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3 王子殿下の魔剣編
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「はぁ。騎士団ともなると、上下関係って厳しいんですね。
そちらの黒髪の方は、優しい感じで質問に答えてくれたのに」
ゲホゲホゲホ。
お菓子を食べている途中で、話を振られて、お菓子がのどに詰まる。オルドーからお茶を受け取りゴクゴク流し込んで、ようやく生き返った。
気を取り直してもう一口。
とそこへ、聞き覚えのある声。
「あらぁ、ルベラス嬢はあなたの質問に一切答えておりませんわぁ」
ゲホゲホゲホ。
うん、また詰まった。
「キャァ」
「こらこらこらー、どこから出たのよぅ」
フォセル嬢やユリンナ先輩もビックリした様子。
突然、現れたのはアルゲン大公子の天幕へと消えていったはずのマリーアン。
マリーアンはお菓子を詰まらせる私や、ビックリ顔のフォセル嬢とユリンナ先輩を、にた~っとした笑顔を張り付けた表情で眺める。
「あらぁ、ごめんなさい~ 大声で叫んでいるレディがいたもので、珍しくて~」
「誰のことよぅ!」
ユリンナ先輩をからかうと、マリーアンは手にした扇子をパッと広げると、口元を隠した。
立って会話を続けるのかと思ったら、普通にスツールに座り込む。
じぃやさん、相手にしなくてもいいのにとも思ったけど、じぃやさんもその道のプロ(?)
手際よく、マリーアンとフォセル嬢ともう一人の令嬢に席を作って座らせていた。
「それより、フォセル嬢。ルベラス嬢は相づちは打っていましたけど、返事はしておりませんわ~ 逆に質問で返してましたわよ~」
フォセル嬢の右隣に座るマリーアンがネチネチフワフワと喋り出すと、
「エルシアは、ああ見えて意外としっかりしていますのよ。
後から、ああ言ったこう言ったと、言いがかりをつけられるような受け答えは、一切ありませんわ」
左隣のソニアが冷たく意見を言い放つ。
て。ソニア、いつの間に?
ていうか、いたんだ、ソニアも。
私は天幕から少し離れたところで、令嬢三人を見ていた。
うん、ちょっと気になることがあって、天幕の外に出てきたんだけどね。
私はじぃやさんが座らせた三人目の令嬢、ソニアラート・カエルレウス公爵令嬢に視線を向ける。
ソニアとマリーアン。この二人、仲が良い悪い以前に接点があまりないような気がした。
まぁ、どちらも高位貴族のご令嬢。接点がまるでないわけはないんだろうけど。
「あらぁ、カエルレウス嬢。あなたと意見が合うなんてぇ」
「あら。意見が合ったのではなく、あなたもわたくしも、目も耳も頭も悪くないというところでしょう」
二人ともカップを片手に、扇子をもう片方の手にして、ホホホと笑っている。
実際、笑い声が聞こえるだけで、口元は扇子に隠れて見えないし、目は笑っていない。怖い。怖いな、あれ。
この二人を見て言ってはないんだろうけど、どう聞いても誤解されるようなことを、フォセル嬢がポロッと口にしてしまう。
「はぁ。なんか、騎士団はルールがうるさいし、大公子殿下のお茶会はギスギスしたお嬢さまばがりだし。
私って場違いっぽいなぁ」
「あらぁ?」「はぁぁ?」
フォセル嬢のつぶやきを二人が聞き咎める。ほら、誤解されたよ。
「あ、お二人がギスギスしているんじゃなくて、あそこにいる人たちが。とくにあの王宮魔術師団所属の魔術師様が」
フォセル嬢は二人に睨まれ、慌ててアルゲン大公子の天幕を指差した。どうやら、空気を読むことは出来るらしい。
指差す方向にいる王宮魔術師団所属のみ魔術師様といえば、一人しかいない。
出世欲や自己顕示欲が強く、自己主張も強くて、あちこちでアピールしまくっていると噂のダイアナ嬢だ。
マリーアンもソニアも、フォセル嬢の指差す方向に視線を向け、ハァッと息を吐いた。
「「まぁ、あの傲慢魔術師様は仕方ありませんわね」」
二人の声が天幕の中でだけ響く。
うん。ご令嬢、怖っ。
「なんか、カオス?」
ただならぬ雰囲気の中、私はひょっこりと天幕に戻ってきた。
「エルシア! いきなり消えて! いったい、どこ行ってたのよぅ?」
「犬がいたので」
そう。
マリーアンとソニアとフォセル嬢が天幕の中に座り込んでいたとき、天幕の外に、犬が現れたのだ。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッ」
天幕の外は来たときより、さらに雲が黒く分厚くなっていて、ゴロゴロと低い音まで聞こえている。
雨に濡れれば、犬だって寒いだろうし、お腹も空いているかもしれない。
ちょっとした親切心とお節介で、私は二匹目の犬も無事に捕獲したというわけで。
「その犬は無関係な野犬よぅ!」
「あー、そうですか?」
「そうですか、じゃ、ないわよぅ!」
探していた迷い犬かどうかは、どうでも良かったのだ。
「とにかく、いろいろと失礼しました」
私が二匹目の犬を膝に乗せて、お茶会の席に戻ると、フォセル嬢は盛大に謝罪を始めた。
「それと、私はヴェルフェルム先輩の後輩で、ただのファンというだけなので。普通に仲良く接していただけると嬉しいです」
ワフ~ン?
フォセル嬢の言い訳じみた言葉を、聞き返すように鳴く犬。
迷い犬は真っ白なフワフワだったけど、二匹目は灰色の毛並みで貫禄がある。平たく言うと、犬のくせになんか偉そう。
「まぁ、気をつけてよねぇ。困るのは自分なんだから~」
「はい。しっかりと頭の中に叩き込んでおきます」
そんな偉そうな二匹目の犬を膝に乗せ、私は手でフワフワした毛並みをぐりぐりと撫で回していた。
話がとぎれたところで、今度は私がフォセル嬢に気になっていたことを質問する。
「それで、今度、クラウドと二人でご飯食べに行くんでしょ?」
ゲホゲホゲホ。
今度はオルドーがむせる。
「エルシア、ここで爆発させなくても良くないか?」
「他で聞くチャンスないし」
オルドーに対して、しれっと答える私。
「はい。今度、ヴェルフェルム先輩といっしょにご飯を食べに行くのは確かですけど、だからって、個人的にどうにかなりたいわけじゃありませんから!」
「そういうのを、デートって言うんだよね?」
「デートじゃありませんよ!」
「え? 違うの? どう違うの?」
こんな恋バナっぽい話を聞くチャンスなんて滅多にない。私は追及の手を緩めなかった。
「えっと、お互い好きあってない、というか。私はヴェルフェルム先輩のファンだし、ヴェルフェルム先輩は私の先輩ってだけだし」
「何気に、仲良いアピールしてますわよねぇ」
「その上、特別な関係もアピールしてますわね」
フォセル嬢の返事に、マリーアンとソニアも突っ込む。
「えっと、本当に、特別な関係なわけじゃないですって」
最初はそんなことを言ってて、実は好きでしたとかつき合ってましたとなって、気がついたら結婚しているのが、小説の定石。
私はようやく恋バナらしき物が聞ける嬉しさと、訳もなくチクッとする胸の痛みを同時に感じる。
「クラウドって、ふだん、女の子と二人で食事なんていかないけど?」
「え? そうなんですか?」
首を傾げるフォセル嬢。
けっきょく、この話はここで終わりとなって、フォセル嬢はアルゲン大公子の天幕に戻っていった。
フォセル嬢が戻っていったのに、ソニアもマリーアンも戻る気配がない。
「エルシア、なんとも思いませんの?」
「そうですわぁ、ルベラス嬢」
それどころか、心当たりのないことを質問される。
なんとも思わないのかって、聞かれても。
「ついに、クラウドの恋バナが聞ける、とか?」
「「はぁぁぁぁぁ」」
私以外の全員がため息をついた。
じぃやさんまでため息ついているって、どういうことよ。
私は膝の上の犬をぐりぐりと撫で回す。
「なぜそこで、みんなしてため息?」
私の問いかけに、今度は一斉に喋り出す。
「ルベラス嬢って鈍感なのかしらぁ。それともわざと?」
「ヴェルフェルム卿も本当にかわいそうですわね」
「もっとかわいそうなのは、フェリクス君よぅ。エルシア、フェリクス君の方は故意に拒絶してるし!」
私は何にも心当たりがないのに、言いたい放題の三人。
クラウドやフェリクス副隊長に、私、なんかやったっけ?
うーんと考えても出てこないので、とりあえず、自分の意見を言った。
「私、他人の恋バナを聞くのが夢なので」
「エルシア、夢の内容が低俗すぎるぞ」
「同僚の恋バナならなおさら。からかいがいがあるんで」
私が正直なところを言うと、
「エルシア、それだから恋バナと無縁なのよぅ」
なぜか、思いっきり責められた。
そちらの黒髪の方は、優しい感じで質問に答えてくれたのに」
ゲホゲホゲホ。
お菓子を食べている途中で、話を振られて、お菓子がのどに詰まる。オルドーからお茶を受け取りゴクゴク流し込んで、ようやく生き返った。
気を取り直してもう一口。
とそこへ、聞き覚えのある声。
「あらぁ、ルベラス嬢はあなたの質問に一切答えておりませんわぁ」
ゲホゲホゲホ。
うん、また詰まった。
「キャァ」
「こらこらこらー、どこから出たのよぅ」
フォセル嬢やユリンナ先輩もビックリした様子。
突然、現れたのはアルゲン大公子の天幕へと消えていったはずのマリーアン。
マリーアンはお菓子を詰まらせる私や、ビックリ顔のフォセル嬢とユリンナ先輩を、にた~っとした笑顔を張り付けた表情で眺める。
「あらぁ、ごめんなさい~ 大声で叫んでいるレディがいたもので、珍しくて~」
「誰のことよぅ!」
ユリンナ先輩をからかうと、マリーアンは手にした扇子をパッと広げると、口元を隠した。
立って会話を続けるのかと思ったら、普通にスツールに座り込む。
じぃやさん、相手にしなくてもいいのにとも思ったけど、じぃやさんもその道のプロ(?)
手際よく、マリーアンとフォセル嬢ともう一人の令嬢に席を作って座らせていた。
「それより、フォセル嬢。ルベラス嬢は相づちは打っていましたけど、返事はしておりませんわ~ 逆に質問で返してましたわよ~」
フォセル嬢の右隣に座るマリーアンがネチネチフワフワと喋り出すと、
「エルシアは、ああ見えて意外としっかりしていますのよ。
後から、ああ言ったこう言ったと、言いがかりをつけられるような受け答えは、一切ありませんわ」
左隣のソニアが冷たく意見を言い放つ。
て。ソニア、いつの間に?
ていうか、いたんだ、ソニアも。
私は天幕から少し離れたところで、令嬢三人を見ていた。
うん、ちょっと気になることがあって、天幕の外に出てきたんだけどね。
私はじぃやさんが座らせた三人目の令嬢、ソニアラート・カエルレウス公爵令嬢に視線を向ける。
ソニアとマリーアン。この二人、仲が良い悪い以前に接点があまりないような気がした。
まぁ、どちらも高位貴族のご令嬢。接点がまるでないわけはないんだろうけど。
「あらぁ、カエルレウス嬢。あなたと意見が合うなんてぇ」
「あら。意見が合ったのではなく、あなたもわたくしも、目も耳も頭も悪くないというところでしょう」
二人ともカップを片手に、扇子をもう片方の手にして、ホホホと笑っている。
実際、笑い声が聞こえるだけで、口元は扇子に隠れて見えないし、目は笑っていない。怖い。怖いな、あれ。
この二人を見て言ってはないんだろうけど、どう聞いても誤解されるようなことを、フォセル嬢がポロッと口にしてしまう。
「はぁ。なんか、騎士団はルールがうるさいし、大公子殿下のお茶会はギスギスしたお嬢さまばがりだし。
私って場違いっぽいなぁ」
「あらぁ?」「はぁぁ?」
フォセル嬢のつぶやきを二人が聞き咎める。ほら、誤解されたよ。
「あ、お二人がギスギスしているんじゃなくて、あそこにいる人たちが。とくにあの王宮魔術師団所属の魔術師様が」
フォセル嬢は二人に睨まれ、慌ててアルゲン大公子の天幕を指差した。どうやら、空気を読むことは出来るらしい。
指差す方向にいる王宮魔術師団所属のみ魔術師様といえば、一人しかいない。
出世欲や自己顕示欲が強く、自己主張も強くて、あちこちでアピールしまくっていると噂のダイアナ嬢だ。
マリーアンもソニアも、フォセル嬢の指差す方向に視線を向け、ハァッと息を吐いた。
「「まぁ、あの傲慢魔術師様は仕方ありませんわね」」
二人の声が天幕の中でだけ響く。
うん。ご令嬢、怖っ。
「なんか、カオス?」
ただならぬ雰囲気の中、私はひょっこりと天幕に戻ってきた。
「エルシア! いきなり消えて! いったい、どこ行ってたのよぅ?」
「犬がいたので」
そう。
マリーアンとソニアとフォセル嬢が天幕の中に座り込んでいたとき、天幕の外に、犬が現れたのだ。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッ」
天幕の外は来たときより、さらに雲が黒く分厚くなっていて、ゴロゴロと低い音まで聞こえている。
雨に濡れれば、犬だって寒いだろうし、お腹も空いているかもしれない。
ちょっとした親切心とお節介で、私は二匹目の犬も無事に捕獲したというわけで。
「その犬は無関係な野犬よぅ!」
「あー、そうですか?」
「そうですか、じゃ、ないわよぅ!」
探していた迷い犬かどうかは、どうでも良かったのだ。
「とにかく、いろいろと失礼しました」
私が二匹目の犬を膝に乗せて、お茶会の席に戻ると、フォセル嬢は盛大に謝罪を始めた。
「それと、私はヴェルフェルム先輩の後輩で、ただのファンというだけなので。普通に仲良く接していただけると嬉しいです」
ワフ~ン?
フォセル嬢の言い訳じみた言葉を、聞き返すように鳴く犬。
迷い犬は真っ白なフワフワだったけど、二匹目は灰色の毛並みで貫禄がある。平たく言うと、犬のくせになんか偉そう。
「まぁ、気をつけてよねぇ。困るのは自分なんだから~」
「はい。しっかりと頭の中に叩き込んでおきます」
そんな偉そうな二匹目の犬を膝に乗せ、私は手でフワフワした毛並みをぐりぐりと撫で回していた。
話がとぎれたところで、今度は私がフォセル嬢に気になっていたことを質問する。
「それで、今度、クラウドと二人でご飯食べに行くんでしょ?」
ゲホゲホゲホ。
今度はオルドーがむせる。
「エルシア、ここで爆発させなくても良くないか?」
「他で聞くチャンスないし」
オルドーに対して、しれっと答える私。
「はい。今度、ヴェルフェルム先輩といっしょにご飯を食べに行くのは確かですけど、だからって、個人的にどうにかなりたいわけじゃありませんから!」
「そういうのを、デートって言うんだよね?」
「デートじゃありませんよ!」
「え? 違うの? どう違うの?」
こんな恋バナっぽい話を聞くチャンスなんて滅多にない。私は追及の手を緩めなかった。
「えっと、お互い好きあってない、というか。私はヴェルフェルム先輩のファンだし、ヴェルフェルム先輩は私の先輩ってだけだし」
「何気に、仲良いアピールしてますわよねぇ」
「その上、特別な関係もアピールしてますわね」
フォセル嬢の返事に、マリーアンとソニアも突っ込む。
「えっと、本当に、特別な関係なわけじゃないですって」
最初はそんなことを言ってて、実は好きでしたとかつき合ってましたとなって、気がついたら結婚しているのが、小説の定石。
私はようやく恋バナらしき物が聞ける嬉しさと、訳もなくチクッとする胸の痛みを同時に感じる。
「クラウドって、ふだん、女の子と二人で食事なんていかないけど?」
「え? そうなんですか?」
首を傾げるフォセル嬢。
けっきょく、この話はここで終わりとなって、フォセル嬢はアルゲン大公子の天幕に戻っていった。
フォセル嬢が戻っていったのに、ソニアもマリーアンも戻る気配がない。
「エルシア、なんとも思いませんの?」
「そうですわぁ、ルベラス嬢」
それどころか、心当たりのないことを質問される。
なんとも思わないのかって、聞かれても。
「ついに、クラウドの恋バナが聞ける、とか?」
「「はぁぁぁぁぁ」」
私以外の全員がため息をついた。
じぃやさんまでため息ついているって、どういうことよ。
私は膝の上の犬をぐりぐりと撫で回す。
「なぜそこで、みんなしてため息?」
私の問いかけに、今度は一斉に喋り出す。
「ルベラス嬢って鈍感なのかしらぁ。それともわざと?」
「ヴェルフェルム卿も本当にかわいそうですわね」
「もっとかわいそうなのは、フェリクス君よぅ。エルシア、フェリクス君の方は故意に拒絶してるし!」
私は何にも心当たりがないのに、言いたい放題の三人。
クラウドやフェリクス副隊長に、私、なんかやったっけ?
うーんと考えても出てこないので、とりあえず、自分の意見を言った。
「私、他人の恋バナを聞くのが夢なので」
「エルシア、夢の内容が低俗すぎるぞ」
「同僚の恋バナならなおさら。からかいがいがあるんで」
私が正直なところを言うと、
「エルシア、それだから恋バナと無縁なのよぅ」
なぜか、思いっきり責められた。
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