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ダンジョン都市 アビスブルク
ダンジョン都市のダンジョンコア
しおりを挟む「あれダンジョンコアだ」
オレは指差してみんなに知らせる。えっ?とみんな振り返ったが、見えないのか首を傾げられた。
だが、レムちゃんだけは見えているらしく、頷いてくれた。採掘のダンジョンなら地面に字を書けたが、それ以外のダンジョンは傷を付けられない。
「レムちゃんはこれ見えてるんだよね?」
コクンッコクンッ(頷く)
「レムちゃんが元々ダンジョンのボスだから?」
ググググッ(首を傾げる)
「今って触れるかな?」
ゴリンゴリンゴリンゴリン(首を横に振る)
「危ないって事?」
コクン(頷く)
つまり何で見えるのか不明な上にダンジョンコアに触るのは危険らしい。触るのが駄目なら観察は問題無いだろうと、近付いて見る。
ジャッジ先生!出番です。
「神眼」
【知恵のダンジョンコア】
この世界の知識を集め、冒険者に解かせるんが役割や。世界全体の知識・文明の発展及び向上を成した時、儂から魔力を貰ってダンジョンコアから解放されるんやで。
亀仙にーーーん!あんたがダンジョン生み出しとるんかーい!って言うと何か?ダンジョンには何かしら目的があって発生してるのか。ダンジョンコアから解放って何!?中に誰か居るの?
オレは更に魔力を強めて見つめ続けた。すると、ダンジョンコアの中に異物が混じっているのに気付いた。それに気付いたからか、異物の正体が目に見えた。
「何で、ここにあるんだよ……」
「「イクト?」」
「イクト様?」
「ご主人しゃま?」
オレの側まで来てくれていた三人と一匹は背後からオレの前を覗き込み、ユニは隣に立っているレムちゃんを優しく撫でていた。
「ユニ、ダンジョンコアの中に、呪詛の硬貨が入ってる……」
「……!?何でそんな物が!」
オレの顔色は多分血の気が引いて白くなってると思うし、心臓が締め付けれるような体温が一気に下がって鳥肌が立つような変な感覚に襲われた。
それはユニも同じで、脅威を感じて興奮や恐怖で顔を赤くしたり白くしたりしていた。
「ダンジョンもボクみたいにボウソウしちゃうの?」
イクトもユニも若葉も、暴走した浅葱を知っているから絶対に止めなければとダンジョンコアを(あると思って)見た。
「おい、まさか。その呪詛の硬貨とやらがダンジョンの力を食うんじゃないか?」
「それだ!きっと採掘のダンジョンコアにも呪詛の硬貨があったんだ。力を乗っ取られて暴走して、それでレムちゃんが追い出された」
今はボス討伐されたばかりなのでダンジョンコアは暴走していない。だがイクト達が出て行き、ボスが復活すれば採掘のダンジョンと同じ現象が起こる可能性が高い。それを防ぐにはダンジョンコアから呪詛の硬貨を取り除くしかない。
「イクト、やるの?」
ユニは不安そうな顔でオレを見上げてくる。ユニだけじゃない、ワッサンも若葉も、浅葱もレムちゃんも歯がゆい面持ちで見ていた。
「魔力を吸われるんじゃないだろうし、大丈夫でしょ」
イクトはダンジョンコアに手を突っ込むと呪詛の硬貨を掴み出してポーチにねじ込んだ。直ぐに回復と唱えて腕を回復させると、大きく息を吐き出した。
「はあぁぁああ。ちょっと怖かったぁ」
ドサッと地面に尻餅をついて座り込むと胡座をかいて右手をグーパーする。
浅葱の時の様な鈍痛に襲われるかと思ったが、少しピリッとした感じがあるだけだった。
「プフーッ。今回は酷くならなくて良かったわ」
「あぁ。思ったよりも呆気無く片付けられて安心したよ」
「イ、イクト様。若葉は、若葉は凄く心配だったんですよー!」
嬉し泣きしている若葉に抱き着かれ、浅葱にペチペチと背中を撫でられた。
眉間にシワを寄せて怖い顔をしたワッサンは顎に手を当てて考え事を呟く。
「ダンジョンが暴走するのは呪詛の硬貨がダンジョンコアに取り込まれていたから。そしてイクトなら呪詛の硬貨を取り出せる」
「そうね。まだ不安が残ってるけど、今の様子を見る限りイクト自身は大丈夫そうね」
「他のダンジョンコアにも呪詛の硬貨があるかも知れない。ここから出たら、残りの3つのダンジョンも確認しようよ」
「そうね。ワッサン、案内頼める?」
「ああ。任せろ」
ユニもワッサンの考えに同意して、オレ達は急いでボス部屋の魔法陣から一階層の魔法陣に戻り、知恵のダンジョンから出た。
その後は時のダンジョン、罠のダンジョン、忍耐のダンジョンのボスを討伐して、ダンジョンコアから呪詛の硬貨を取り出した。
時のダンジョンは全11階層から成るダンジョンで、10階層に飛んで、全員が子供の頃に戻った状態で階層を進み、ボス部屋に続く階段で元に戻ると休憩を挟んでボスに挑んだ。
ボスは時間を操れると聞いていたので、扉を開けた瞬間にワッサンが飛び込んで切りかかり、ユニがウォータービームで頭に穴を開け、浅葱は触手を伸ばして吸収を発動した。それによりボスは浅葱に飲み込まれ、死んだと思ったのか1分程で吐き出すと、器用にも心臓と討伐証明の砂時計を吐き出した。
「これ、オレら要らなくね?」
浅葱が強かった。
次の罠のダンジョンは46階層から成る嫌らしい罠が沢山のダンジョンらしい。だが、レムちゃんにオレ達を持ち上げてもらって、毒や針などの罠を全て無視し、天井が落ちてくる罠をワッサンが手で押し返し、床が抜ける罠を浅葱が触手を伸ばして床を戻したので、苦無くボス部屋に到着した。
そしてボス部屋に入った途端、オレだけ檻に入れられた状態になり、他のメンバーが嫌らしく笑い続ける燕尾服の山羊を、ボコボコのタコ殴りにして討伐した。
「何でオレだけ捕まったの?」
「パーティーの時はリーダーを捕らえて戦力を弱める為らしい」
オレが一番ひ弱な件。
最後の忍耐のダンジョンは20階層から成る、三大欲求やデバフ系のダンジョンだ。だが状態異常を回復出来るユニが、魅了を掛けられたワッサンをぶん殴り、睡眠を掛けられたオレをぶん殴り、食欲を訴える若葉を強制送還し、童貞欲しいと訴えるユニにオレが抱きついていたらボス部屋に辿り着いた。
ボスは気持ち悪いイソギンチャクみたいな緑の触手が目玉から生えた、嫌悪感をもたらす敵だった。
そいつに対抗意識を燃やした浅葱が触手で目玉を刺し貫いて、一瞬で干からびさせた。
「浅葱は可愛いから安心してね」
「みんなのアイドルだ」
「私も浅葱が大好きですよ」
コクンコクンッ
オレは浅葱をモチモチ撫でて、みんなで慰めた。
そうして残りのダンジョンから呪詛の硬貨を取り除けたので、安心して街に戻った。
銭湯でのんびりお湯に浸かって、のんびり疲れを癒やしている。今日は何だか良い夢を見られそうだ、と今日の頑張りを振り返っていると、ワッサンに宿に帰るぞと連行された。
宿で、豚?の角煮と雑炊を食べて、満足してベッドに潜り込んだ。何だか本当に疲れた。明日はゆっくりのんびり、美味しい物だけ食べて、街の中のまだ行けてない所に行って、観光日和にしたいな、と微睡む意識で考えながら眠りに付いた。
そして亀仙人と誰かが出て来る夢を見た。
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