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6 討伐大会編
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その後。
カーネリウスさんたち普通竜種の三人、私の専属護衛二人が血生臭さが漂う現場にたどり着いた。
どうやら、ラウはかなりのスピードで樹林を駆け抜けたらしい。
この五人、身体能力的にいっても最精鋭。その五人を置き去りにするなんて、私の夫の身体能力はどうなっているんだろう。
そして、イリニを先行させる(空に投げ飛ばす)というラウの判断にも、間違いはなかった。
ラウの速さでも、あのタイミングだったんだ。ずいぶん遠く離れていたんだと改めて思った。
そもそも、道のないところを走ってくるだけでも、大変だったろうし。
「なのに、遅いなんて言っちゃった」
私は自分が残念すぎてシュンとなる。
「大丈夫ですよ、クロスフィア様」
ジンクレストが、私の独り言に反応してくれた。護衛対象とようやく合流できて、ホッとした顔。
「ニコッと微笑んで、ありがとうと言うだけで、この師団長なら大喜びしますから」
ジンクレストが私にくっついたままのラウに呆れた視線を向けながら、答える。
あの一言でここまで察することができるとは、さすがお母さん的存在。ジンクレストの言葉で少し心が軽くなった。
それでも、後でラウに謝っておかないと。あと、たくさんたくさんありがとうも伝えないと。
私はラウの頭を撫でながら、そう思った。
遅れてきた五人は、惨状を見るやいなや、それぞれが自分のできることに取りかかる。
リアル黒竜録を見逃したと、デルストームさん辺りは残念がるかと思ったけど。
さすがに空気が読める竜種のデルストームさんは、ラウとカーシェイさんの様子を見て、何があったのかを察したらしい。
何も言わず何も尋ねず、沈痛な面もちで、現場の浄化を黙ってこなすだけだった。
ドラグゼルンさんもその辺は同じで、何も言わずに、ラウの肩をポンと叩き、デルストームさんの手伝いを行っていた。
後は空気が読めないカーネリウスさんだけ。
「で。なんで、いったい全体どうなったんです、これ?」
察しろ。いい加減に察してくれ。
念じてみたけど伝わらない。
「それに、なんで、エルヴェスさんがいるんです?」
だから、察してくれ。
ジンクレストの察する能力を、少しカーネリウスさんにも分けてもらいたいなぁ。
「だから、アンタは万年副官なのよ。副師団長なんて夢のまた夢な話よねー」
エルヴェスさんはバッサリとカーネリウスさんを叩き斬った。
しかし。
「良いんです、俺。副官のままで。同じ副でも副師団長とか副部隊長とか、頭を使う仕事は荷が重いんで」
察しが悪いが、悟りは早い。
「おい、副官も十分、頭を使うだろ」
「良いんです、俺。身体を使う副官のポジションを狙いますから」
イリニの突っ込みにも平然と言い返す。
「へー。エルメンティアの師団は、こんなレベルでこなせるのか」
「俺、身体は丈夫なんで!」
そういう理由で、第六師団入りを認められたんではないと思う。
仕方なく、私がカーネリウスさんについて補足を加えた。
「能力値的にはカーネリウスさんて普通竜種最強なの。補佐する人がしっかりしてれば使い物になるから」
「「へー」」
カーネリウスさんとイリニ、二人の声が揃った。
て、カーネリウスさんがここで納得してどうする!
そこへ、デルストームさんが加わってきた。
「エレバウトさんは優秀な補佐官ですからね」
「あ、デルストームさん。あそこらへんはぜんぶ終わった?」
「簡易的な浄化ですが、とりあえず、ぜんぶ終わりましたよ」
デルストームさんは銀竜さん直属の副官を任されているだけあって、個人で動いても優秀だった。
かなりの範囲だったのに、手際よく仕事を終わらせている。
どこかの誰かとは大違いすぎて、ちょっと頭が痛い。
「お疲れさま。後は運営側に連絡をして、説明しないとね」
大芋虫の魔物に、魔狼、そして人間の魔獣。
呆然とするカーシェイさん、いつの間にか姿を消した開発者とノルンガルスさんのお姉さん。
この三人以外のスヴェートチームは全員、消えた。
服の切れ端、ベルト、ボタン、騎士章などの装飾品、剣や鞘、剣帯などの金物や金物がついた物品。
それらが地面のあちこちに散らばっていて、大芋虫に食いちぎられた痕が残っていた。
おそらく、それ以外の部分は…………。
「その必要はありませんよ、お相手様」
「え?」
考え事をする私に、デルストームさんは穏やかに笑って説明をする。
「そこにいるエレバウトさんが全部、報告しているでしょうから」
「ええ?」
デルストームさんの指の先を慌てて目で追うと、そこにいたのは、
「そういうことだ、四番目」
「テラ!」
「ホホホホホホ!」
「それにルミアーナさん! 良かった、無事で!」
ナルフェブル補佐官の姿はなかったけど、きっと無事だ。テラがここにいるんだから。
「当然ですわ! あたくしを何だと思っていらっしゃるのかしら!」
「スーパー補佐官!」
「ホーッホッホッホッホ! その通りですわ!」
ルミアーナさんの明るい笑い声が辺りに響きわたる。
そんな笑い声につられるように、私の心も少しずつ明るくなっていくのだった。
カーネリウスさんたち普通竜種の三人、私の専属護衛二人が血生臭さが漂う現場にたどり着いた。
どうやら、ラウはかなりのスピードで樹林を駆け抜けたらしい。
この五人、身体能力的にいっても最精鋭。その五人を置き去りにするなんて、私の夫の身体能力はどうなっているんだろう。
そして、イリニを先行させる(空に投げ飛ばす)というラウの判断にも、間違いはなかった。
ラウの速さでも、あのタイミングだったんだ。ずいぶん遠く離れていたんだと改めて思った。
そもそも、道のないところを走ってくるだけでも、大変だったろうし。
「なのに、遅いなんて言っちゃった」
私は自分が残念すぎてシュンとなる。
「大丈夫ですよ、クロスフィア様」
ジンクレストが、私の独り言に反応してくれた。護衛対象とようやく合流できて、ホッとした顔。
「ニコッと微笑んで、ありがとうと言うだけで、この師団長なら大喜びしますから」
ジンクレストが私にくっついたままのラウに呆れた視線を向けながら、答える。
あの一言でここまで察することができるとは、さすがお母さん的存在。ジンクレストの言葉で少し心が軽くなった。
それでも、後でラウに謝っておかないと。あと、たくさんたくさんありがとうも伝えないと。
私はラウの頭を撫でながら、そう思った。
遅れてきた五人は、惨状を見るやいなや、それぞれが自分のできることに取りかかる。
リアル黒竜録を見逃したと、デルストームさん辺りは残念がるかと思ったけど。
さすがに空気が読める竜種のデルストームさんは、ラウとカーシェイさんの様子を見て、何があったのかを察したらしい。
何も言わず何も尋ねず、沈痛な面もちで、現場の浄化を黙ってこなすだけだった。
ドラグゼルンさんもその辺は同じで、何も言わずに、ラウの肩をポンと叩き、デルストームさんの手伝いを行っていた。
後は空気が読めないカーネリウスさんだけ。
「で。なんで、いったい全体どうなったんです、これ?」
察しろ。いい加減に察してくれ。
念じてみたけど伝わらない。
「それに、なんで、エルヴェスさんがいるんです?」
だから、察してくれ。
ジンクレストの察する能力を、少しカーネリウスさんにも分けてもらいたいなぁ。
「だから、アンタは万年副官なのよ。副師団長なんて夢のまた夢な話よねー」
エルヴェスさんはバッサリとカーネリウスさんを叩き斬った。
しかし。
「良いんです、俺。副官のままで。同じ副でも副師団長とか副部隊長とか、頭を使う仕事は荷が重いんで」
察しが悪いが、悟りは早い。
「おい、副官も十分、頭を使うだろ」
「良いんです、俺。身体を使う副官のポジションを狙いますから」
イリニの突っ込みにも平然と言い返す。
「へー。エルメンティアの師団は、こんなレベルでこなせるのか」
「俺、身体は丈夫なんで!」
そういう理由で、第六師団入りを認められたんではないと思う。
仕方なく、私がカーネリウスさんについて補足を加えた。
「能力値的にはカーネリウスさんて普通竜種最強なの。補佐する人がしっかりしてれば使い物になるから」
「「へー」」
カーネリウスさんとイリニ、二人の声が揃った。
て、カーネリウスさんがここで納得してどうする!
そこへ、デルストームさんが加わってきた。
「エレバウトさんは優秀な補佐官ですからね」
「あ、デルストームさん。あそこらへんはぜんぶ終わった?」
「簡易的な浄化ですが、とりあえず、ぜんぶ終わりましたよ」
デルストームさんは銀竜さん直属の副官を任されているだけあって、個人で動いても優秀だった。
かなりの範囲だったのに、手際よく仕事を終わらせている。
どこかの誰かとは大違いすぎて、ちょっと頭が痛い。
「お疲れさま。後は運営側に連絡をして、説明しないとね」
大芋虫の魔物に、魔狼、そして人間の魔獣。
呆然とするカーシェイさん、いつの間にか姿を消した開発者とノルンガルスさんのお姉さん。
この三人以外のスヴェートチームは全員、消えた。
服の切れ端、ベルト、ボタン、騎士章などの装飾品、剣や鞘、剣帯などの金物や金物がついた物品。
それらが地面のあちこちに散らばっていて、大芋虫に食いちぎられた痕が残っていた。
おそらく、それ以外の部分は…………。
「その必要はありませんよ、お相手様」
「え?」
考え事をする私に、デルストームさんは穏やかに笑って説明をする。
「そこにいるエレバウトさんが全部、報告しているでしょうから」
「ええ?」
デルストームさんの指の先を慌てて目で追うと、そこにいたのは、
「そういうことだ、四番目」
「テラ!」
「ホホホホホホ!」
「それにルミアーナさん! 良かった、無事で!」
ナルフェブル補佐官の姿はなかったけど、きっと無事だ。テラがここにいるんだから。
「当然ですわ! あたくしを何だと思っていらっしゃるのかしら!」
「スーパー補佐官!」
「ホーッホッホッホッホ! その通りですわ!」
ルミアーナさんの明るい笑い声が辺りに響きわたる。
そんな笑い声につられるように、私の心も少しずつ明るくなっていくのだった。
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