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15 いつまでも、これからも

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 そして結婚の話はとんとん拍子で進んでいき、私は自分の住んでいた城から出ることになった。

 これからはリチャードのお屋敷に住むのだ。



 アリアはちゃっかりと二番目のお兄様とくっつくことになった。



 だから、まぁ……なんというか本懐を遂げたのだけど。

 あの日以来、リチャードからのアプローチが更に激しくなった。

 お城に毎日押しかけてきて、毎日私にキスをしてきた。

 これから一緒に住むのだ。

 もっとキスは激しくなるだろう。



「リチャード、一つだけ約束して」

「何だい? ダーリン」



 リチャードはニッコニコのスマイルを浮かべている。

 すごく満足そうだ。



「あのね、もう二度と私に拷問をしないで」



「そんなことするわけないじゃないか」



「それは拷問してない人が言えるセリフよ! 正直あの後もちょっと怖かったのよ! だからちゃんと約束をして」



「言葉だけいいの? 書面にサインをして誓おうか?」

「いらないわ。言葉だけで充分。リチャードの言うことを私は信じているから」



 私は薬指を彼に差し伸べる。



「だから、約束」



 私がそう言うとリチャードは、反対方向を見てプルプルと震えていた。

 私は気づいた。

 彼の耳が赤く染まっていることに。



 最近気づいたのだけれど、私が自分の意見を押すと、彼はとても喜んだり照れたりしてくれる。



 彼が今までしてきたことは真っ黒いことばかりだけれど、こういうことに関しては案外ピュアならしい。



「かわいいなぁ、俺のエリザベスは……」



「ねぇ、私の手が放置されてるんだけど。リチャード、やーくーそーく」



「あぁ、もうっ。そんな国宝級に可愛い顔で……」



 国宝級って……。

 リチャードは私のことを持ち上げすぎだ。



 リチャードは私の薬指にキスを落とし、その後自分の薬指を絡めてくれた。



「約束」



 彼は心から嬉しそうに笑った。

 もう、本当に仕方ないんだから。私の騎士様は。



 そして、大きな引越しをしたあと、私たちは教会で結婚式を挙げた。



 誓いの言葉を交わした。恥ずかしいけれど人前でキスをした。



 沢山の人から祝福を受けた。

 これから私は彼と共に生きていく。



 バージンロードを二人で歩いていた時、突然私の身体が光り出した。



「えっ……ええぇ?」



 この光には見覚えがあった。

 そうだ、アリアが聖女と認められた時、彼女の身体は同じように光っていた。



 つまりーー



 呆気にとられていた私。同じように驚くリチャード――というよりも、この場に同席している全員が驚いていた。



 そんな中、神父が言った。



「どうやらエリザベス様は『二人目の聖女』のようですね」



 50年に1度生まれると言われている聖女。

 いや、正確には50年に1度生まれる『確率』があると言われている『聖女』。



 きっと滅多にないことなんだろうけれど……一度の時代に一人と明言されているわけではない。

 とってもとってもレアな事例で、たまたま聖女が二人いたのだ。



 周りが騒ぎ出す。

 新郎側の席も新婦側の席からも戸惑いの声が上がっている。



 聖女ってことは、政治的に関わらないといけないのかしら……。



 そんなことを考えていたら、私の身体がひゅんっと浮き上がった。



「エリザベス」



 リチャードが突然私の身体を抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこ状態になる。



「貴方は俺の聖女だ」

「で、でも聖女って認められたのなら祈りとか恵みとかを尽くさないと――」

「貴方は俺だけの聖女でいればいいんだよ」



 リチャードの言葉には圧があった。

 この場にいる人々、みんなが気圧されている。



「……もういい。弟の執着で国がややこしくなるほうが面倒臭い」

 リチャードの兄は、呆れた顔を浮かべていた。



 うん。

 そうだ。



 私が照らすのはリチャードだけでいい。

 私が『聖女』なら、今まで『自分を嫌い』だと言ってたリチャードを、全力で癒してあげたい。

 信じて恋してキスして愛して。



 貴方に愛を与えてあげたい。



「私は貴方だけの聖女でいると、誓います」



 これからも。いつまでも。
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