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4 聖魔術師の幻影編
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「国家魔導具お披露目、及び、国家魔導具主の選定会の開催をここに宣言する」
新リテラ王国の国王陛下が厳かな声で宣言すると、一斉に拍手が沸き起こった。
興奮する会場の参席者とは反対に、私は冷めまくる。なぜなら、選定会なるものがお披露目会に加わっていたから。
「さっそく話が違う」
選定会ってつまりあれだ。主を決定するってやつだ。
私たちが昨日今日と講習を受けさせられたり、儀の練習をさせられたりしたのは、この選定会のため。間違いなく。
主候補だなんだと言われたね。事前には分からないから云々とかも言われたね。
事情が変わったなら変わったで良いんだけど。選定会と名前を付けて行うっていうのであれば、参席者には事前に連絡しておくべきではなかろうか。
どこの国も、前日には新リテラ王国に入国しているというのに。そもそも、選定会をする側の私たちは聞かされてない。
私の隣に座るソニアは、私とは違うところに目を付けていた。
「国家魔導具とは『金冠』のことですわよね。なぜ、はっきりと『金冠』と宣言しないのでしょうか」
確かに。回りくどい言い方をしている。
加えて、どう見ても私の目には銀色に見えるあの冠。
「実は金冠じゃないとか」
「まさか」
「あそこにあるあれ、金色じゃないし」
銀色だ。見間違えはずもないほどバッチリ銀色をしている。
レティーティア殿の銀髪銀眼を彷彿とさせるような銀色に、思わず引き込まれそうになった。
「わたくしには金色に見えますけど。どういうことなのかしら」
ソニアは不思議そうな顔をする。
その疑問には答えず、私は別の指摘をした。
「あと気になるのがあの杖精」
私はそう言って、こっそり、レティーティア殿を指差す。
「レティーティア様?! あの方、杖精なんですの?」
これにはソニアも驚いたようだ。
まぁ、無理もない。
杖精が名前を持ち、役職まで持って、人間のように生活しているのは、かなり珍しい。まったくいなくはないけど、私が知っている中では他に一人だけ。
ふだんは杖や剣など魔導具として存在し時々人型に顕現するか、主を補佐する立場としてほぼ人型に顕現してるか。ほとんどの杖精はどちらかになる。
私のセラフィアスや王太子殿下のスローナスは基本的に前者だし、クズ男のアキュシーザや王女殿下のリグヌムは後者。
レティーティア殿の振る舞いは、他の杖精と比べてもかなり違う。主はいったい誰なのか。もしかしたら、主のいない杖精なのか。謎は尽きない。
気になる部分はもう一つ。
「うん。でも、能力がちょっとよく分からないんだよね」
「エルシアでも?」
ソニアが不思議そうな顔をするが、私だって万能ではない。
「私、もともと鑑定能力はないから」
「あら、わたくしはてっきり」
「解析はともかく、鑑定、鑑別はセラよりケルの方が得意だからね」
こういう物はルビーお姉さまの得意分野。お姉さまが来れれば良かったのに。
残念がってもここにお姉さまはいない。だから、私がなんとかしないと。
そう決意する私の横で、ソニアが何か考え込んでいる。
「だとしたら、レティーティア様が金冠という可能性は?」
ソニアはこっそり、レティーティア殿を指差す。釣られて私も指差す方を見た。
招待された各国の参席者は、中央に二列に並ぶ四人掛けの長椅子に座っていて、主催者側の新リテラ王国の主要人物は、中央の金冠が飾られている台座の両脇に座っていた。
こちらから見て、右側が国王ならびに王太子殿下や王女殿下などの王族、宰相など国の要職につく人々。
そして、左側がメッサリーナ殿やレティーティア殿など、聖魔術師たち。
レティーティア殿はその一番前、金冠に一番近い席に座っている。
私はレティーティア殿の容姿をじーっと眺めてから、ソニアに返答した。
「うーーーーん。金冠というくらいなんだから、銀髪銀眼はない」
「いやにはっきりと否定しますわね」
「魔導具本体の色って、精霊の髪色や瞳の色に影響するから。本体にどこにも銀色がないのに、杖精が銀髪銀眼はありえない」
「そうなんですのね」
ただ。
私の目に写る金冠はどう見ても銀色。
だとすれば、レティーティア殿があの銀色の金冠ということもあり得る。
でもそうなると、おかしなことになる。
「それに、魔導具の存在の仕方は、主と同化しているか、魔導具として存在してるか、杖精として顕現してるか。
魔導具と杖精が同時に存在することはあり得ない」
「それはそうですわね。魔導具と杖精は同一のものでしたね」
あり得ないこと続きなのに、なぜか、これが正解な様な気がしてならない。
「まぁ、とにかく。触ってみれば分かると思うから、たぶん」
「ずいぶんと自信なさげですわね」
「だから、鑑定は専門外なんだって」
後は私の杖がいい報告を持ってくればいいんだけど。
「ところで、あの金冠にもレティーティア様にも、今まで触れてなかったのに、今回は触れてもよろしいんですの?」
ソニアの問いかけに、私はニヤッとしそうになるのを我慢して、目で頷いたのだった。
新リテラ王国の国王陛下が厳かな声で宣言すると、一斉に拍手が沸き起こった。
興奮する会場の参席者とは反対に、私は冷めまくる。なぜなら、選定会なるものがお披露目会に加わっていたから。
「さっそく話が違う」
選定会ってつまりあれだ。主を決定するってやつだ。
私たちが昨日今日と講習を受けさせられたり、儀の練習をさせられたりしたのは、この選定会のため。間違いなく。
主候補だなんだと言われたね。事前には分からないから云々とかも言われたね。
事情が変わったなら変わったで良いんだけど。選定会と名前を付けて行うっていうのであれば、参席者には事前に連絡しておくべきではなかろうか。
どこの国も、前日には新リテラ王国に入国しているというのに。そもそも、選定会をする側の私たちは聞かされてない。
私の隣に座るソニアは、私とは違うところに目を付けていた。
「国家魔導具とは『金冠』のことですわよね。なぜ、はっきりと『金冠』と宣言しないのでしょうか」
確かに。回りくどい言い方をしている。
加えて、どう見ても私の目には銀色に見えるあの冠。
「実は金冠じゃないとか」
「まさか」
「あそこにあるあれ、金色じゃないし」
銀色だ。見間違えはずもないほどバッチリ銀色をしている。
レティーティア殿の銀髪銀眼を彷彿とさせるような銀色に、思わず引き込まれそうになった。
「わたくしには金色に見えますけど。どういうことなのかしら」
ソニアは不思議そうな顔をする。
その疑問には答えず、私は別の指摘をした。
「あと気になるのがあの杖精」
私はそう言って、こっそり、レティーティア殿を指差す。
「レティーティア様?! あの方、杖精なんですの?」
これにはソニアも驚いたようだ。
まぁ、無理もない。
杖精が名前を持ち、役職まで持って、人間のように生活しているのは、かなり珍しい。まったくいなくはないけど、私が知っている中では他に一人だけ。
ふだんは杖や剣など魔導具として存在し時々人型に顕現するか、主を補佐する立場としてほぼ人型に顕現してるか。ほとんどの杖精はどちらかになる。
私のセラフィアスや王太子殿下のスローナスは基本的に前者だし、クズ男のアキュシーザや王女殿下のリグヌムは後者。
レティーティア殿の振る舞いは、他の杖精と比べてもかなり違う。主はいったい誰なのか。もしかしたら、主のいない杖精なのか。謎は尽きない。
気になる部分はもう一つ。
「うん。でも、能力がちょっとよく分からないんだよね」
「エルシアでも?」
ソニアが不思議そうな顔をするが、私だって万能ではない。
「私、もともと鑑定能力はないから」
「あら、わたくしはてっきり」
「解析はともかく、鑑定、鑑別はセラよりケルの方が得意だからね」
こういう物はルビーお姉さまの得意分野。お姉さまが来れれば良かったのに。
残念がってもここにお姉さまはいない。だから、私がなんとかしないと。
そう決意する私の横で、ソニアが何か考え込んでいる。
「だとしたら、レティーティア様が金冠という可能性は?」
ソニアはこっそり、レティーティア殿を指差す。釣られて私も指差す方を見た。
招待された各国の参席者は、中央に二列に並ぶ四人掛けの長椅子に座っていて、主催者側の新リテラ王国の主要人物は、中央の金冠が飾られている台座の両脇に座っていた。
こちらから見て、右側が国王ならびに王太子殿下や王女殿下などの王族、宰相など国の要職につく人々。
そして、左側がメッサリーナ殿やレティーティア殿など、聖魔術師たち。
レティーティア殿はその一番前、金冠に一番近い席に座っている。
私はレティーティア殿の容姿をじーっと眺めてから、ソニアに返答した。
「うーーーーん。金冠というくらいなんだから、銀髪銀眼はない」
「いやにはっきりと否定しますわね」
「魔導具本体の色って、精霊の髪色や瞳の色に影響するから。本体にどこにも銀色がないのに、杖精が銀髪銀眼はありえない」
「そうなんですのね」
ただ。
私の目に写る金冠はどう見ても銀色。
だとすれば、レティーティア殿があの銀色の金冠ということもあり得る。
でもそうなると、おかしなことになる。
「それに、魔導具の存在の仕方は、主と同化しているか、魔導具として存在してるか、杖精として顕現してるか。
魔導具と杖精が同時に存在することはあり得ない」
「それはそうですわね。魔導具と杖精は同一のものでしたね」
あり得ないこと続きなのに、なぜか、これが正解な様な気がしてならない。
「まぁ、とにかく。触ってみれば分かると思うから、たぶん」
「ずいぶんと自信なさげですわね」
「だから、鑑定は専門外なんだって」
後は私の杖がいい報告を持ってくればいいんだけど。
「ところで、あの金冠にもレティーティア様にも、今まで触れてなかったのに、今回は触れてもよろしいんですの?」
ソニアの問いかけに、私はニヤッとしそうになるのを我慢して、目で頷いたのだった。
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