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みっくんのおばさんとの会話を早々に切り上げて、私はおばさんに渡されたたまちゃんと私の分の麦茶を手にみっくんの部屋がある二階へと向かった。
中ではうっきうきのたまちゃんとそれに嫌な顔一つせず付き合うイケメン先輩、そしてそれを見守るみっくん。
挨拶もそこそこに私はみっくんの隣に腰を下ろした。
はぁ、みっくんの部屋久しぶり。
これが二人っきりだったら最&高なのに!
私の隣、クッションにちょこんと座るみっくんをそれとなく見やる。相変わらずぼさぼさの髪と瓶底眼鏡で顔がよく見えない。
「夕飯まで時間あるけど、することないな」
そう言って笑うみっくん。
か、かわいい……!
前髪の隙間から見えたくりくりの瞳に胸が射抜かれる。
もっとちゃんと顔が見たい!
そう思った私は、「だね。暇だからみっくん付き合ってよ」とみっくんに言った。
「なにに?」
「いーからいーから」
私は鞄から化粧ポーチを取り出し、とりあえずみっくんの前髪をピンで両脇に留めて眼鏡をはずした。
みっくんは、なにかを悟ったように一瞬嫌な顔をするも、諦めたのか拒むことは無かった。
ファンデも塗る必要のないくらい白くてつるつるの肌に、軽く粉をはたいて、ヌードカラーのアイシャドウを塗って眉毛も描いていく。既にmicco用に整えられているから手入れの必要はなく、つまらないくらいすぐに終わってしまう。
その後アイロンとワックスで前髪をセンター分けにして整えれば、かっこかわいいイケメンの出来上がり!
素材がぴかイチだからあまりビフォーアフター感がないけれど、文句なしにすてきなみっくんが完成した。
やば、ちょーカッコいいんだけど。胸がきゅーんって!
おでこが出ると、こう、なんというか、あどけなくもありいろっぽくもあり……。
「控えめに言っても最高」
「そりゃどうも」
おっといけない。
私の心の声が駄々洩れていた模様です。
「これで学校行っても誰もみっくんだなんて気づかないね」
「だろうな」
「じゃーん! 見てみて二人とも! どう、このみっくん」
「すごくいい! このままmiccoの服着せてもボーイッシュで似合いそう!」
「うっわ、尊めちゃくちゃイケメン! そういうメイクも似合うのなぁ」
「でしょでしょ!」
ふん、そりゃぁ、みっくんの魅力を知り尽くしてる私だからできる技よっ。
と、胸を張ったのもつかの間、私はなにかで頭をガツンと殴られたように思考が停止した。
だって、みっくんがイケメン先輩の言葉に顔を真っ赤にさせてたから。
えっ、えっ⁉
なに、その表情……。
まるで、好きな人に褒められた恋するヲトメじゃない……。
これは、いったい、どういうこと!
いや、た、ただ照れてるだけよね?
イケメンなんて、普段言われ慣れてないこと面と向かって言われたから……。
そう結論付けて納得しようとしたのに、信じられないものが私の目に飛び込んでくる。
みっくんの首筋にある赤い跡を見つけてしまった……。
虫刺されやできもののように腫れているわけでもなく、ぶつけたには小さすぎるそれ。しかもこんな場所にあるやつなんて、もうキスマーク以外あり得ないじゃん……!
ドクンッと胸が飛び跳ねて、ドクドクドクと血液がすごいスピードで体中を巡りだす。
これをつけた相手が誰か……。
そんなの、一人しかいない。
うそ……、いつの間にそんな関係になってたの……?
やだ……、やだやだ、そんなのやだよ……。
「――ひより?」
みっくんに呼ばれてハッとして顔をあげたら、心配してくれているのがわかる優しい眼差しがあった。昔から変わらない、私に向けられる優しい目だ。
あ、だめだ……。
って思った時にはもう遅くて、あっという間に視界が滲む。
「ど、どうした?」
「ひよりん、どうしたの⁉ ちょっと、尊! あんたなにしたのよ!」
「えっ、俺⁉ うそっ」
「ちが……、みっくんじゃ、ない……っ、ううぅぅーー!」
悲しくて、悔しくて、涙が止まらない。
みっくんが、私とイケメン先輩をくっつけようとしているのを知ってて今まで否定しなかったのは、みっくんとの接点が持てるなら、それがどんな理由からでも構わないと思ってたから。
それに、イケメン先輩がどんなにみっくんに近づいたところで、どうせ「友だち」止まりで終わるだろうって思ってたから。
みっくんの隣に少しでも長く居て、振り向かせようって思ってたのに……。
こんなあっさり突然現れたイケメン先輩に持っていかれちゃうなんて、夢にも思わなかったよ……。
あー、だんだん腹が立ってきた。
私はありったけの怨念を込めて、アイツを睨みつけた。
「イケメン先輩のバカーーー‼」
私の叫び声が部屋に響き渡る。
突然泣き出したかと思えば叫び始めた私にみっくんとたまちゃんが固まったのが視界の端でわかった。でも今はもうなりふり構ってられない。
馬鹿呼ばわりされた当の本人は、心当たりがないと言わんばかりに自分を指さして「え、俺?」と間の抜けた声を漏らした。
「えっと……、ひより? とりあえず、ちょっと落ち着こうか」
肩にそっと置かれたみっくんの手を払って私は立ち上がる。
「落ち着いてなんかいられない! もうダメ! おこだよ、おこ! 激おこ!」
怒った。ひより、怒ったんだから。
依然としてはてなを浮かべるイケメン先輩の目の前まで詰め寄り、どすを聞かせた声で言い放った。
「ちょっと顔貸せや」
みっくんのおばさんとの会話を早々に切り上げて、私はおばさんに渡されたたまちゃんと私の分の麦茶を手にみっくんの部屋がある二階へと向かった。
中ではうっきうきのたまちゃんとそれに嫌な顔一つせず付き合うイケメン先輩、そしてそれを見守るみっくん。
挨拶もそこそこに私はみっくんの隣に腰を下ろした。
はぁ、みっくんの部屋久しぶり。
これが二人っきりだったら最&高なのに!
私の隣、クッションにちょこんと座るみっくんをそれとなく見やる。相変わらずぼさぼさの髪と瓶底眼鏡で顔がよく見えない。
「夕飯まで時間あるけど、することないな」
そう言って笑うみっくん。
か、かわいい……!
前髪の隙間から見えたくりくりの瞳に胸が射抜かれる。
もっとちゃんと顔が見たい!
そう思った私は、「だね。暇だからみっくん付き合ってよ」とみっくんに言った。
「なにに?」
「いーからいーから」
私は鞄から化粧ポーチを取り出し、とりあえずみっくんの前髪をピンで両脇に留めて眼鏡をはずした。
みっくんは、なにかを悟ったように一瞬嫌な顔をするも、諦めたのか拒むことは無かった。
ファンデも塗る必要のないくらい白くてつるつるの肌に、軽く粉をはたいて、ヌードカラーのアイシャドウを塗って眉毛も描いていく。既にmicco用に整えられているから手入れの必要はなく、つまらないくらいすぐに終わってしまう。
その後アイロンとワックスで前髪をセンター分けにして整えれば、かっこかわいいイケメンの出来上がり!
素材がぴかイチだからあまりビフォーアフター感がないけれど、文句なしにすてきなみっくんが完成した。
やば、ちょーカッコいいんだけど。胸がきゅーんって!
おでこが出ると、こう、なんというか、あどけなくもありいろっぽくもあり……。
「控えめに言っても最高」
「そりゃどうも」
おっといけない。
私の心の声が駄々洩れていた模様です。
「これで学校行っても誰もみっくんだなんて気づかないね」
「だろうな」
「じゃーん! 見てみて二人とも! どう、このみっくん」
「すごくいい! このままmiccoの服着せてもボーイッシュで似合いそう!」
「うっわ、尊めちゃくちゃイケメン! そういうメイクも似合うのなぁ」
「でしょでしょ!」
ふん、そりゃぁ、みっくんの魅力を知り尽くしてる私だからできる技よっ。
と、胸を張ったのもつかの間、私はなにかで頭をガツンと殴られたように思考が停止した。
だって、みっくんがイケメン先輩の言葉に顔を真っ赤にさせてたから。
えっ、えっ⁉
なに、その表情……。
まるで、好きな人に褒められた恋するヲトメじゃない……。
これは、いったい、どういうこと!
いや、た、ただ照れてるだけよね?
イケメンなんて、普段言われ慣れてないこと面と向かって言われたから……。
そう結論付けて納得しようとしたのに、信じられないものが私の目に飛び込んでくる。
みっくんの首筋にある赤い跡を見つけてしまった……。
虫刺されやできもののように腫れているわけでもなく、ぶつけたには小さすぎるそれ。しかもこんな場所にあるやつなんて、もうキスマーク以外あり得ないじゃん……!
ドクンッと胸が飛び跳ねて、ドクドクドクと血液がすごいスピードで体中を巡りだす。
これをつけた相手が誰か……。
そんなの、一人しかいない。
うそ……、いつの間にそんな関係になってたの……?
やだ……、やだやだ、そんなのやだよ……。
「――ひより?」
みっくんに呼ばれてハッとして顔をあげたら、心配してくれているのがわかる優しい眼差しがあった。昔から変わらない、私に向けられる優しい目だ。
あ、だめだ……。
って思った時にはもう遅くて、あっという間に視界が滲む。
「ど、どうした?」
「ひよりん、どうしたの⁉ ちょっと、尊! あんたなにしたのよ!」
「えっ、俺⁉ うそっ」
「ちが……、みっくんじゃ、ない……っ、ううぅぅーー!」
悲しくて、悔しくて、涙が止まらない。
みっくんが、私とイケメン先輩をくっつけようとしているのを知ってて今まで否定しなかったのは、みっくんとの接点が持てるなら、それがどんな理由からでも構わないと思ってたから。
それに、イケメン先輩がどんなにみっくんに近づいたところで、どうせ「友だち」止まりで終わるだろうって思ってたから。
みっくんの隣に少しでも長く居て、振り向かせようって思ってたのに……。
こんなあっさり突然現れたイケメン先輩に持っていかれちゃうなんて、夢にも思わなかったよ……。
あー、だんだん腹が立ってきた。
私はありったけの怨念を込めて、アイツを睨みつけた。
「イケメン先輩のバカーーー‼」
私の叫び声が部屋に響き渡る。
突然泣き出したかと思えば叫び始めた私にみっくんとたまちゃんが固まったのが視界の端でわかった。でも今はもうなりふり構ってられない。
馬鹿呼ばわりされた当の本人は、心当たりがないと言わんばかりに自分を指さして「え、俺?」と間の抜けた声を漏らした。
「えっと……、ひより? とりあえず、ちょっと落ち着こうか」
肩にそっと置かれたみっくんの手を払って私は立ち上がる。
「落ち着いてなんかいられない! もうダメ! おこだよ、おこ! 激おこ!」
怒った。ひより、怒ったんだから。
依然としてはてなを浮かべるイケメン先輩の目の前まで詰め寄り、どすを聞かせた声で言い放った。
「ちょっと顔貸せや」
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