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chapter three

23.月夜

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その後、数日特に何もなく日々が過ぎていた

しかし、誰もこのまま終わるとは思っていない

事実、今夜ほとんどの人が寝静まったころ

ローデンベルク家の家の前にはふたり分の影があった

「ははは、今日限りでアベルとやらも終わりだぜ!」

「兄さん、静かにしないと気付かれちゃう」

ふたりとも黒と蒼穹の色が混じり合った髪に碧眼を持っていた

「それに、まだ屋敷の前に来ただけ」

「わ、わかってるって」

兄さんと呼ばれた方は確かにもうひとりより身長が高かった

「気を取り直して、中に入ろうぜ」

「…ん」

ひとりが軽々と塀を飛び越えるとそれに続く

手入れされた庭(といってもシンプル)を通り抜け

音がしない様に窓ガラスを破る

中に入ると赤いカーペットだけが続く廊下だった

アベルは、特に物にこだわるタイプでは無いので屋敷はこのような内装が多いのだ

「にしても、本当に人が少ないな」

「あの人の言ってた通り」

人手不足もあるが彼らのいる場所がアベルの部屋から遠い為でもある

はじめ一階を見回ったがキッチンや食料庫、使われていない部屋が主だった

使用人の部屋は、それぞれにネームプレートが貼ってある部屋が続いていて調べるまでもなかった

結局一階には何もなく

二階へと続く階段のある玄関ホールまで戻って来ていた

「ひっろい屋敷なのにほとんど空き部屋だったな…もったいねぇ!」

「…兄さん?」

大きな声を出したことに対してジトっとした目を向ける

「う、静かにします」

しょんぼりした様子は、今の状況を一瞬忘れさせる

「…ん」

仕方ないにとばかりに頷く

「よし、じゃあ行くか」

「申し訳ございませんが、これより先へ通すわけには参りません」

途端先程まで気配がなかったはずの場所に人が立っていた

目線を向ければ階段を上りきったひとりの女性がいる

後ろの窓ガラスから差し込む月の光が何故だか神秘的だった
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