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6 討伐大会編

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 そして迎えた討伐大会初日。

 混沌の樹林へは、エルメンティア側の入り口から入る。ここからすでに討伐大会だ。

 俺たちは、大神殿の神官から転送の魔導具を受け取ると、速やかに混沌の樹林を進んでいった。
 今日はただひたすら魔獣を狩りながら中央部を目指す。

『いいですか、黒竜。討伐大会初日は中央部に安全にたどり着くこと。それが第一目標です』

 どこからかカーシェイの声が聞こえた。

 俺が初めて討伐大会に参加したのは、十四のとき。まだ役付きになる前のただの騎士だった。

 ただの騎士とはいえ、俺は上位竜種最強の黒竜。その辺の騎士に負けるはずがない。
 だからこそ、十四のただの騎士にも関わらず、討伐メンバーに推薦され抜擢された。

 そんな俺も、初めての討伐大会は緊張の連続。

 カーシェイはそのとき、総師団長付きの副官で、緊張する俺にあれこれ教えてくれたっけな。

 それから何度もカーシェイとはいっしょに討伐大会に参加したが、そのたびにカーシェイの言葉を思い出すんだ。

『黒竜はパワータイプですが、必要最小限で魔獣は狩ります。体力は温存、力は出し惜しみしながらが、ここでの基本です』

 やたらめったら全力でいく俺を、カーシェイはいつも窘めていたよな。
 まぁ、俺だけじゃなく他のメンバーもあれこれ注意はされていたけどな。

「ラウ。楽しいことでもあったの?」

 昔を思い出して、思わずニタニタしていたようだ。俺は首を小さく縦に動かし、フィアに答えた。

「初参加のときのことを思い出していたんだ。緊張して注意されてな」

「へー。ラウでも緊張したんだね」

 そういえば、今回はカーシェイがメンバーにいない初めての討伐大会だ。

 あの口うるさいカーシェイがいない分、俺がしっかりチームをまとめないとな。

 俺は改めて気を引き締めた。

 


 はずだったのに。

 フィアを運んでいる最中、フィアの良い香りにムラムラしてしまい、現在に至る。

 下半身に力が入っているのが自分でも分かる。これはマズい。

 魔狼の襲撃されたときに、うっかりフィアを押し倒してしまってから、さらに状態が悪化した。

 現在、フィアを抱き上げての移動は諦め、別々に移動はしているんだが。
 途中、草むらの中にフィアを連れ込みたい気持ちになる。マズい。

 こんなところで、本当に草むらに連れ込んだら、フィアに軽蔑される。それだけは避けないと。

 俺は溢れるムラムラをすべて魔獣にぶつけながら、道なき道を進んだ。ただひたすら。狩って進む。この繰り返し。

「師団長、マジヤバいな」

 途中、ドラグゼルンが俺を見て、ボソッとつぶやく。
 ドラグゼルンも魔獣を斬り伏せながら進んでいるので、凄い様相だ。

 が、視線が低い。

 おい。どこ見てヤバいとか言ってるんだよ。仕方ないだろ、生理現象だ。

「気合い、入ってますねー」

 今度はカーネリウスだ。
 やっぱり視線が低い。

「これぞ、リアル黒竜録」

 デルストームまで視線が低い。
 俺のアレを見てリアル黒竜録とか言うな。黒竜録は全年齢対象だ。

「ラウ。ここじゃダメだからね」

 フィアまで…………って、フィアに見てもらう分にはぜんぜん問題ないな。

 存分に俺のアレを見てくれ。

「ラウ。見せびらかさなくていいから」

「そうだな、フィア。夜にたっぷり見てくれ」

「だから、そういうのはいらないから!」


 ドゴォォォォォォン


 俺は恥ずかしそうに顔を赤らめるフィアによって、吹き飛ばされた。樹林に激突する。痛い。痛いけど、恥ずかしそうにするフィアがかわいくてかわいくて悶絶する。

「痛くて気持ちいい」

 思わずつぶやいた。

「師団長、マジヤバいな」

 ドラグゼルンの声が遠くで聞こえた。

 いかんいかん。こういうときはカーシェイの小言でも思い出さないと。

 思い出してもなお、俺のアレは元気なままで、フィアの目をごまかしながら進んだ。




 そんな絶頂を迎えるような気分だった討伐大会初日は、思わぬ事態を迎える。

「クロスフィア。あなたを国に連れて帰りたい。俺と結婚してくれ」

 その言葉を聞き俺は戦闘態勢に入った。

 くっそ。なんだ、こいつ。

 フィアの夫である俺の前で、堂々と求婚だと?!
 フィアが大好きなのは、フィアの夫の俺と俺のアレだ!

 俺はフィアを取られまいと、背後からフィアに抱きつく。
 フィアの良い香りを包むような感じとなり、俺のアレも戦闘態勢だ。

 そんな俺に対して、フィアがこっそり囁く。

「ラウ。お願いだから。アレはおとなしくさせといて」

 無理を言うな、フィア。生理現象だ。

「だから、冷気と殺気が漏れてるって」

 なんだ、フィアの言うアレはこっちじゃなくて、そっちのことだったか。

 俺のアレは一瞬で静かになる。

 とはいえ、目の前の男は気に入らない。
 俺は殺気を抑えるのを止め、目の前の男を睨みつけるのだった。
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