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1 王女殿下の魔猫編
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三聖の展示室の前にある広場は、本来なら、見学者たちの集合場所だ。
飲食禁止などの注意と罰則が書いてあるナイスな看板がある他は、とくに目立ったところのない普通の広場に見える。
ここはパンパンと手を叩くと響くし、声を上げてもやたらと響く。
これは、周りが建物に囲まれていて、音がこもる仕組みになっているせいなんだと思う。
そして、こもるのは、音だけではなかった。
「混沌としてるわね」
標的の魔猫だけでなく、ただの猫まで集まって、広場にこもっていたのだ。
にゃー
にゃにゃー
あちこちから聞こえる猫の大合唱。
かわいい。かわいすぎる。なんて、感動している場合ではないのに、ついつい、目が猫を追ってしまった。
黒い毛並みに金色の瞳。
なんか、私と同じ組み合わせで嫌なんだけど。そんな猫が一匹。
他はすべて黒から茶色の毛並みに黒から金茶の瞳。
にゃー
騎士たちは、あちこち走り回る猫を追いかけ追い回し追い立てて、捕まえようと必死だ。
にゃにゃー
騎士が追いかけると、猫が鳴く。
「どう見ても、大の大人が、猫と戯れているようにしか見えませんわ」
ソニアが辛口な感想を述べる。身も蓋もない。
猫たちは、にゃーと鳴きながら、あちこちに散らばり、止まったと思ったら逃げ、逃げていたと思ったら寝そべり、自由気ままに歩き回る。
騎士たちの必死さが逆におかしさを呼ぶ。私には、猫と戯れているというより、猫に遊ばれている感じに見えた。
そのうち慣れてきたのか、とうとう、黒毛金眼の猫に騎士の手がかがり始める。
すると、
「向こうに捕まえさせるな」
「捕まるくらいなら逃がせ」
第一と第三の騎士たちがそれぞれを邪魔し始めたのだ。
えー、この猫、捕まえないと終わらないのに。
「仲が悪過ぎますわね。互いに足を引っ張り合って、どうなさるつもりかしら」
まったくその通りだわ、ソニア。
思わず、じとっと騎士たちを睨んでしまった。きっと、目先のことしか見えてないんだろうけど。
「それで、エルシアはこれからどうなさるつもり?」
「おもしろそうだから、しばらく高みの見物?」
呆れ顔で腕を組み、猫と騎士を眺めるソニアに対して、私は黄色い旗がついた棒を取り出して、旗の部分を手にパンパンと叩きつけた。この音も実によく響く。
パンパンという音に、猫たちがピクッと反応して、さっと逃げ出す。
慌てて追いかける騎士。
猫たちが入り混じって、どれが標的かあっという間に分からなくなった。
それでも少しすると、また、騎士たちは黒毛金眼の猫を見つけて追いかけ回す。
そして、また、私はパンパンと音を鳴らした。
隊長が睨もうが、副隊長が嫌な顔をしようが、私の知った事じゃない。
「捕まえる準備も抜かりはないけどね」
猫と騎士のじゃれ合いはまだまだ続く。
ちょっと離れたところから、猫に翻弄される騎士を見ているのも、とてもおもしろい。
「それで最後に、美味しいところを攫っていくつもりですのね」
私の言葉の意味を正確に理解して、ソニアがひっそりと笑みを浮かべた。
「エルシア。お前も手伝ってくれ」
「カエルレウス嬢、魔法で足止めをしろ」
なかなか標的の魔猫を捕まえられず、業を煮やした隊長たちが、魔術師の私たちに指示を出してきた。
「今、準備中だから」
「準備? 捕獲準備なんてしてたのか?」
してたわ!
憮然として言い返してくるケニス隊長に、私は心の中で食ってかかった。
魔力の流れが見えない人には分からないだろうけど。私だって、疲れずに楽に捕獲するための準備は、しっかり進めている。
私の隣では、ソニアがヴォードフェルム隊長に食ってかかっていた。
「協力して捕獲するという考えはございませんの?」
「なぜ、第一騎士団が第三騎士団なんぞに、合わせてやらねばならんのだ」
合わせて。
少なくとも、この中で唯一、魔猫を捕獲できる私には合わせて。
憮然としてソニアに言い返すヴォードフェルム隊長に対しても、私は心の中で食ってかかった。
と、そこへ。
「危ない!」
私たちの方へ飛んできた石を、どこからか現れたフェリクス副隊長が剣ではじく。
どうやら、騎士の一部が魔猫に石を投げたようだ。
いいのか、それ。
その石を魔猫が尻尾ではたき返して、あちこちに飛び散らしたってところかな。
魔猫が怒って、しゃー、と鳴いている。
尻尾も振り回して、バンバンと地面に叩きつけていた。
「気をつけろ! カエルレウス嬢はレディだぞ。あと、隣の生意気女も一応な」
あまりにも周りに害が及ぶためか、ヴォードフェルム隊長が自分の隊の騎士に注意を促す。
言い方。もっとあるでしょうに。
「あいつ、いちいちムカつくんだけど」
「気にするな、エルシア。無視しろ」
フェリクス副隊長が声をかけてくれたけど、私のムカつきは当分、収まりそうもなかった。
それから、騎士たちは猫との追いかけっこを続けていたが、苦戦する一方。
「あちこちチョロチョロとすばしっこい」
「猫相手にざまあないな」
「そっちだって。お互い様だろう」
「王女殿下の猫だ。慎重に捕獲しろ」
張り合う声にも疲れが滲んできた。
そしてそれは、騎士だけでなく、猫たちも同じだった。
うん、そろそろかな。
機を見て、私は騎士たちに声をかけた。
「それ、ただの猫じゃないわよ」
「冗談を言うな、生意気女」
私の声に真っ先に反応したのは、ケニス隊長やフェリクス副隊長ではなく、ましてや第三騎士団の誰でもなく、ヴォードフェルム隊長その人だった。
無視されるよりは、何かしら返事をしてくれる方がいいのだろうけど。
頭ごなしに、冗談だと決めつけられるのは気分が悪い。しかも、ずっと生意気女呼ばわり。
あれ? そういえば。
ふと、ヴォードフェルム隊長に、自己紹介をしていないことに気がつく。いまさらだけど。
いやだって、ケニス隊長もフェリクス副隊長も、紹介してくれなかったし。
「あのねぇ、私はエルシア・ルベラスだから! ちゃんとした騎士なら、きちんと名前で呼びなさいよ!」
私は大声で自分の名前を叫ぶ。
これでよし。
しばし相手の様子を見てみようと、ヴォードフェルム隊長を探すと、いた。
広場の中心あたり。騎士たちを指揮して、猫を一匹一匹、捕獲していた。地道だけど確実な方法を選んだらしい。
ケニス隊長もそばにいるところを見ると、ここに至ってようやく、協力することを覚えたようだ。
そうそう、それでヴォードフェルム隊長はどんな様子かな。
て。顔が。
「……………………ル、ルベラス嬢」
しかも、声も低い。
「嘘だろ、兄貴もかよ」
弟のフェリクス副隊長ですら驚く始末。
「いや、そんなに真っ赤になって怒らなくても」
そう。ぱっと見、まるでトマトのよう。
ヴォードフェルム隊長は、顔や耳だけでなく、首筋まで真っ赤になっていた。
目つきは鋭く、口はギュッと食いしばって、表情がもの凄く堅い。
怖っ。怖すぎる。
「いや、あれは怒っているんじゃなくて。恥ずかしがってるというか、緊張しているというか。
まぁ、エルシアは分からなくて良いか」
「えー、私、何もしてないよ? 名前で呼べって言っただけだよ?」
「あー、まぁ、大丈夫だ。エルシアは悪くない。気にするな」
フェリクス副隊長に慰められ、私はちょっとだけ、気を取り直したのだった。
あんな怖い顔されるくらいなら、生意気女呼びで我慢しておけば良かったかも。
飲食禁止などの注意と罰則が書いてあるナイスな看板がある他は、とくに目立ったところのない普通の広場に見える。
ここはパンパンと手を叩くと響くし、声を上げてもやたらと響く。
これは、周りが建物に囲まれていて、音がこもる仕組みになっているせいなんだと思う。
そして、こもるのは、音だけではなかった。
「混沌としてるわね」
標的の魔猫だけでなく、ただの猫まで集まって、広場にこもっていたのだ。
にゃー
にゃにゃー
あちこちから聞こえる猫の大合唱。
かわいい。かわいすぎる。なんて、感動している場合ではないのに、ついつい、目が猫を追ってしまった。
黒い毛並みに金色の瞳。
なんか、私と同じ組み合わせで嫌なんだけど。そんな猫が一匹。
他はすべて黒から茶色の毛並みに黒から金茶の瞳。
にゃー
騎士たちは、あちこち走り回る猫を追いかけ追い回し追い立てて、捕まえようと必死だ。
にゃにゃー
騎士が追いかけると、猫が鳴く。
「どう見ても、大の大人が、猫と戯れているようにしか見えませんわ」
ソニアが辛口な感想を述べる。身も蓋もない。
猫たちは、にゃーと鳴きながら、あちこちに散らばり、止まったと思ったら逃げ、逃げていたと思ったら寝そべり、自由気ままに歩き回る。
騎士たちの必死さが逆におかしさを呼ぶ。私には、猫と戯れているというより、猫に遊ばれている感じに見えた。
そのうち慣れてきたのか、とうとう、黒毛金眼の猫に騎士の手がかがり始める。
すると、
「向こうに捕まえさせるな」
「捕まるくらいなら逃がせ」
第一と第三の騎士たちがそれぞれを邪魔し始めたのだ。
えー、この猫、捕まえないと終わらないのに。
「仲が悪過ぎますわね。互いに足を引っ張り合って、どうなさるつもりかしら」
まったくその通りだわ、ソニア。
思わず、じとっと騎士たちを睨んでしまった。きっと、目先のことしか見えてないんだろうけど。
「それで、エルシアはこれからどうなさるつもり?」
「おもしろそうだから、しばらく高みの見物?」
呆れ顔で腕を組み、猫と騎士を眺めるソニアに対して、私は黄色い旗がついた棒を取り出して、旗の部分を手にパンパンと叩きつけた。この音も実によく響く。
パンパンという音に、猫たちがピクッと反応して、さっと逃げ出す。
慌てて追いかける騎士。
猫たちが入り混じって、どれが標的かあっという間に分からなくなった。
それでも少しすると、また、騎士たちは黒毛金眼の猫を見つけて追いかけ回す。
そして、また、私はパンパンと音を鳴らした。
隊長が睨もうが、副隊長が嫌な顔をしようが、私の知った事じゃない。
「捕まえる準備も抜かりはないけどね」
猫と騎士のじゃれ合いはまだまだ続く。
ちょっと離れたところから、猫に翻弄される騎士を見ているのも、とてもおもしろい。
「それで最後に、美味しいところを攫っていくつもりですのね」
私の言葉の意味を正確に理解して、ソニアがひっそりと笑みを浮かべた。
「エルシア。お前も手伝ってくれ」
「カエルレウス嬢、魔法で足止めをしろ」
なかなか標的の魔猫を捕まえられず、業を煮やした隊長たちが、魔術師の私たちに指示を出してきた。
「今、準備中だから」
「準備? 捕獲準備なんてしてたのか?」
してたわ!
憮然として言い返してくるケニス隊長に、私は心の中で食ってかかった。
魔力の流れが見えない人には分からないだろうけど。私だって、疲れずに楽に捕獲するための準備は、しっかり進めている。
私の隣では、ソニアがヴォードフェルム隊長に食ってかかっていた。
「協力して捕獲するという考えはございませんの?」
「なぜ、第一騎士団が第三騎士団なんぞに、合わせてやらねばならんのだ」
合わせて。
少なくとも、この中で唯一、魔猫を捕獲できる私には合わせて。
憮然としてソニアに言い返すヴォードフェルム隊長に対しても、私は心の中で食ってかかった。
と、そこへ。
「危ない!」
私たちの方へ飛んできた石を、どこからか現れたフェリクス副隊長が剣ではじく。
どうやら、騎士の一部が魔猫に石を投げたようだ。
いいのか、それ。
その石を魔猫が尻尾ではたき返して、あちこちに飛び散らしたってところかな。
魔猫が怒って、しゃー、と鳴いている。
尻尾も振り回して、バンバンと地面に叩きつけていた。
「気をつけろ! カエルレウス嬢はレディだぞ。あと、隣の生意気女も一応な」
あまりにも周りに害が及ぶためか、ヴォードフェルム隊長が自分の隊の騎士に注意を促す。
言い方。もっとあるでしょうに。
「あいつ、いちいちムカつくんだけど」
「気にするな、エルシア。無視しろ」
フェリクス副隊長が声をかけてくれたけど、私のムカつきは当分、収まりそうもなかった。
それから、騎士たちは猫との追いかけっこを続けていたが、苦戦する一方。
「あちこちチョロチョロとすばしっこい」
「猫相手にざまあないな」
「そっちだって。お互い様だろう」
「王女殿下の猫だ。慎重に捕獲しろ」
張り合う声にも疲れが滲んできた。
そしてそれは、騎士だけでなく、猫たちも同じだった。
うん、そろそろかな。
機を見て、私は騎士たちに声をかけた。
「それ、ただの猫じゃないわよ」
「冗談を言うな、生意気女」
私の声に真っ先に反応したのは、ケニス隊長やフェリクス副隊長ではなく、ましてや第三騎士団の誰でもなく、ヴォードフェルム隊長その人だった。
無視されるよりは、何かしら返事をしてくれる方がいいのだろうけど。
頭ごなしに、冗談だと決めつけられるのは気分が悪い。しかも、ずっと生意気女呼ばわり。
あれ? そういえば。
ふと、ヴォードフェルム隊長に、自己紹介をしていないことに気がつく。いまさらだけど。
いやだって、ケニス隊長もフェリクス副隊長も、紹介してくれなかったし。
「あのねぇ、私はエルシア・ルベラスだから! ちゃんとした騎士なら、きちんと名前で呼びなさいよ!」
私は大声で自分の名前を叫ぶ。
これでよし。
しばし相手の様子を見てみようと、ヴォードフェルム隊長を探すと、いた。
広場の中心あたり。騎士たちを指揮して、猫を一匹一匹、捕獲していた。地道だけど確実な方法を選んだらしい。
ケニス隊長もそばにいるところを見ると、ここに至ってようやく、協力することを覚えたようだ。
そうそう、それでヴォードフェルム隊長はどんな様子かな。
て。顔が。
「……………………ル、ルベラス嬢」
しかも、声も低い。
「嘘だろ、兄貴もかよ」
弟のフェリクス副隊長ですら驚く始末。
「いや、そんなに真っ赤になって怒らなくても」
そう。ぱっと見、まるでトマトのよう。
ヴォードフェルム隊長は、顔や耳だけでなく、首筋まで真っ赤になっていた。
目つきは鋭く、口はギュッと食いしばって、表情がもの凄く堅い。
怖っ。怖すぎる。
「いや、あれは怒っているんじゃなくて。恥ずかしがってるというか、緊張しているというか。
まぁ、エルシアは分からなくて良いか」
「えー、私、何もしてないよ? 名前で呼べって言っただけだよ?」
「あー、まぁ、大丈夫だ。エルシアは悪くない。気にするな」
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