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7 帝国動乱編

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「ウヘ。ウヘヘ。ウヘヘヘヘヘヘヘ」

 アア。溢れ出てくる笑いが治まらない。
 黒竜録の次回作もコレでバッチリだわ。

 アタシはさっきの光景を思い浮かべた。

 アノ、うちのブアイソウが伴侶の完全捕獲まで終了したのよ。なんだか、カンドーするわねー

 完全捕獲なんだから、もう、ほわほわちゃんは逃げられない。
 ほわほわちゃんの持つ破壊の力がいくら凄いものだとしても、混ざり合った水は二つに分離できないもの。

 上位竜種の伴侶の契約を追った黒竜録シリーズも、ついに完結かしらねー

 緩む顔と口元を押さえていたら、ショボクレたショボクレが嫌なことを言ってきたのよ!

「エルヴェスさん、なんですか? その変な笑い方、凄くヤバい人に見えるんですけど」

「まぁ、元々、ヤバいやつだけどな」

 ノーテンキも加わって失礼すぎるわ!

 まったくさー

「ほわほわちゃんと、うちのブアイソウがゴールインよ! めでたいことだと思わない? 思うわよね?」

「そりゃあ、もちろん」

「帰ったら、宴会ですね」

「竜殺し亭に予約いれておかないとな」

「アンタたち、飲むことしか考えてないのね。マー、いいけど」

 その後、一連の説明を求めたほわほわちゃんと、説明責任を取らされたブアイソウと、ブアイソウ本人より遥かに舞い上がってる竜種たちが別室に移動。

 竜種だけの秘密だからと置いていかれたほわほわちゃんの護衛二人、互いにピリピリしあってる腹黒王子二人、そしてその他大勢に紛れて、アタシもゆっくりしていた。

 はずだったのに。

 ほわほわちゃんたちが退出して、しばらくすると部屋の外が慌ただしくなって。

 バーン

 と、扉を開けて入ってきたのはチビッコ!

 チビッコが部屋に入ってくるやいなや、とんでもない話を伝えた。
 事態は思わぬ方向に転がり始めている。アタシにとって、都合のいい方向へ。

 ウヘ。

「ソウソウ。お人形ちゃんはアタシに付き合ってもらうわ」

「…………………………………………。」

「ほわほわちゃんの護衛はあの美少年くんがいるから、なんとかなるでしょ。師団長も本気モードだしね」

 お人形ちゃんの返事はなかったけど、アタシは最強の仲間を得たことを確信した。

 だいたい、お人形ちゃんはアタシたちの仕事の方が合っているんだから。適材適所よね。




 そして、別室から戻ってきたブアイソウとほわほわちゃんを待ち構えていたのは、チビッコが持ってきたとんでない話=会場変更の知らせだった。

「式典の会場、別の場所へ変更になったそうだ」

 式典会場は皇城で行うとの話で、今回、スヴェート開催となったのにねー

 当日の朝、しかも開催まであと数時間の間際で、会場変更?

 ナイでしょ、ソレ。

「先ほど、急使がやってきて連絡が入った。新会場は混沌の樹林近くの遺跡だとさ。手違いで連絡がうまく伝わっていなかったと言っているけど。嘘くさいよな」

「式典会場を事前にチェックされないよう、隠してたみたいだわねー」

 スヴェートでの情報収集は兄たちにも協力してもらっていたのに。

 最初は皇城の広い庭園が式典会場になるという話で。話の通り、庭園は二週間前から式典準備が進められていて。飲食物の搬入やら何やら、昨日の夜遅くまで慌ただしくしていると、そういう情報だった。

 コレがすべて、偽装だったということだわね。

 おもしろくない。

「チョット、確認してくるわー」

「おい待て。お前が行くのか?」

 ブアイソウに声をかけられたので、笑顔で応じる。

「移動までには戻ってくるわよー お人形ちゃんを借りるわねー」

 アタシの笑顔を見て、ブルッと震えるショボクレ。まったく、最後まで失礼なやつだわねー




「偵察ですか?」

 スヴェートの大神殿を出たところで、お人形ちゃんから質問が飛んできた。

「ウーン、大掃除?」

 と、言っていいわよね。

「アタシと同レベルなのって、お人形ちゃんくらいなのよー? だから、いっしょに殴りこみよ!」

 お人形ちゃんは、何を隠そう、というか隠してはいないけど、補佐一号二号のお母様というやつで。現役時代は本部諜報班のエースとまでいわれた人物。

 一切、表情を崩さず、淡々と任務をこなす様から付けられた通り名が『氷の人形』。

 補佐一号二号も超人級なんだけど、その母親はさらに上をいく。
 うん、怖い怖い。マジヤバい。

「つまり」

 今も無表情で言葉を発してるんだけど、圧も何も感じさせないところが、師団長とは別の意味の怖さを感じさせた。

「情報収集に出かけると見せかけて、皇城にいる皇帝の首を狩るということですね」

 ゲホ

「ソコまで言ってないわー」

「ついでに現皇帝派の人間を洗いざらい狩りつくすと」

 ゲホゲホ

「だから、ソコまで言ってないからー」

「小さいメダルの開発者がいれば、確保して護送ですね」

「アー、よく覚えてたわね。あいつ、大した人間でもないくせにプライドだけは一人前なんだから。嫌になるわー」

「まったくです。でも、開発者はなるべく狩らないよう善処します」

 コーして狩りモードのお人形ちゃんを連れて、アタシは皇城までの道を急いだのだった。
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