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がつ子、ゲートウェイ先輩の教えを懐かしく思い出す
4.
しおりを挟む「大学は人生最後の童貞サンクチュアリね。ハンティングのために院に進もうかと一時、真剣に検討したこともあるわ」
「さすがに進学理由がそれはちょっと」
「そうよね。だから次のステージでがんばるつもりよ」
「は、はあ」
この美人、社会に出ても童貞を喰いまくるつもりだ。
ゲートウェイ先輩は童貞香の嗅ぎ分けかたや童貞の扱いなどを熱心に語り散らかし、口を挟ませない。ケーキの屑ひとかけも残らずコーヒーが冷えた泥のような味になってようやく樹子は解放された。
「***くんは童貞よ。間違いないわ」
「そ、そうですか」
「本気で狙いに行くわよ」
「はあ。私はその、童貞がどうこうより末永く仲良くできるかわいい恋人が見つかればいいな、なんて」
「それって、男なんか興味ないふりをしているくせに罠ばかり張ってる連中がいってるのと同じね。あの子たちったら、恋が終わってもお相手にしがみつくの」
ゲートウェイ先輩は長い睫毛を瞬かせた。視線が出入り口近くのボックス席でぎすぎす言い合う男女三人組へちらりと向かう。
「そういうのを妥協っていうのよ、樹子さん。だいたい、寝たら童貞じゃなくなるじゃないの」
恋が終われば用はないでしょといわんばかりにゲートウェイ先輩は首を傾げた。
そうなのだ。この美人は以前かち合って敗れたときも、樹子の思い人だった純情童貞を喰い散らかして捨てた。
――すぐ別れるんだったら、手を出さなければいいのに……!
――そうね、そのとおりね。
樹子の恨み言をゲートウェイ先輩は柳に風と受け流した。
――でも一度寝たら、恋は終わるのよ。だから次を探すの。だいじょうぶ。彼が悲しむのも初めのうちだけよ。それに内心、童貞を捨てられて喜んでるわ。
呆れた。酷い人だと思った。
それでも楚々とした外見に妖しい魅力と翳り、尽きない欲望と精力とを併せもつ怪物のような美女を、樹子は憎み嫌うことができないでいる。
「***くんも、手に入れたらすぐに別れちゃうんですか」
「そうね。どちらかというと準備期間のほうが長いから寝るのはひと晩、――多くてふた晩かしら」
「大事にしてください、***くんを」
そしてあなた自身を、とまでは踏み込めなかった。
「わたしに童貞を失った男で妥協しろっていうの?」
冗談が過ぎるわよ、とゲートウェイ先輩はテーブルに置かれた伝票を取り席を立った。別のボックス席で修羅場三人組の男がぽう、と通り過ぎるゲートウェイ先輩を見送る。視線をたどった女ふたりの目が尖った。
「――あれは童貞じゃないわね。においが違ったわ」
修羅場喫茶を出て、ゲートウェイ先輩は
はん。
眼中にないといいたげに鼻を鳴らした。夏の日差しに目を細める。
「童貞について教えられることはだいたいお伝えできたと思うわ。――じゃあ、***くんの件はイーブンの立場で勝負しましょう」
「はあ。ご馳走さま、でした……」
こうして敵味方に分かれ教育学部一年のとある草食系純情美少年を間に挟み数ヶ月にわたり発止とやり合った果てに冬、樹子はゲートウェイ先輩を打ち破り愛を勝ち取った。新年度を迎える前に駄目になってしまったのであるが。
ゲートウェイ先輩のいうとおりだった。
樹子は自分と寝て自信をつけた恋人が純情を失いオラつき女友達に色目をつかうのに耐えられなかった。
* * *
まるで迷子だ。あのころのまま樹子は清純な美少年を甘責めしたいという性癖の隘路で何年も行く先を見失い立ち竦んでいる。
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