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学園祭準備うさぎ 1

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 コスチュームの件から一週間が経ち、もぶこやわきこ、他のクラスメイトとも仲良くなった。

 もぶこは焦げ茶色のゆるふわショートボブで垂れ目で元気な天然だけどちょっと毒を吐くこともある。
 わきこは黒髪ストレートロングの釣り目でザ・クールビューティーって感じだ。
 ほらおくんは赤い茶髪で垂れ目の背が高い人。休み時間に話すだけなんだけどチャラいのに何でも知ってるから不思議だ。
 わさおくんはすごく平均的な見た目で何故か印象に残らないしちょっと声が小さいけど、ござる口調でなんか感動したので話すようになった。すごく普通の事でもござるって付くだけで面白く感じちゃうよね。
 それと委員長のだるまくん、彼に授業中色々教えてもらったり、みんなとお昼食べたりしてると気づいたら目が向いちゃうことも。焦げ茶色の短髪に明るい茶色の瞳で、島で漁師をしてるおっちゃん達より大きな身体をしている。机の横幅と肩幅同じなんじゃない?ってくらいガタイが良くてボディビルダーなんじゃないかと思うくらいムッキムキだ。先日の昼休みにちょっと二の腕触ってもいいか尋ねたら、わざわざ上の服を脱いで、「フンッ!」と力こぶを見せて触らせてくれた。すごく硬かった。
 今ではこの五人と一緒にお昼を食べるのが当たり前になった。


 学園祭まであと四日。金曜日の午後から開催式と吹奏楽部とダンス兼応援部によるパレードもあるらしい。
 
「今週から学園祭の設営期間になり、学園祭までは六時限目で準備するそうだ。俺たち二年生は三年生より余裕があるから、各クラスでステージやアーケードの大道具を作らなきゃならん。俺達のクラスはアーケードに取り付ける看板を作る事になった。毎年上部の看板には『ようこそ!〇〇学園中等部学園祭へ!』が取り付けられるがそれ以外を作り直さねばならん。何かいい案がある人はいるか?」

 だるまくんが教卓にて説明する。因みに花弁先生は生徒の自主性に任せると言ってだるまくんの席につく。力仕事とかの作業に全くやる気が起きないらしい。
 みんな考える中、もぶこがとんでもないことを言い出した。

「はいはーい!うさぎのキャラクターがこちらへどうぞってポーズしてる看板とか良いと思うんだけど!」
「へぁえっ!?私のキャラクター!?!」
「あっ、うんとね、うさぎはうさぎでも動物の兎でいいんじゃないかなぁと……あはは」

 挙動不審であたふたしてるもぶこをじとりと見つめていると、他のクラスメイトからもいいんじゃないかと賛成の声が上がる。うさぎが「うっ!あっ!えっ!」としどろもどろになっていると兎をモチーフにしたキャラクターで決まってしまった。
 早速描いてみようと開いた段ボールに下描きを始めるわさお。わきこから「うさぎ!ポーズして!」と言われてしまったのでしぶしぶポーズをとる。

「左手はヘソの位置で指先をキレイに揃えて、右手は腕を曲げて肘の内側や手のひらが上を向くようにするでござる!はいそれでオッケイそのままでござる!(フォーーーー!何だかメイドたんにこちらの席にお掛けくださいって言われてる気分でござる!)」

 わざわざポーズを取らなくても素材画像にいくらでもあるのに、インターネットを知らないうさぎは言われるがままポーズをしていった。


 下描きができたので、だるまとうさぎは生徒会の学園祭準備室へ、ベニヤ板とアクリル絵の具をもらいに行く。準備室に入ると二人の生徒がいた。

「だるまくんに餅月さん?何を作るかもう決まったんだね」

 隣のクラスのインテリメガネ委員長こと院照めがねと見知らぬ男子生徒がいた。

「餅月さん?あぁ、めがねくんが言ってたすごく走るのが速い女子生徒かな?」
「っはい、そうです!」
「そんなに驚かなくていいよ。僕は木奥ヤイバ。この学校の生徒会長だから顔と名前を覚えてるんだ。君はあまり覚えがないからそうかなと思っただけだよ」
「はぃ…」

 中学生じゃ出せない大人の雰囲気で語りかけてくる。

「ヤイバ会長とめがねは何故ここにいるんだ?」
「あぁ、めがねくんには来年の生徒会長になって欲しくて、前々から生徒会の仕事を手伝ってもらってたんだ。クラス委員長だから生徒会に入れないけど、特別にね」
「ヤイバ会長に声をかけられたときは驚いたけど、今では生徒会の仕事も理解したし、学園祭の準備もクラスとは別で手伝う事にしたんだ。生徒会の他の人たちも親切に教えてくれたからね」
「なるほど。俺達はめがねの言うとおり学園祭の準備できたんだ。ベニヤ板を何枚かとアクリル絵の具を白を多めに持っていってもいいか?」

 ヤイバ会長が院照くんに視線を向ける。院照くんは頷くと応えた。

「ベニヤ板はそこにあるけど、一枚あたり結構大きいから二枚でいいかな。白を多く使うなら油性ペンキの缶を渡すね」
「あぁ、それでいい」

 うさぎが院照めがねからペンキ缶とアクリル絵の具のセットを受け取り、だるまは立て掛けてあるベニヤ板をぶつけないようにそっと持ち上げて準備室をあとにした。


「院照くんって凄いんだね!クラスだけじゃなく学校のためにも頑張ってるんだね!」
「そうだな、俺にはできないが、俺は俺でうちのクラスをまとめれるようにもっと頑張るな」
「十分だと思うよ?なにより優しいし!」
「はっはっはっ!それは嬉しいな。ところでペンキ重いんじゃないか?ほら持ってやるから」

 そう言うとペンキ缶の取っ手を掴んでいたうさぎの手にだるまの手が触れそうになる。

「ありがとう!重くて指が痺れてたの!」

 触れる前にうさぎはペンキ缶を持ち上げて、だるまの手のひらに乗せようとしていた。おそらくだるまの指が疲れないための配慮だろう。だるまは分かりにくいが少し切なそうな顔をして、うさぎから受け取った。

 教室に戻ると、みんなが段ボールを切り抜いて待ってくれてたので、ベニヤ板に当てて型取りをして色塗りをした。乾くまで時間がかかるので今日はここまでにして続きは明日になった。

 うさぎはいつも通り、もぶことわきこと駅まで向かった。

「あれ?カードがない?」

 カバンを漁っても見つからず、学校かもしれないと二人と別れて全力で引き返す。
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