錦秋

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〈十五〉

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「るい殿、痛みはないか」
「ん、んぁ、きもち、い、い」

 ぼってりと熱をもつ粘膜を勝五郎の指がゆっくりと撫でる。異物感は依然残るが指が入ったという達成感が勝る。ずぬぬ、と蜜口へ退く勝五郎の指をぎゅむぎゅむと粘膜がんだ。

「ああ、るい殿は覚えが早いな」
「勝五郎、さ、ま、……あ、あぁんっ」
「こら。俺の名を呼んではならん。癖になる」

 片眉をあげ勝五郎がたしなめた。
 ちゅ。
 包皮が戻りかけていた淫芽を唇で吸う。

「あっ、んぁああっ」
「目を閉じて。そうだ。思い浮かべてみよ。――こうしてるい殿を愛でるのは俺ではない。貴人――」
「やっ、厭、勝五郎、さま……!」

 指と唇の動きが止まる。快楽が募る途中で放り出され、るいは腰をくねらせた。潤みをたたえた粘膜が呑み込んだ勝五郎の指をきゅう、と締めつける。

「あ、ん、……やめないで、勝五郎さ、ま、……んっ、ください、ませ、ああっ、きもち、い、……、んぅ、しょうご、ろ、さま……」

 ふたたび淫芽が唇に包まれ、指がぷちゅちゅ、と粘膜を撫ではじめた。

「しょうご、ろう、さま、――ああ、んっ、しょうごろ、う、さま、あぁ、んっ、あ、ああああっ」

 ぞくぞくじゅわじゅわと胎の奥で快楽が弾け泡立つ。がくがくと腰を震わせ、るいはのぼりつめた。


 喘ぐるいを腹の上に載せ、勝五郎は右腕で抱きしめた。びくりびくりと震える腰をなだめるように撫でる。

――信じられない。指が、入った。

 絶頂の余韻にひたりながら、るいは勝五郎の胸もとに頬を寄せた。

「んぅ、ん……」

 快感をやり過ごそうと身をくねらせるうちに、るいの腰の下で肉棒が大きくふくらんできた。

「んっ、あん、気持ち、いい。ふぁ、は、はい、っちゃう……」
「駄目だ、う、っ……るいど、の」
「あっ、ふぁっ、う、駄目……」

 肉棒が濡れる蜜口を撫でる。駄目だと言い合いながら、離れられない。互いに腰を押し付け合い、秘所を擦りつけ合い、貪った。
 くちゅ。くちゅちゅ。
 快感に反応して腰が跳ねるのか、しどけなく濡れる秘唇で肉棒を食むことで快楽がもたらされるのか、分からなくなってきた。

「る、るい殿、るい、――は、離れ、――う、うぁっ」

 口と裏腹に、大きな右手がるいの腰を強く掴む。秘所から外れ、突き刺すように腹に押しつけられた熱い塊がのたうち暴れる。

――御たねが…………。

 るいは恍惚とさびしさとを噛みしめた。
 ぬる、るる、る。
 勝五郎の肉棒は暴れながらぬめりを吐き出している。ぬめりは子だねとして活きることなく熱を失っていく。

「あ、うっ、あ……」

 切なく眉を顰めきつく目を閉じる勝五郎の腰がゆるりと円を描いた。力を失いつつある肉棒が未練がましく、自身のおさまるはずだった蜜の壺を探ろうとのたうつのをやり過ごそうとしている。

――どうして私たちは、思うさま睦み合えないのか。

 詮無い願いを振り払うようにるいはぐりり、と腰を押しつけた。熱の褪めはじめたぬめりがぬちぬちとふたりの寝間着を、肌を汚している。勝五郎が息を荒らげまぶたを開けた。涙の膜が張った焦点の合いきらない目は情欲の名残に曇っている。

――きっと、私もそうだ。

 るいは喘ぎを飲み込んだ。欲望に打ちって水際で持ちこたえたというのに自分たちはまるで負けてしまったかのよう。

「る、い、るい殿、す――」

 続きは何だったろう。「汚してすまない」だったのかもしれない。違ったかもしれない。謝らせたりしない。謝らせるものか。るいはことばの続きごと勝五郎の唇を貪った。
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