南京錠と鍵

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スタージョ (六)☆

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「どうしてこんなことをするんだ」

 スタージョの問いに黒々とした女の目がいっそうくらくなった。人気のない裏路地の暗がりでさえざえと白い女の手が下腹へと伸びる。

「そこは、……やめてくれ。……っ、ぁ」
「オリジナルがどうしてあんたをつくったのか、考えたことはあるかい」

 服越しに女の細い指が勃ちあがった肉棒のかたちをゆっくりとなぞる。かちかちに膨れあがる亀頭をやさしくなぶる女の、別の生きもののように赤い唇が嬉しげに歪んだ。

「おれは……彼は地球で死ぬかもしれなくて……」
「でもオリジナルは生き延びた。そしてただのデータだったあんたが命になる前に消し去ることもできた」

 どうしてだろうねえ。
 ねっとりと笑いの滲む声がスタージョの耳たぶをくすぐる。すすけた壁に背中をすりつけ悶えても女の指から逃れることはできない。じりじりともどかしい快楽が体をあぶる。

「オリジナルはあんたを利用するだけ利用して、使いみちがなくなったらほっぽり出すつもりなのさ」
「そんなことは、ない。……っ、そ、んなはず、ない……」
「へえ、ほんとに?」

 暴発寸前で女の指が欲望の塊から離れた。へこへこと後追いしそうになる腰を意志の力でねじ伏せる。

「またね、ラーシュ・ヨハンソン」

 体温が低そうな白い肌、別の生きもののように赤い唇が暗がりに滲んで消えた。


 裏路地の奥で勃起がおさまるまでへたりこんでいてスタージョは

――なぜあの女はおれを追いかけてくるんだろう。

 考えた。
 暗号で隠されたオリジナルからのメール。
 秘匿されたクロエの居場所。

「おれか……」

 スタージョは両手で顔を覆い天を仰いだ。植民後百年以上経て古びてきた街、密集する建物が小さく切り取った空から光がす。

「おれがクロエを狙う連中に場所を教えてしまっているのか」

 様々な可能性が脳内でぶつかり合う。メールで示された座標がクロエの居場所を示すとは限らない。嘘の居場所だとしたら――そのほうがいいのか。女はクロエの居場所が分からないからスタージョを追ってくる。女の背後に誰がいるのか――ラーシュの記憶を探ってスタージョはフレーザー家が一枚岩ではなかったことを思い出した。

「トリック・オア・トリート!」
「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!」

 吸血鬼や魔女、フランケンシュタインや骸骨、妖精など思い思いのコスチュームに身を包んだ子どもたちが楽しげに表通りを練り歩いている。
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