精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

文字の大きさ
上 下
281 / 384
6 討伐大会編

1-4

しおりを挟む
 カーネリウスさんが動かなくなったところで、全体会が始まった。

 議長を勤めるのは補佐二号さんだ。二号さんは淡々と議題を進める。

「まず、主メンバーの発表はミラマー副師団長から」

 二号さんの指名に従い、ミラマーさんが立ち上がった。

「では、主メンバーの発表を行う。主メンバーは正副師団長および正副付きの副官、六人で厳正に選抜を行った」

 ミラマーさんはいったん話を止め、ラウの方を見る。ラウが小さく頷くと、ミラマーさんは再び話し始めた。

「ラウゼルト・ドラグニール、第六師団長、上位竜種。
 クロスフィア・クロエル・ドラグニール、第六師団長付き補佐官、赤種。
 マディアス・カーネリウス、第六師団長付き副官、竜種。
 ルミアーナ・エレバウト、第六師団長付き副官補佐。
 アリスティルド・ドラグゼルン、第六師団突撃部隊長、竜種。
 主メンバーは以上の五名」

 うん、しっかり私の名前も呼ばれた。

 なんの話も聞いてないので、またもや、預かり知らぬところで勝手に決められたようだ。

 まぁ、ラウが行くなら、私もついていった方が安心だとは思う。
 私がいないところで、ラウはとんでもないことをしでかす。これについてはレストス旅行ですでに証明済みだ。

 ラウをおとなしく働かせるためにも、私の存在は欠かすことができない。

 私が一人で納得している間に、二号さんは話を先に進めていた。

「主メンバー選抜に対しての説明はドラグニール師団長から」

「主メンバーは、ミラマーの発表の通り。混沌の樹林という特殊な場所であることを考慮して、竜種と鑑定技能持ちで主メンバーを構成した」

 ラウがもっともな内容をもっともらしく説明したけど。

 知らない人からすると、ルミアーナさんが頼りなさげに見えるんじゃないかなぁ。

 知ってる人からすると、ルミアーナさんほど頼りになる人はいない。
 戦力的にはラウやカーネリウスさん、ドラグゼルンさんといった竜種には及ばないけど、それを補っても余るほどの推し活技能をルミアーナさんは持っている。

「主メンバーについて、何か質問はありますか? なければ次に進みます」

 と、二号さんが言ったとたんに、ババッと手が挙がった。

 回答は最後にまとめて行うと説明してから、二号さんがひとりひとり当てていく。

「エレバウト副官補佐は、戦力的にどうなんだ? あと体力的なところも。何せ混沌の樹林に三日間だからな」

「こっちもエレバウト副官補佐についてだ。前所属は第一塔鑑定室だから補佐官としては優秀だろうけど、戦闘は? 混沌の樹林は戦場だぞ」

「技能的な部分を評価されたんだとしても、自衛くらいはできないと。他のメンバーが足をひっぱられる」

 ルミアーナさんへの風当たりは想像以上だった。当てていくたびに、ルミアーナさんについての質問が出てくる。

 第六師団の中だけでなく、他師団の師団長からも質問が飛んだ。

 どれもこれもルミアーナさんの実力を疑うものばかり。選出はラウたちがやっているのに。ラウたちの見る目を疑うつもりなんだろうか。

 二号さんは淡々と質問を聞き、一号さんが黙って書き留めていた。

 ラウもミラマーさんも反応もせずに落ち着いているし、ルミアーナさんに至っては気にもとめない様子だった。

 皆、よく淡々としていられるものだと感心してしまう。

「混沌の気が濃く、普通の騎士でも体力をかなり削がれる場所だ。女連れで行って大丈夫なところじゃない」

 最後の質問なんて、性別だけで文句をつけているようなものじゃないか。

 むっとして、思わず、口から文句がこぼれた。

「それって、私も大丈夫じゃないって言いたいの?」

「クロエル補佐官、発言は挙手してからお願いします」

 別に、女連れ発言した人を公式に問い詰めたいわけではない。そういう考えの人もいることは分かっているし。

「あー、独り言だから。気にしないで」

 手をパタパタ振って発言を取り消したのに、なんだか、女連れ発言した人がブルブル震えている。

「それと、殺気は控えてください」

 あ。殺気もこぼれてたか。

 正確には、殺気じゃなくて、圧縮された赤種の魔力。
 私の圧縮魔力は、人によっては息苦しさやピリピリするような痛みを感じるそうなので、テラから普通の人に向けて漏らすなと言われてたんだよね。

「フィアの圧縮された魔力が、身体に突き刺さるように痛くて気持ちいい」

 ラウを除いて。

 ラウは普通じゃないし、私が何をしても喜ぶから、気にしなくていいんだそうだ。

「師団長は個人的な感想を口に出さないでください」

「ちっ」

 私の魔力が引っ込んで、ラウがあからさまに残念がったところで、二号さんは応答に進んだ。

「今の質問に対して、どなたか回答をお願いします」

 二号さんの発言を聞くやいなや、勢いよく手が挙がる。

「ミラマー副師団長」

「エレバウト副官補佐はピンポイント技能者だ。師団の機密なので詳細は控えるが、クロエル補佐官と組ませると技能を最大限活用できるため、メンバー入りした」

「ドラグゼルン突撃部隊長」

「エレバウトは、俺の部隊の訓練にも普段から普通に参加してる。体力的に後れをとることはない」

 ミラマーさんもドラグゼルンさんも、長を任されるだけはある。
 しっかりとルミアーナさんを見ているし、能力を把握していた。

「ハァァァーイ、アタシからもタップリあるわー!」

 なんと、エルヴェスさんも手を挙げた。もの凄い勢いで、さすがの二号さんも引いている。

「エルヴェスの発言は却下だ」

「お前が発言するとろくなことにならないんだから、黙っておけよ」

 二号さんが指す前に、ミラマーさんとドラグゼルンさんが、エルヴェスさんの猛攻を阻止。

「ジミーもノーテンキもケチくさいわねー ノーテンキなんて、ソレだから振られるのよー」

「余計な発言は控えてください、エルヴェス副官」

 エルヴェスさんの自由発言を、引いて戻ってきた二号さんが止めにかかる。

 でも、そんな程度で止まるエルヴェスさんではない。バッと立ち上がって、ドラグゼルンさんを指差した。

「ノーテンキ程度が薔薇の花一本でコクるなんてキザなことして、オッケーもらえるわけないでしょー」

「なんでそれを………?! じゃなくて、黙ってろよ、エルヴェス!」

「ハイハイ。オテガミ出すのもホドホドにねー」

「うぐぐぐぐぐ」

 カーネリウスさんに続いて、ドラグゼルンさんも動きを止めた。ちょっとかわいそうになってくる。

「ソレで、残り五人。ダーレが推薦されてダーレが選抜されるのカシラー?」

 そう。今日の本番はここからだ。

 残り五人の枠を巡っての戦いが始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

処理中です...