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〈十二〉
しおりを挟むごりごりとお尻に押しつけられる動きが止まり――はしないが、少し控えめになった。
「あの」
高橋さんが言い淀んだ。ちなみに声色に若干深刻な調子がにおうのに反し、両手は私のおっぱいを掬ったかたちのままやわりやわりと動いている。お気に召したらしい。にぎにぎと強めに揉まれるよりこうして遠慮がちにさすられるほうがくる。何がどこに、と問われると少々答えにくいが、くる。さらりとした高橋さんの掌がゆっくりやわらかく擦れて乳首がぴんぴんに尖ってしまう。
「……あ、ん」
「んんっ」
乳首や熱い息のかかる耳もとで生まれるぞくぞくした感覚はなぜかおなかの奥に直結していて、ぞくぞくが伝わるたびに腰がびくんびくん動いてしまう。そうするとお尻の溝に挟まった熱くて硬いものを弄ぶようにすりすり刺激することになり、高橋さんが切なげに溜め息をつきながらおっぱいを揉むという欲望の永久機関ができあがってしまう。切りがない。
「あの、もしかして鈴芽さん、流されてませんか」
「そ、そんなことはない、と……」
ぐるん、と視界が回転した。
「ほんとうに? 流されてない? 俺、だいぶヤバいです」
実際のところヤバいというべき状況と体勢だと私も思う。
ベッドに投げ出した手は右も左も、それぞれにがっしと押さえつけられている。くにゃくにゃになってしまっている私の大きく開いた足の間に高橋さんがいて、私のほころびかけた秘所にぎんぎんに昂ぶった高橋さんの高橋さんをぴったりくっつけている。
これってセックスする寸前の体勢なのでは。
分かっていたはずなのに理解が追いついていない。遅ればせながらひやりとした。
でも、この躊躇いは何なのだろう。厭なのではない。決して、ない。
憧れていて大好きな高橋さんと最後の一線らしき何かを越えそうになっていて、でも自分だって欲望まみれで状況に流されていて、それなのに私は心のどこかで「ああ、よかった」と安堵していたと思う。肩の荷を下ろしたみたいに。
背が高くて筋肉質でどちらかというと体が強い私は、モテない。友達は女子だけでなく男子も多いし、日帰りキャンプやら映画やら飲み会やらも半ば合コン目的で集まることもそこそこある。そういう場で私は男子から「あいつは女だけど気を遣わなくていい」と見なされている節がある。話しやすいという一見褒め言葉に似た糖衣を剥がしてみれば、私は道化や、場が行き過ぎてちゃらけてしまわないようにするストッパーの役割を期待されている。だから皆で集まるとき私は「男子ぃ、ふざけすぎ!」と過剰ないじりを制し、盛り上がりに欠けるときは進んで非モテエピソードを開陳して道化に徹しバランサーの役割を演じる。決して欲望の対象になることはない。
私には好きな人がいたから、それでよかった。高橋さんからも「女だけど話しやすい」と欲望の頂へのぼる梯子を外される、欲望の対象でないとはっきりと突きつけられるのではないかという懼れは常に自分の中にあったけれど。
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