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やがて衝撃の真実から会場が多少落ち着いたころ、ルーファス王子は会場を後にして改めて王様に続き王族として入場した。
 
王様がパーティーの始まりの挨拶する。
学園の卒業についてや貴族の一員として迎え入れることを喜び祝うと話す側で並び立つ王妃様や王太子達を見る。

見かけは野暮ったく装っているが、よく見れば王妃様はルーファス様とよく似た美女で王太子も第2王子も王様似の美丈夫だった。
 
「先程はルーファスの話に混乱を招いたかもしれない。だがせっかくのめでたい日だ。どうか気を取り直して楽しんで行って欲しい」

「お、王様!さっきのルーファス王子のお話は本当なのですか!?」

「悪い冗談だとルーファス王子に罰をお与えください」
 
「ルーファス王子は悪戯に我々を混乱させた!」
 
「王様!どうか真実をお教えください」
 
幼い日から教えられ信じていた物が否定されたのだ。すぐには信じられなくてもしかたがない。
1人が口をひらくと他にも口々に叫んだ。
自分の容姿に自信があった者ほど信じられないのかもしれない。

王様は貴族を見回して口を開いた。
 
「ルーファスの話は真実だ。だがこれからは皆が心から美しいと思うものを美しいと言って欲しい。話は以上だ」
 
王様達は高台の席へと下がって行った。
 
これまで自身の外見に絶対の自信を持っていた者や、外見以外の努力を怠っていた者たちは顔色が悪くなり、中には倒れ込む者もいた。
 
すぐには受け入れられないのは当然だろう。だが私はもう自分の心に嘘をついて生きていかなくてもいいと思うと心が軽くなった気分だ。
ピートもアンナも気分が悪くなったようで休憩室へと下がって行った。
 
「マリッサ!」 
 
振り返ると父に抱きしめられた。
 
「マリッサ、すまない仕事で遅れてしまって」
 
「いえ、お父様いいんです」
 
「話は聞いたよ。とても驚いた。だが
マリッサは小さい頃からずっと美しかったし私の世界一のお姫様だ」
 
「ふふ。お父様もずっと前から私の世界一のお父様だわ」

私が醜くても美人でも父は私を世界一のお姫様にしてくれるんだと思うとなんだかくすぐったくて。
父の娘で良かったと私の中のマリッサが喜んでいる気がした。
 
父と合流した私は一緒に挨拶回りをしたが、反応は別れた。
卒業のお祝いや賢王の話で盛り上がったりと好意的な人もいれば、相変わらず私と父を煙たがり蔑む人もいた。
その間もずっと会場中からチラチラと視線を感じる。
賢王の話も衝撃的だったが、
ピートとアンナの不貞についてもぶちまけたので、それについても何か言われているだろう。

挨拶回りが落ち着くと、ルーファス王子にお礼を言いたいと思ったが、貴族に囲まれているため難しそうだ。

あの時、ルーファス王子があの場にあらわれなかったら、私は精神病院へ送られるか修道院へと送られる事になっていたかもしれない。
お礼は後日改めることにしよう。

最低限の挨拶を済ませると私は父と早めに帰宅した。
 
ルーナが心配して待っていたので、
事の次第をかいつまんで話すと、良かったと喜んでくれる。
今日はとても長い1日だった気がする。
ルーナが入れてくれた暖かいお茶を飲んでベッドに入るとすぐに眠りに落ちていた。
 
 





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