甘責めがつ子の惑溺愛へのナローパス

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がつ子、はしゃぎ過ぎの代償を払う

7.

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 学生時代からガーターベルトやストッキングを買うために通っているそのショップはゴージャス且つ上品な品揃えで客層のほとんどが熟女だ。学生だからと下着はシンプルで廉価なものばかり買っていたし、新入社員の今はまだ贅沢をする余裕がないしで上客ではない自覚が樹子にはある。それでもそのショップの店員さんは親切だ。酸いも甘いも噛み分けた上品なアラフォーの姐さんが揃っていて、まだ若い樹子に高い下着を強く勧めることもない。いつか懐に余裕ができたら大人っぽい下着をあのお店で買おう。樹子は心に決めているし、そんな樹子を店員さんたちが見守ってくれている。そういう関係ができあがるまで学生時代からこれまで、そこそこの年数がかかっている。
 ショップの外で広居主任を待たせ、樹子はひとりで入店した。

「まあ、大路さま。いらっしゃいませ」
「お仕事のお帰りで? 社会人らしくなられて」

 姐さんズがそそ、と集まり目を細める。

「今日はいかがなさいますか」

 社会人になったら着てみたいと思っていたブランドのコーナーに目が吸い寄せられる。
 やっぱり、素敵だ。
 紺に近い濃いブルーを基調としたレースの繊細な重なりが美しい。色違いのオフホワイトとブラックもあってこちらもかわいいしかっこいいがやはりブルーがいい。何より、このブランドはシリーズにブラやスリップ、ショーツだけでなくガーターベルトもラインナップされるのがいい。いつか揃いで着てみたい。

――誰に見せるわけでもないけど。

 同じ意味のことを以前口にしたとき、ショップの姐さんズに諭されたものだ。

――大路さま、順番が違いますわ。
――わたくしたち女は、男に見せるために装うのではありませんよ。居心地よく気分よく、幸せな自分になるために装うのです。
――肌ざわりのよい気分のあがる下着を身につけて幸せな女を見て、男は幸せになればよいのです。順番はあくまで、わたくしたち自身が先ですのよ。

 性癖が文字通りの壁となり隘路あいろで立ち尽くしていた学生時代の樹子に、自分のために装えというさとしは効いた。姐さんズだけではない。直接の交流はなくとも店の顧客の熟女たちもまた樹子の背伸びに白い眼を向けることなく自身の愉しみのために高価な下着を買い求める姿を見せてくれた。
 だから、分かっている。
 ブルーの新作をセットで身につけた自分を、広居主任がどう見るのかを知りたいという気持ちが浮ついた、不純な動機から生まれているのだ、と。

「新作が入ったばかりですのよ。試着、いかがですか?」
「えっとその、今日は急ぐので、ガーターストッキングだけ……」

 樹子はもじもじと身動ぎした。

「もしかして外の紺のスーツをお召しになった背の高いかた、お連れさまかしら?」
「あら、ゴージャスねえ」

 姐さんズがショップの外をうかがう。
 隣のショップとの間に広居主任が背を向けて立っているのが見える。仁王像か。肩の線が強張っていて威圧感がさらに増している。店内に客は樹子ひとり。他の客の連れだと誤魔化すわけにいかない。

「いやその、じょ――」

 ただの上司だともいえない。
 普通上司同伴でランジェリーショップに繰り出すだろうか。いや、ない。まずない。絶対に、ない。
 正直にセフレなのだともとてもではないがいえない。上品なマダム向けのショップに背伸びをして通いやっと信頼関係を培ったのだ。口を滑らせようものなら、二度とショップに顔を出せなくなる。

「えっとその、はい、連れです。待たせると悪いので……」
「だいじょうぶでしょう」

 姐さんズの中でも年嵩の店長が請け合った。

「試着なさって。きっとお似合いになりますよ。あら、――前の採寸からだいぶ経ってますわね」
「では採寸はわたくしが」

 別の姐さんがメジャーを手に微笑む。あれよあれよという間に樹子はフィッティングルームへ連れて行かれた。

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