ぽち

uca

文字の大きさ
上 下
12 / 14

〈十二〉

しおりを挟む

 ごりごりとお尻に押しつけられる動きが止まり――はしないが、少し控えめになった。

「あの」

 高橋さんが言い淀んだ。ちなみに声色に若干深刻な調子がにおうのに反し、両手は私のおっぱいをすくったかたちのままやわりやわりと動いている。お気に召したらしい。にぎにぎと強めに揉まれるよりこうして遠慮がちにさすられるほうがくる。何がどこに、と問われると少々答えにくいが、くる。さらりとした高橋さんの掌がゆっくりやわらかく擦れて乳首がぴんぴんに尖ってしまう。

「……あ、ん」
「んんっ」

 乳首や熱い息のかかる耳もとで生まれるぞくぞくした感覚はなぜかおなかの奥に直結していて、ぞくぞくが伝わるたびに腰がびくんびくん動いてしまう。そうするとお尻の溝に挟まった熱くて硬いものを弄ぶようにすりすり刺激することになり、高橋さんが切なげに溜め息をつきながらおっぱいを揉むという欲望の永久機関ができあがってしまう。切りがない。

「あの、もしかして鈴芽さん、流されてませんか」
「そ、そんなことはない、と……」

 ぐるん、と視界が回転した。

「ほんとうに? 流されてない? 俺、だいぶヤバいです」

 実際のところヤバいというべき状況と体勢だと私も思う。
 ベッドに投げ出した手は右も左も、それぞれにがっしと押さえつけられている。くにゃくにゃになってしまっている私の大きく開いた足の間に高橋さんがいて、私のほころびかけた秘所にぎんぎんにたかぶった高橋さんの高橋さんをぴったりくっつけている。
 これってセックスする寸前の体勢なのでは。
 分かっていたはずなのに理解が追いついていない。遅ればせながらひやりとした。
 でも、この躊躇ためらいは何なのだろう。厭なのではない。決して、ない。
 憧れていて大好きな高橋さんと最後の一線らしき何かを越えそうになっていて、でも自分だって欲望まみれで状況に流されていて、それなのに私は心のどこかで「ああ、よかった」と安堵していたと思う。肩の荷を下ろしたみたいに。

 背が高くて筋肉質でどちらかというと体が強い私は、モテない。友達は女子だけでなく男子も多いし、日帰りキャンプやら映画やら飲み会やらも半ば合コン目的で集まることもそこそこある。そういう場で私は男子から「あいつは女だけど気を遣わなくていい」と見なされている節がある。話しやすいという一見褒め言葉に似た糖衣を剥がしてみれば、私は道化や、場が行き過ぎてちゃらけてしまわないようにするストッパーの役割を期待されている。だから皆で集まるとき私は「男子ぃ、ふざけすぎ!」と過剰ないじりを制し、盛り上がりに欠けるときは進んで非モテエピソードを開陳して道化に徹しバランサーの役割を演じる。決して欲望の対象になることはない。
 私には好きな人がいたから、それでよかった。高橋さんからも「女だけど話しやすい」と欲望の頂へのぼる梯子を外される、欲望の対象でないとはっきりと突きつけられるのではないかというおそれは常に自分の中にあったけれど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...