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惑星ヴァージャ (一)
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スタージョは惑星キャンビアにたどり着いた。
地球人類が宇宙に進出し築いた植民エリアのなかでも最奥部への入り口、ハブにあたる星だ。スペースポートで籍を連絡船から惑星キャンビアに移し、滞在許可を得て地上へ降りる。
今回は難儀しそうだ。
――どうしたものか。
ラーシュ・オリジナルの籍は同じ惑星キャンビアにあった。登録日付は地球時計で三年前。これまで数十年、百年単位で眠りに就き移動してきたことを考えるとニアミスといっていいほどの接近だ。しかし、スタージョの顔色は冴えない。デバイスに、いつもなら届くはずのオリジナルとおぼしき人物からのメールがなかった。次にどこへ向かえばいいのだろう。
おそらく、ラーシュ・オリジナルはこの星にいない。
ではどこに?
クロエが次に向かいそうなのはいったいどこだ? この広い宇宙のどこを探せばよい?
――オリジナルはあんたを利用するだけ利用して、使い途がなくなったらほっぽり出すつもりなのさ。
黒衣の女の言葉が暴れまわるように脳内をこだまする。スタージョは力なく頭を振り、女の声を打ち消した。
ここから先、自分で情報を集めなければならない。
植民エリア最奥部のハブとなっているだけあって、惑星キャンビアには船や物資、人が集まる。アースポートも賑わっていた。
スタージョが駅前広場の隅で地球時計をぼんやり眺めていると
「ラーシュ・ヨハンソン」
声をかけられた。
生を享けて三百年。スタージョをラーシュ・ヨハンソンと呼ぶのは惑星や連絡船の入管窓口係員を除けばくだんの女だけだ。体温が低そうな白い肌に黒髪、黒い目、服も黒ずくめで唇だけが別の生きもののように赤い。
黒衣の女が
「こっち、来なよ」
手招きをする。
「呼ばれたからってほいほいついて行くと思われているんなら心外だな」
「いいから。――早く」
女が黒々とした目を尖らせた。広場に建ち並ぶ商館の間、暗い路地へいざなわれる。
「なあ、きみ。おれは忙しいんだ。こんなことはもう――」
「ほんとに? オリジナルからメールも届かないのに?」
言い当てられてスタージョは言葉を失った。
「どうして届かないんだと思う?」
「それは――」
「あたしらはもう、用済みだからさ」
身を寄せてきた女が低く蠱惑的な声で囁く。体温が低そうな白い肌をしているのに、黒衣越しの体が熱いことを知っている。後ろめたさにスタージョは足をもつれさせて女から離れた。
「おれ、たち?」
「ラーシュ・ヨハンソン、あんたはもうクロエ・フレーザーを探さなくていい。――これから」
女がしがみついてくる。
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