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しおりを挟む皆さんはじめまして。
私はメイドのルーナと申します。
コールド公爵家が嫡子のマリッサお嬢様に仕えさせて頂いています。
私は今年21歳になりますが、マリッサお嬢様は18歳と歳が近く、私を姉のように慕ってくれるマリッサお嬢様はとても可愛らしくて。
私はお嬢様が大好きなのです。
お嬢様は公爵令嬢らしく気品があり、とても優しい方です。
お嬢様にはピート様という国一の美男子の婚約者がおりまして、貴族の義務として16歳から3年間通う学園でもとても仲睦まじく過ごしていると聞いています。
ピート様は侯爵家の二男で、学園卒業後はお嬢様と結婚して公爵家へと婿入り予定なのです。
お嬢様はピート様のお顔がいかに美しいか、そしてどんなに愛しているかを常々私に話してくれました。
もちろん顔だけではなく、勉学も優秀だとか優しい方だとかも話してくれます。
小さなケンカもしたりするようですが、いつも最終的にはお嬢様が折れて仲直りをするのです。
僭越ながら何故なのかお嬢様に聞いてみたことがありました。
お嬢様は教えて下さいました。
それは愛しているからだと。
そして、ピート様のお顔を見ると全てを許してしまうのだと。
学園を卒業したらピート様のお嫁さんになるのだと嬉しそうに話すお嬢様はとても愛らしかったものです。
そして学園ももう卒業までわずかとなったある日、ピート様が公爵家を訪れお嬢様に大切な話があると切り出しました。
婚約者となってここ数年では見たことがない真剣な表情です。
ピート様はとても美しいお嬢さんを傍に連れていますが、私はメイド。何も見ていないし聞いていません。
ですが話は聞こえて来ます。
「マリッサ。僕は君を愛している。
だから婚約は解消しない。だけどアンナも同じくらい愛しているんだ。アンナを第二夫人に迎えたい。許して欲しい」
アンナさん‥‥。お嬢様のお話で聞いたことあったお名前でした。学園で出来た身分を越えたお嬢様の親友だと。
身分は男爵だけれどとても美しくて誰にも優しい。明るくてとてもいい子だと。
いつかピート様も取られてしまうのではないかと心配していました。
元気のないお嬢様にその話を打ち明けられて笑い飛ばしたのはピート様本人だった筈です。
ピート様の傍にいるお嬢さんはアンナさんなのでしょうか。
「アン‥ナ‥を‥‥??」
「マリッサとアンナは親友だろ?きっとうまくやれるよ。今までもこれからもずっと3人で一緒だよ」
「でも‥‥お父様が、許さないわ‥‥」
「マリッサ‥‥。そこを君が望んだことにしてくれないか?君の望みだと言えば公爵様も許してくれるよ」
「でも‥‥」
確かに公爵様は一人娘であるお嬢様にとても甘いです。
お嬢様がお願いすればその通りになるでしょう。
「大丈夫。後継ぎが出来るか不安だから、親友であるアンナを第二夫人に迎え入れたいと言うのはどうかな?」
「‥‥‥‥‥‥」
「ごめんなさい!マリッサ。私がいけないの。私が彼を愛してしまったから‥‥でも、でも私、本当に彼を愛しているの!」
「ああ、アンナ!ダメだよ。お腹の子に差し障る」
「お腹の‥‥子‥?」
「‥‥ピート様の子なの‥」
「大丈夫だよ。もちろんアンナの子もマリッサの子も分け隔てなく愛する。僕はアンナもマリッサも愛しているからね。
だからアンナの子供は公爵家の第一子にするけど、何も心配はいらないよ」
「‥‥‥‥」
アンナさんのお腹に子が宿っている?
それは立派な不貞行為ではありませんか?
お嬢様とはまだ清い関係なのにアンナさんとはもうそんな関係に?
お嬢様は先日ピート様に口付けをされようとしただけで失神したほどなのです。
こんな話を聞かされてまた失神しないか心配でたまりません。
アンナさんはお嬢様に泣いて縋り、ピート様にはお嬢様から公爵様へ説得するようにと諭し続けるなか、沈黙していたお嬢様は言いました。
「わかりました。‥‥然るべきように致しますね」
「本当かいマリッサ!ありがとう。わかってくれると信じていたよ。さすがマリッサだ。愛しているよ」
「マリッサ‥!ありがとう。お腹の子も喜んでくれてるわ」
ピート様とアンナ様は口々にお礼を言って嬉しそうに帰って行きました。
お嬢様‥‥。いくらピート様を愛しているといってもこれはあんまりです。
いくらお嬢様の親友といえど第二夫人であるアンナさんが公爵家の第一子を?
どんなにピート様がお嬢様を愛していると言っても世間ではお嬢様とは政略結婚であり、第二夫人のアンナさんを寵愛していると公言しているようなものです。
それをお嬢様の口から公爵様へお願いするように頼み込むピート様も私には信じられませんでした。
公爵様へは、しばらくアンナさんのお腹の子のことは伝えないようにとまで口止めして。
けれど、お嬢様はピート様のわがままをいつだって受け入れてきました。
どんなに理不尽でも今回だってきっと。
‥‥私は傷付いたお嬢様の心が癒えるように尽力する次第です。
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