階の喧噪が次第に2階まで聞こえるようになった頃、
「最近のニードルラビットの肉は脂がのっててうまいな」
「でも、やっぱりその場で狩ってすぐが一番だけどな」
そんな会話が聞こえてきた。
実はさっきたのんだ料理もニードルラビットのステーキなんだよな、これは楽しみだ。
「お待たせ致しました、ニードルラビットのステーキになります」
先ほどと違いガタイの良いスキンヘッドの男性が持ってきた。
「有り難うございます、いただきます」
・・・・二口ほど食べて気づいた。男の人がその場で佇んだままこちらを見ている。
え、なに?どうしたの
視線をちらっと向けると
「申し遅れました。私この店で店主兼料理長をしております。イーサンと申します。お味の程はいかがでしょうか」
おお、VIP扱いっぽいな、なんだか嬉しい。
「この頃のニードルラビットは、脂がのっていて美味しいですね」
ニードルラビットの情報はさっき聞こえた会話だけだけど、通っぽくきこえたかな。
「ありがとうございます。では、どうぞごゆっくり」
そう言って、店主は去って行った。
それにしても、本当に美味しい。
とれたてはこれ以上に美味しいのか。ニードルラットは冒険者になりたてでも狩れると聞くからな、自分で狩りに行こうかな。
キールが店を出たあとの店内では、店主とその娘、イーサンとミラがキールについて話していた。
「びっくりしたよ、有名人にあっちゃった」
「お父さんも、びっくりしたさ、ウチにくるなんて。あの人のことだ、何かしら意味を持って来たんだろう」
「何かしらって?」
「んー、ニードルラビットの生態調査とか?」
「ハハハ、料理を食べただけで?」
「だよなぁ、王都の脳と未来といえどもなぁ」
そんな会話に花を咲かしていると、入り口から声がした。
「久しぶりに帰って来たら、珍しいこともあるんだね」
「ユリさん!お久しぶりです。2ヶ月ぶりですか」
「久しぶり、ところで社長が来てたのかい?」
「そうなんですよ、といっても普通にニードルラビットを注文なさっただけなんですけど」
少し考える素振りをしたあと
「今日は顔出すだけにしとくよ、ちょっと野暮用が出来てね」
そう言いユリは酒場をあとにした。
翌日、王都西の草原にて、キールは木陰で休んでいた。
「初心者向けだけあって、この辺りは狩り尽くされてるな、もう少し遠くへ行ってみようかな」
しばらく西の門からでてすぐのところで目当てのニードルラビットを探していたが、見当たらず、休んでいたのだ。
「空を見ていたら雲がニードルラビットに見えておなかがすいてきたな」
ぐぅとお腹で合図をしながら歩き始めた。
門が次第に小さくなり、木々の密度が少し増えてきた辺りで捜索を再開した。
「やっとだぁ」
しばらくして遂に見つけた。1時間は歩いていた。
川の近くで涼んでいるニードルラビットを見つけた。
すごいな。パンパンだ。野生とは思えないほどの肉付きの良さ、よだれが出て来た。
昨日の間に手に入れた弓矢とナイフを確認し、茂みの中から矢を放つ。
シュッという風きり音に、ニードルラビットは一瞬で反応し、矢は地面に刺さった。
「くそう、外したか」
よく見れば、矢が刺さった場所は、ニードルラビットが避けなくても外れていたのだが、怒りながらこちらに視線を向ける敵に、キールはそれどころではなかった。
角を用いて突進するだけの攻撃だが、まともに食らえば怪我をする。その危険性を臆病なキールは余計に意識してしまい。大げさに回避をとってばかりで、攻めきれないでいた。
だがしばらくすると、目も慣れてきて、攻撃に転じることが出来はじめた。
「そいや!」
やっとの事でニードルラビットを倒した。
味は鮮度が一番とばかりに疲れた身体に鞭を打って、すぐに川で血抜きをしはじめた。
鼻歌まじりに解体をしていると
「やっとみつけたよ、社長。相変わらず魔力を隠すのがうまいなぁ」
「!!」
あぶなっ、驚きすぎてナイフで手を切るところだった・・・
そしてゆっくり、後ろを振り返り
「ユリか、仕事は終わったのかい、あと俺は別に隠してなんかいないよ」
だって、ほとんど魔力なんて無いんだもん、かなしいことにね。
「仕事はやっと終わったよ、貴族からの依頼はめんどくさくて仕方ないよ、社長から頼まれなければやってなかったね」
中身を見ずに貴族からってだけで面倒くさくなってなすりつけたのは秘密にしておこう。
「ごめんごめん、何かユリが得られるモノがあったらいいなって」
「そりゃ、社長の目論見通りあったけども・・ってこれはまた珍しいモノを狩ったね」
「え?」
普通のニードルラットだよな
「これは、ホワイトホーンラビットじゃないか」
たしかに身体が白くて珍しい個体が居るなぁとは思ったけども
何が何だかよく分からないが分かってるフリをしておこう。
ニコニコ
キールは微笑みを浮かべた。
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