上 下
6 / 13

6

しおりを挟む
喜び合う2人を帰した足で早速父の執務室へと向かった。

「お父様、申し訳ないのですがピート様との婚約を解消していただけませんか?」

「な!?どうしたんだマリッサ!何があったんだい?!」

私はなるべく冷静に話をした。
アンナのお腹の中にピートの子が宿っていること。
ピートがアンナを第二夫人として迎えた上で、アンナの子を公爵家の第一子として扱うと言って来たこと。
それは公爵家の嫡子である私を蔑む行為だが、私の望みとして父を納得させるようにと言ったこと。
ピートは私もアンナも愛していると言うが結婚後も私を軽んじることは明白であること。
このまま結婚をするのは公爵家が軽んじられ恥を晒すことになること。

「私が至らないばかりに、申し訳ありません」
 
「いや‥。マリッサは何も悪くない。
マリッサは優しすぎるから心配していたんだ。心配しなくても大丈夫だよ」
 
「お父様‥‥」

「父上が取り決めた婚約だったからマリッサにつらい思いをさせてすまない。だがもう父上には何も言わせない!あの男はマリッサには相応しくないからな!」
 
良かったぁぁぁ。
あのクズとは結婚しないで済むのね。
ああ、窓を見て!
空が灰色じゃないわ。何処までも澄み渡った青空よ!なんて美しいの!
 
 
ああ、神よ。心から感謝します。


 
「婚約はこちらから破棄する。全て私が対応するから任せなさい」

「ありがとうございます。ああ、それから‥‥アンナに子がいるのは間違いないのですが他にも証拠が必要かと思って、2人の恋文を手に入れているんです」

「なんだと?マリッサよくやった。だが辛かっただろう?あんなに愛していたんだ。無理をしなくていいんだよ」
 
やめてぇー。
それ黒歴史ぃぃぃぃぃぃ(´Д`)

「いいえ、いいえ。もう愛してなどおりませんので私は大丈夫です」

「マリッサ‥‥」
 
なんだか腫れ物を触る目で見られるのが痛い。
とりあえず父に渡すため、2人の恋文を取りに行く。
 
内容はそりゃあもう酷いものだ。
でも大切な証拠なので中身を改める。

ーーーーーーーーー
僕の愛するアンナへ
 
君はこの世界で誰よりも一番美しい。
君が笑えば世界は輝き、
君が泣けば世界は輝きを失うんだ。
 
アンナの笑顔を、アンナの声をいつでも感じていたい。
僕はもう君なしでは生きていけない。
アンナは僕の全てだ。
 
ーーーーーーーーー
こんな調子で2枚ほどぎっしりアンナを褒めちぎってるポエムだが、続きは読む気がしない。
 

ーーーーーーーーー
私の愛するピートへ
 
今日もあなたの夢を見たわ。
夢の中でのあなたはマリッサじゃなくて私の婚約者なの。
この夢がずっと続けばいいのにって思った。
 
そうしたら、私はあなたの妻だもの。
毎日行ってらっしゃいのキスをして、
おかえりなさいのキスをして、
そして毎日愛し合うの。
ーーーーーーーーー
アンナの方はピートを褒めるってよりも
夢の中でしか叶わない、可哀想な私を主張してるわね。
こっちも2枚ほどぎっしりと書き込んであるけど、これ以上は読む気がしない。
 
 
この恋文を見つけたのは本当に偶然だった。
2人がこっそりと教科書を交換していたのを見てしまったの。
ピンと来た私は先生が呼んでいたとピートとアンナを追い払い中を確認するとこの恋文を発見したのだ。

2人の教科書は、焼却炉に捨てといた。
戻ってきた2人が必死になって教科書を探す姿はまあまあ笑えたかしら。
もちろん私も席を外していたから2人の教科書が無くなったことは疑われてないと思うけど。でも疑われても問題ないわ。
だって婚約者の目の前で恋文を交換するなんて、本当にマリッサを馬鹿にしていたのね。

でも手紙だけでは婚約破棄の切り札として少し弱かった。
だけどまさか子供が出来てたなんて。本当に予想の上を行ってくれて良かったわ。 
 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

姉の物を奪いたい妹と、等価交換の法則に従って行動する姉

マーサ
恋愛
年齢不相応に大人びた子供だった姉イレーナと無邪気に甘える妹ハンナ。どちらを両親が可愛がるかは火を見るより明らかだった。 甘やかされて育ったハンナは「姉の物は自分の物」とイレーナの物を奪っていくが、早くから社会経験を積んだイレーナは「世の中の真理は等価交換」だと信じ、ハンナの持ち物から等価値の物と交換していた。 物を奪っても上手くいかないハンナは、イレーナの悔しがる顔見たさに婚約者を奪い取る。 「私には婚約者がおりませんから、お姉様お得意の等価交換とやらもできませんわね」 王家主催のパーティで告げるも、イレーナは満面の笑顔で「婚約破棄、承知いたしました」と了承し……。 ★コメディです ★設定はユルユルです ★本編10話+おまけ3話(執筆済み) ★ざまぁはおまけ程度

【完結】処刑された王太子妃はなぜか王太子と出会う前に戻っていた

hikari
恋愛
マドレーヌは無実の罪を着せられ、処刑された。王太子は浮気をしていたのだ。 そして、目が覚めると王太子と出会う前に戻っていた……。 王太子と出会ったのはある日の舞踏会。その日からマドレーヌは他の男性と踊る事を決める。 舞踏会にはたまたま隣国のジェーム王子もいた。 そして、隣国の王子ジェームスはマドレーヌに惹かれていく……。 ※ざまぁの回には★印があります。 令和4年4月9日19時22分完結

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

婚約破棄から~2年後~からのおめでとう

夏千冬
恋愛
 第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。  それも王命により屋敷に軟禁状態。肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!  改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットをして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することを目標にする。

婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました

マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。 真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。

私は悪役令嬢なの? 婚約破棄して悪役にならない道を選びました

hikari
恋愛
エマニュエル王太子から婚約破棄されたその晩、アレクシアは夢を見た。そして気づいた。自分はある乙女ゲーの悪役令嬢に転生した事を。とはいえ、ゲームの内容とは少し違う。だったら、自分は平民のモブキャラを好きになれば良いのね。 本当の悪役はエマニュエル王太子を略奪したジェシカだった。 好きになったモブキャラは実は行方不明の隣国のアルキューオネ帝国の皇子だった!! 転生大井亜里沙であることを理解してくれたのは無二の親友ヴィクトリアだった。 ヒロインはジェシカと仲が良くない。だったら、悪役にならなければ良いんだ! とアレクシアは思った。ヒロインに協力し、ヒロインの意中の彼を射止めることにする。ヒロインが好きなのは実はスポーツマンのゲイルだった。 極めつけはエマニュエルはアレクシアと婚約中にジェシカと交際していた事が国王に知られ、ジェシカ共々国を追われる最高なスッキリざまぁ。 ざまあの回には★がついています。 悪役令嬢ものは今作で最後になる予定です。

【完結】反逆令嬢

なか
恋愛
「お前が婚約者にふさわしいか、身体を確かめてやる」 婚約者であるライアン王子に言われた言葉に呆れて声も出ない レブル子爵家の令嬢 アビゲイル・レブル 権力をふりかざす王子に当然彼女は行為を断った そして告げられる婚約破棄 更には彼女のレブル家もタダでは済まないと脅す王子だったが アビゲイルは嬉々として出ていった ーこれで心おきなく殺せるー からだった 王子は間違えていた 彼女は、レブル家はただの貴族ではなかった 血の滴るナイフを見て笑う そんな彼女が初めて恋する相手とは

処理中です...