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3 王子殿下の魔剣編
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けっきょく、私たち全員、カス王子の話を強制的に聞かされてしまう形となった。
「というわけで、来る剣術大会に向けて、噂の魔剣を手に入れようと思ってね。あちこち探しているんだ」
カス王子の話によると、ある日、伝説の魔剣情報を偶然にも耳にしたのだとか。
剣術大会の予行演習でもしようと思っていた矢先の話で、こんなにタイミング良く魔剣情報を手に入れるとは、天啓に違いないと思ったそうだ。
うん。絶対に天啓ではないだろうけど。
と、ここまでの大した話でもない話を身振りを交え、加えてカッコイイポーズを挟み挟み行う。無駄に話が長い。
五分で終わるような内容の話を三十分もかけて話されると、自然と表情がげんなりしてくるものだと、改めて感じた。
なぜなら、クラウド信奉者の研修生たちも、げんなりとした顔をしていたから。
下手くそな演劇を強制的に見せられている。そんな状態だな。
第二王子の御前だからと張り切っていた表情が、どんどん抜け落ちていく様は、見ていておもしろいものがあったけど。
カス王子の話は同時に私の体力と気力も奪ってくれて。見学会ですでに飽き飽きしていた私にとっては、致命的なものとなったのだ。
「ふぁぁぁ」
あぁ、欠伸が止まらない。
良かった、クラウドが目の前に立ちふさがるようにしてくれていて。
しかし、カス王子の話にも気になる内容があった。
私は、目の前の背中に向かって話しかける。クラウドの背中は、けっこう広くてがっしりしていた。
「ねぇ、クラウド。剣術大会って?」
「エルシア、お前も聞いて知ってるだろ」
「知ってるけど、その剣術大会と、カス、じゃなくて第二王子殿下の言ってる剣術大会って、同じもの?」
「たぶんな。闘技会とは違って、剣術大会はオープン参加でオープン観戦の大会だ。誰でも出られるし誰でも見られる。参加部門も多い。学院在籍中でも出られるんだ」
クラウドも学院在籍中から出場していたせいなのか、詳しく教えてくれる。
私たちはそのまま背中越しに会話を続けた。
「王族も出ていいの?」
「もちろんだ。オープン参加だからな。騎士は騎士部門しか出られないけど、殿下は騎士ではないから、一般の年齢別部門で出られるはずだ」
「魔剣、使ってもいいの?」
「問題ない」
クラウドはきっぱりと答える。
魔剣ありか。
魔剣とは魔法の剣、つまり魔法の杖の剣バージョン。剣の形をして剣として使うことが出来る魔導具だ。
杖同様、自我が生まれると『剣精』として顕現することも出来るようになる。
ここで注意してもらいたいのが、魔剣の特徴。魔剣は魔導具、つまり魔法を使うための道具。
自我が生まれ剣精となるまでは、魔剣自体に魔法が込められたり、魔剣自体が魔法を使ったりはしない。
そもそも、剣精がいるような名のある魔剣は、名のある杖同様、主を選ぶ。
カス王子は、見つけたら自分の魔剣、と考えているようだけど、そう簡単にはいかないだろう。
「クラウド、魔剣、持ってる?」
「持ってるわけないだろ」
ちょっとだけ、イラッとした返事が返ってきた。
「そりゃ、俺だって。持てるものなら魔剣の主になってみたいけどな」
なんだ、憧れか。しかも、諦めた雰囲気を漂わせるような言い方。魔剣で何かあったんだろうか。
魔剣と言ってもピンからキリまで、様々なものがあるから、探して、運が良ければ、自分の魔剣に出会えるかもしれないのに。
「殿下は、魔剣があれば優勝!、だから魔剣を見つけたら優勝!、みたいなこと言ってるけど」
私はイラッとした様子のクラウドをなだめるように、話を聞かせた。
「魔剣が魔法の杖と同じような存在なら、見つけただけじゃダメだと思う。
そもそも、本当の魔剣なら、主が魔剣を見つけるんじゃなくて、魔剣が主を見つけるものだし」
だから、魔剣士や魔導騎士は、魔剣に選んでもらえるような実力を身につけるべく、日夜、鍛錬に励むわけだ。
それに比べて、カス王子は随分と軽く楽観的だと思う。訓練や鍛錬という言葉とは縁がなさそうだし。
「カス、じゃなくて第二王子殿下の話、クラウドはどう思う?」
私の問いかけに、クラウドは曖昧に答えた。相変わらず背中を向けたままなので、表情はよく分からない。
「どう思うって言われても。俺も魔剣持ちじゃないからな。魔剣のことは正直なところ、よく分からない」
まぁ、そうだろうね。
クラウドは魔力を持っているので、魔剣を扱うことが出来る。魔剣持ちになって、訓練すれば魔剣士にはなれるだろう。
魔導騎士は、攻撃魔法を繰り出す騎士なので、魔力の扱いが下手なクラウドではちょっとハードルは高そうな気がする。
どちらにしろ、今のままではどっちつかずになってしまうので、騎士として訓練に励んだ方が実力は伸びるはずだ。
クラウド自身もそう思っているから、魔剣に憧れはあっても、無理に手を伸ばさず、騎士として地味に訓練に集中しているという。
クラウドはさらに言葉を続けた。
「魔剣のことは分からないが、剣術大会のことは分かる。鍛錬なくして優勝はないってことだ。
鍛錬しないでも魔剣を見つければ優勝だなんて、世の中そんなに甘くはないさ」
そう言うクラウドの言葉は、とても力強いものだった。
「というわけで、来る剣術大会に向けて、噂の魔剣を手に入れようと思ってね。あちこち探しているんだ」
カス王子の話によると、ある日、伝説の魔剣情報を偶然にも耳にしたのだとか。
剣術大会の予行演習でもしようと思っていた矢先の話で、こんなにタイミング良く魔剣情報を手に入れるとは、天啓に違いないと思ったそうだ。
うん。絶対に天啓ではないだろうけど。
と、ここまでの大した話でもない話を身振りを交え、加えてカッコイイポーズを挟み挟み行う。無駄に話が長い。
五分で終わるような内容の話を三十分もかけて話されると、自然と表情がげんなりしてくるものだと、改めて感じた。
なぜなら、クラウド信奉者の研修生たちも、げんなりとした顔をしていたから。
下手くそな演劇を強制的に見せられている。そんな状態だな。
第二王子の御前だからと張り切っていた表情が、どんどん抜け落ちていく様は、見ていておもしろいものがあったけど。
カス王子の話は同時に私の体力と気力も奪ってくれて。見学会ですでに飽き飽きしていた私にとっては、致命的なものとなったのだ。
「ふぁぁぁ」
あぁ、欠伸が止まらない。
良かった、クラウドが目の前に立ちふさがるようにしてくれていて。
しかし、カス王子の話にも気になる内容があった。
私は、目の前の背中に向かって話しかける。クラウドの背中は、けっこう広くてがっしりしていた。
「ねぇ、クラウド。剣術大会って?」
「エルシア、お前も聞いて知ってるだろ」
「知ってるけど、その剣術大会と、カス、じゃなくて第二王子殿下の言ってる剣術大会って、同じもの?」
「たぶんな。闘技会とは違って、剣術大会はオープン参加でオープン観戦の大会だ。誰でも出られるし誰でも見られる。参加部門も多い。学院在籍中でも出られるんだ」
クラウドも学院在籍中から出場していたせいなのか、詳しく教えてくれる。
私たちはそのまま背中越しに会話を続けた。
「王族も出ていいの?」
「もちろんだ。オープン参加だからな。騎士は騎士部門しか出られないけど、殿下は騎士ではないから、一般の年齢別部門で出られるはずだ」
「魔剣、使ってもいいの?」
「問題ない」
クラウドはきっぱりと答える。
魔剣ありか。
魔剣とは魔法の剣、つまり魔法の杖の剣バージョン。剣の形をして剣として使うことが出来る魔導具だ。
杖同様、自我が生まれると『剣精』として顕現することも出来るようになる。
ここで注意してもらいたいのが、魔剣の特徴。魔剣は魔導具、つまり魔法を使うための道具。
自我が生まれ剣精となるまでは、魔剣自体に魔法が込められたり、魔剣自体が魔法を使ったりはしない。
そもそも、剣精がいるような名のある魔剣は、名のある杖同様、主を選ぶ。
カス王子は、見つけたら自分の魔剣、と考えているようだけど、そう簡単にはいかないだろう。
「クラウド、魔剣、持ってる?」
「持ってるわけないだろ」
ちょっとだけ、イラッとした返事が返ってきた。
「そりゃ、俺だって。持てるものなら魔剣の主になってみたいけどな」
なんだ、憧れか。しかも、諦めた雰囲気を漂わせるような言い方。魔剣で何かあったんだろうか。
魔剣と言ってもピンからキリまで、様々なものがあるから、探して、運が良ければ、自分の魔剣に出会えるかもしれないのに。
「殿下は、魔剣があれば優勝!、だから魔剣を見つけたら優勝!、みたいなこと言ってるけど」
私はイラッとした様子のクラウドをなだめるように、話を聞かせた。
「魔剣が魔法の杖と同じような存在なら、見つけただけじゃダメだと思う。
そもそも、本当の魔剣なら、主が魔剣を見つけるんじゃなくて、魔剣が主を見つけるものだし」
だから、魔剣士や魔導騎士は、魔剣に選んでもらえるような実力を身につけるべく、日夜、鍛錬に励むわけだ。
それに比べて、カス王子は随分と軽く楽観的だと思う。訓練や鍛錬という言葉とは縁がなさそうだし。
「カス、じゃなくて第二王子殿下の話、クラウドはどう思う?」
私の問いかけに、クラウドは曖昧に答えた。相変わらず背中を向けたままなので、表情はよく分からない。
「どう思うって言われても。俺も魔剣持ちじゃないからな。魔剣のことは正直なところ、よく分からない」
まぁ、そうだろうね。
クラウドは魔力を持っているので、魔剣を扱うことが出来る。魔剣持ちになって、訓練すれば魔剣士にはなれるだろう。
魔導騎士は、攻撃魔法を繰り出す騎士なので、魔力の扱いが下手なクラウドではちょっとハードルは高そうな気がする。
どちらにしろ、今のままではどっちつかずになってしまうので、騎士として訓練に励んだ方が実力は伸びるはずだ。
クラウド自身もそう思っているから、魔剣に憧れはあっても、無理に手を伸ばさず、騎士として地味に訓練に集中しているという。
クラウドはさらに言葉を続けた。
「魔剣のことは分からないが、剣術大会のことは分かる。鍛錬なくして優勝はないってことだ。
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