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3 王子殿下の魔剣編
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「つまり、王族の墓所に第二王子殿下の取り巻きや護衛が侵入しているのを発見したから、問いただしてみたと」
ヴァンフェルム団長が話してくれたのは、地下墓地への侵入が発覚した経緯だった。
うん、私が考えた二つのうち、悪い方に当たってしまった。大丈夫か、近衛。気が緩み過ぎだろう。
「そうしたら、地面を指差して『ここから王子殿下たちが地下に向かった』と言い出したわけなんだなぁ」
取り巻きたちも、そこは黙秘しないんだ。尋問に協力的だったということに、しておいてあげよう。
「なら、王族の墓所から、地下に入って王子殿下たちを捕まえればいいのね~」
「と、思うだろう?」
「違うのぅ?」
「そんなに簡単ではないんだよ」
団長が鼻で笑う。
「つまり、地下墓地への出入口を塞いでいるんですね、第二王子殿下の取り巻きや護衛が」
悪い方に当たった上に、面倒なことにもなっていた。
大人数が出入り口を塞いでいるとすると、そちらから入るのは無理だろう。
さすがに、カス王子を追いかけるためとはいえ、大人数を殴り倒せば、また反省文行きになる。
「これがなかなかしぶとくてねぇ。まぁ、王族命令となれば優先するのは仕方がないよなぁ、とも思ったりしてねぇ」
「騎士団、ずいぶん権力がない」
「団長、やる気なさ過ぎ」
でもこの話でようやく、気になっていたことがすっきりする。
すっきりしたついでに、《探索》の魔力の糸をたぐり寄せた。標的にかなり近づいている。
「それで、ルベラス君の力なら、こっそり入れるんじゃないかと、王太子殿下から近衛に話があったらしくてねぇ」
「ええええええ? それなら、私は関係なくない?」
「まあまあまあまあ。ルベラス君の力が公になると面倒だろう? だから、誤魔化すためにダイモス君に協力してもらったんだよ」
「物は言い様ですね」
ともあれ、これでユリンナ先輩が最初に気になっていたことも、無事に解決できた。うんうん。
「私って、巻き込まれ損? ヤバい秘密を知りすぎて消されたりしないよねぇ?」
「とにかく、どんな方法でも良いから地下墓地に侵入して、侵入者を捕まえればいいってわけですね」
「あぁ。なるべく穏便な方法で頼むよ」
「ていうか、私が消されないって、誰か安心させてよぅ!」
ユリンナ先輩の叫びを、私と団長は盛大に無視した。面倒くさかったから。
魔力の糸を手繰り寄せながら、私は二人を連れ、暗い地下墓地を歩いていく。
「穏便じゃなくていいなら、王族の墓所から直接、地下墓地に入ったんですけどね」
「地下迷宮経由は穏便なのかい?」
「相手を殴らなくても良いので」
間違ったことは言ってない。
じゃまなヤツがいれば殴って排除することになるから、これは穏便ではない。
「殴る以外の選択肢もあるだろうになぁ」
などと団長がぼやいているけど。
ただの《威圧》でも気絶して行動不能になる、この弱っちいご時世。
人間に対しては、魔法はなるべく使わないように心がけていた。
だから、殴る以外の選択肢は私の頭の中にないのだ。
「ところで、地下迷宮も地下墓地も極秘事項で、二つが繋がってるのも極秘事項なんでしょぅ? 私たち、通っても大丈夫なのぅ?」
うん、ようやくユリンナ先輩が重要なことに気がついてくれたよ。
「だから、道順を覚えられないよう、わざと複数の転送魔法陣を使って、地下墓地まで来たんです」
「なるほどぅ」
と言うユリンナ先輩に、
「だと思ったよ」
とこぼすヴァンフェルム団長。
「だから、あちこち歩かされたんだなぁ」
「それで何回も転送魔法陣を使ったのね」
二人とも無事に納得してくれたようで、私もホッとする。もっとも、ヴァンフェルム団長は早い時点で気がついていたようだったけど。
「転送魔法陣で、直接、地下墓地に入ることは出来ないしなぁ」
あ。それがあったか。
私は胸の前でポンと手を打つ。
「直接、地下墓地に転移するって方法もありましたね」
昔の私はともかく、今の私なら出来なくもない。
「え? 何の冗談?」
「冗談は言わない主義ですけど?」
魔法陣から魔法陣へ一瞬で移動するのが転送。あらかじめ、対の魔法陣を設置する必要がある。
魔法陣から指定したどこか(魔法陣ではないところや、対になっていない魔法陣など)に、一瞬で移動するのが転移。
転移を軽々やってのける魔物も、少なくはない。
でも、人間にとってはまだまだ骨の折れる魔法なのは確か。
あのクズ男が研究していた魔導具も、転移を元にしたものだったし。
馴染みもなかったので、団長が口にするまで、私もすっかり抜け落ちていた。
「まぁ、人を転移させるのって失敗したら身体がバラバラになって大惨事なので、これが最良だったんですよ、きっと」
私はそう言って強引に話をまとめた。
「ちょっとちょっと、ルベラス君。聞きたいことがたくさんあるんだけどなぁ」
まとめた後にいろいろほじくり返すのは良くないと思う。
団長が余計なことを聞く前に、仕事を終わりにさせないと。
「あ、人がいますよ、団長!」
私が指差す先にいたのは、魔力の糸にかかった人物。
ただし。
一人ではなく二人いた。
ヴァンフェルム団長が話してくれたのは、地下墓地への侵入が発覚した経緯だった。
うん、私が考えた二つのうち、悪い方に当たってしまった。大丈夫か、近衛。気が緩み過ぎだろう。
「そうしたら、地面を指差して『ここから王子殿下たちが地下に向かった』と言い出したわけなんだなぁ」
取り巻きたちも、そこは黙秘しないんだ。尋問に協力的だったということに、しておいてあげよう。
「なら、王族の墓所から、地下に入って王子殿下たちを捕まえればいいのね~」
「と、思うだろう?」
「違うのぅ?」
「そんなに簡単ではないんだよ」
団長が鼻で笑う。
「つまり、地下墓地への出入口を塞いでいるんですね、第二王子殿下の取り巻きや護衛が」
悪い方に当たった上に、面倒なことにもなっていた。
大人数が出入り口を塞いでいるとすると、そちらから入るのは無理だろう。
さすがに、カス王子を追いかけるためとはいえ、大人数を殴り倒せば、また反省文行きになる。
「これがなかなかしぶとくてねぇ。まぁ、王族命令となれば優先するのは仕方がないよなぁ、とも思ったりしてねぇ」
「騎士団、ずいぶん権力がない」
「団長、やる気なさ過ぎ」
でもこの話でようやく、気になっていたことがすっきりする。
すっきりしたついでに、《探索》の魔力の糸をたぐり寄せた。標的にかなり近づいている。
「それで、ルベラス君の力なら、こっそり入れるんじゃないかと、王太子殿下から近衛に話があったらしくてねぇ」
「ええええええ? それなら、私は関係なくない?」
「まあまあまあまあ。ルベラス君の力が公になると面倒だろう? だから、誤魔化すためにダイモス君に協力してもらったんだよ」
「物は言い様ですね」
ともあれ、これでユリンナ先輩が最初に気になっていたことも、無事に解決できた。うんうん。
「私って、巻き込まれ損? ヤバい秘密を知りすぎて消されたりしないよねぇ?」
「とにかく、どんな方法でも良いから地下墓地に侵入して、侵入者を捕まえればいいってわけですね」
「あぁ。なるべく穏便な方法で頼むよ」
「ていうか、私が消されないって、誰か安心させてよぅ!」
ユリンナ先輩の叫びを、私と団長は盛大に無視した。面倒くさかったから。
魔力の糸を手繰り寄せながら、私は二人を連れ、暗い地下墓地を歩いていく。
「穏便じゃなくていいなら、王族の墓所から直接、地下墓地に入ったんですけどね」
「地下迷宮経由は穏便なのかい?」
「相手を殴らなくても良いので」
間違ったことは言ってない。
じゃまなヤツがいれば殴って排除することになるから、これは穏便ではない。
「殴る以外の選択肢もあるだろうになぁ」
などと団長がぼやいているけど。
ただの《威圧》でも気絶して行動不能になる、この弱っちいご時世。
人間に対しては、魔法はなるべく使わないように心がけていた。
だから、殴る以外の選択肢は私の頭の中にないのだ。
「ところで、地下迷宮も地下墓地も極秘事項で、二つが繋がってるのも極秘事項なんでしょぅ? 私たち、通っても大丈夫なのぅ?」
うん、ようやくユリンナ先輩が重要なことに気がついてくれたよ。
「だから、道順を覚えられないよう、わざと複数の転送魔法陣を使って、地下墓地まで来たんです」
「なるほどぅ」
と言うユリンナ先輩に、
「だと思ったよ」
とこぼすヴァンフェルム団長。
「だから、あちこち歩かされたんだなぁ」
「それで何回も転送魔法陣を使ったのね」
二人とも無事に納得してくれたようで、私もホッとする。もっとも、ヴァンフェルム団長は早い時点で気がついていたようだったけど。
「転送魔法陣で、直接、地下墓地に入ることは出来ないしなぁ」
あ。それがあったか。
私は胸の前でポンと手を打つ。
「直接、地下墓地に転移するって方法もありましたね」
昔の私はともかく、今の私なら出来なくもない。
「え? 何の冗談?」
「冗談は言わない主義ですけど?」
魔法陣から魔法陣へ一瞬で移動するのが転送。あらかじめ、対の魔法陣を設置する必要がある。
魔法陣から指定したどこか(魔法陣ではないところや、対になっていない魔法陣など)に、一瞬で移動するのが転移。
転移を軽々やってのける魔物も、少なくはない。
でも、人間にとってはまだまだ骨の折れる魔法なのは確か。
あのクズ男が研究していた魔導具も、転移を元にしたものだったし。
馴染みもなかったので、団長が口にするまで、私もすっかり抜け落ちていた。
「まぁ、人を転移させるのって失敗したら身体がバラバラになって大惨事なので、これが最良だったんですよ、きっと」
私はそう言って強引に話をまとめた。
「ちょっとちょっと、ルベラス君。聞きたいことがたくさんあるんだけどなぁ」
まとめた後にいろいろほじくり返すのは良くないと思う。
団長が余計なことを聞く前に、仕事を終わりにさせないと。
「あ、人がいますよ、団長!」
私が指差す先にいたのは、魔力の糸にかかった人物。
ただし。
一人ではなく二人いた。
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