~The Tree of Lights~

朱夏

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荒れ地のマリア

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 線路ぎわの なんということはない荒れ地
 草ぼうぼうの 時にはゴミが投げ捨てられている荒れ地に
 いつの間にか 一輪の白百合が佇んでいた
 ひっそりと うつむきがちに

 こんな荒れ地に 一体だれが 運んできたのか
 鳥か 人か 狸か 狢か

 カンカンと電車が通りすぎていくあいだ
 じっと  一輪の まだ咲かぬ百合を見ていた

 生い茂る草のあいだで  
 百合は申し訳なさそうに佇んでいる

 この百合が咲いたなら
 ぼうぼうと生い茂る草たちも さぞ驚くことだろう
  
 誰からの贈り物かと驚くだろうか
 自分たちも一花咲かせるぞと意気込むだろうか
  
 嵐の吹きすさぶ今日
 百合は きっと花開いているだろう
  
 そして
 通りすぎる誰かを立ち止まらせ 
 空でも 車の流れでもなく
 荒れ地を見ずにいられぬ孤独な誰かを
 慰めているだろう
  
 ひっそりと うつむきがちに
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