運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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1 王女殿下の魔猫編

2-3

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「ダイモス魔術師殿もそう言っていたな」

「さすがはベテランですわ。適材を一目で見抜くとは」

 カニス隊長とソニアが和やかに、私の知らないところでの話をしているところへ、チラチラと私を見ながら不機嫌そうに、ヴォードフェルム隊長が割って入る。

「こんな使えなさそうなヤツなど放っておいて、こちらの計画通りに進めれば問題はないはずだ」

 その言葉にチラッとこちらを見るカニス隊長。

 ガシッ

 ムカついて動く前に、フェリクス副隊長が私の両肩を後ろから掴んだ。

 その行動にコクッと頷くカニス隊長。

 フェリクス副隊長は私のストッパー役か。クラウドも同じような役割だったっけ。
 各隊に私のストッパー役がいるって。私はなんだと思われているのだろう。

 私の様子を見て安心したのか、カニス隊長は再び会話に集中し始めた。

「場所の特定は出来ていないんだろう?」

「ええ、気配も感じ取れないので、効率が悪すぎますわ」

「問題ない。怪しい場所ならリストアップしてある」

「怪しい場所ではなく、現在位置を特定できなければ捕獲できませんわ」

「確かにな。だから探索用に人数を集めたんだろうが、カエルレウス嬢の言うように効率は悪くなるし、時間もかかる」

 話から察するに、何か、動物を探して捕まえる仕事のようだ。

 んー。

 私、動物の探索に捕獲って、やったことないけど?

 それに王宮職員ではなく、騎士が動員されるということは、安全な動物ではなさそうだし。

「標的は何? 猛獣?」

「エルシア、探索の内容や標的も確認せずに、こちらにいらしたの?」

 私の口から漏れたつぶやきに、ソニアが驚いたように返事をしてくれた。

「私、元々、第三騎士団の第一隊担当じゃないから。
 ここに来る直前に担当交代させられて、詳しいことは現場で聞けって言われたのよ」

 私は肩をすくめた。

「酷い話でしょ」

「第三騎士団らしいですわね。もっと綿密さをお持ちにならないと」

「ふん。そんな上司しかいないとは。第三騎士団は話にならんな」

 またもや、チラチラこちらを見ながら、話に割って入ってくるヴォードフェルム隊長。

「まったくですわね」

「いったい、どんな上司だ」

「もっと、きちんとして欲しいですわね」

 なぜだか、私の上司が気に入らないというところで、ヴォードフェルム隊長とソニアが意気投合している。

 私の上司のダメ出しまでし始めた。

「二人ともそこまでにしてくれ。指示したのはヴァンフェルム団長だから」

「「あの団長か」」

 そして、なぜだか、二人の言葉までピッタリ揃う。うちの団長、他からはどう思われているんだか。

「あの団長なら、あり得ますわね」

 と、ソニアは不安になるようなことを口にしてから、今回の探索について教えてくれた。

「王女殿下が飼われている猫殿が、王女殿下の庭園から抜け出しましたの」

「あぁ、だからここに集合してるんだ。って、猫? 王族が猫を飼ってるなんて聞いてないわ」

 ふと、疑問を口にした私に対して、今度はヴォードフェルム隊長が口を開いた。

「お前のような部外者には、一切知らされてないからな。把握しているのは直属の側近や、近衛、第一騎士団くらいだ」

「やっぱりムカつくんだけど」

「だから、落ち着け」

 どうして、こうも引っかかるような言い方しかできないのかな、こいつ。

 しかも、わざわざ絡んでくるし。

 フェリクス副隊長に押さえつけられていなければ、殴ってたのに。

「兄貴は性格はあんなでも、第一騎士団の隊長だから。エルシアが殴る前に避けられると思うぞ」

 やってみないと分からないのに。

 とは思ったものの、私だってやたらと相手に突っかかっていったりはしない。押さえつけられてもいるし。

 ここは静かにして様子を見よう。

 そもそも、ヴォードフェルム隊長が私に絡んでくる理由がはっきりしないのだ。

 最初は黒髪の魔術師だからバカにされているか、平民出身の魔導爵持ちだから気に入らないのかの、どちらかだと思ったけれど。
 どちらかが理由であるなら、『黒髪』とか『平民』とかの単語を使って、嫌みを言ってくる。

 なのに、ヴォードフェルム隊長はそれもない。唯一使ったのは『第三騎士団』という単語だけ。

 なんだか、違和感がある。

 チラチラ見られてもいるし、何かを気にしているようにも見えるし。

 そうそう、今、重要なのは猫の話だ。

「王女殿下がちょうど視察に行っている最中に、いなくなってしまって」

「つまり、王女殿下が帰ってくる前に捕まえたいってことね」

「話が早くて助かりますわ」

「猫の捜索と捕獲など、第一騎士団だけで十分、間に合うんだがな」

「ヴォードフェルム隊長!」

 またまた、ヴォードフェルム隊長が割り込む。聞き咎めたソニアが怒鳴る。ピクッと反応する私をフェリクス副隊長が押さえつけ、カニス隊長があちゃーといった顔をする。
 周囲で会話を黙って聞いている騎士たちも、カニス隊長と同じ表情だ。

 しかし、ヴォードフェルム隊長はそんな周りの反応を気にすることもない。

「それで、この生意気女が何の役に立つんだ?」

「エルシアは、範囲魔法を得意としておりますから」

「は? 範囲魔法? そんな地味な魔法が本当に使い物になるのか?」

 私の代わりに胸を張って答えるソニアに、ヴォードフェルム隊長は不思議そうな顔で言い返した。

 地味ですって?
 使い物になるのかですって?

「うん、やっぱり殴っていい?」

 フェリクス副隊長の手を振り払って、私は拳を握りしめた。
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